しかし、こうした派遣大手のスタッフサービスでさえ、業界全体では1%程の売上高(3200億円)でしかない。日本の派遣業界は4兆円市場である。この市場をめぐって、様々な派遣会社が競争しているのである。最近では、人材不足が日本企業の間で深刻化し、派遣会社も人材確保の競争を激化させている。派遣先企業も、流動的な派遣社員以上に、長期間雇える人材の確保にも力を見せ始め、その要求に応えるかたちで派遣会社は「紹介予定派遣」という派遣先への直接雇用を雇用の条件とする派遣事業を拡大させている。そのためにも、派遣会社は、より優秀な人材の確保にコストをかける必要がある。その一方で、度重なる派遣会社の違法行為の摘発をうけ、人材が派遣に集まらないといった問題もでてきた。
そうした中、突如として持ち上がったのが、スタッフサービスの買収問題である。10万人もの派遣労働者を抱えるスタッフサービスの買収は、日本の派遣業界に8000億円超もの大企業を誕生させることを意味する(求人広告を含め人材分野で)。日本の派遣業界1位の地位を確保するのは確実であろう。
ただ、この事件は、単なる大手派遣会社同士の合併ということ以上に、大きな問題を浮き上がらせることとなった。それは、海外派遣会社との競争である。実は、スタッフサービスの入札には、世界の派遣業界2位のマンパワー(アメリカ)が参入していたのである。結局、スタッフサービスは、リクルートと交渉を選んだが、マンパワーとの合併の可能性も秘めていたのである。今や世界の派遣市場は約30兆円ともいわれている。ちなみに、世界最大手は、スイスのアデコグループであり、合併したリクルートの6倍もの売上高をほこる。こうした外資系にとって、日本市場の重要性も増してきているのである。オランダのランスタッド・ホールディング(世界3位)も2006年には日本に進出している。
今や日本の派遣会社は、国内市場の生き残りもさることながら、こうした世界的な規模で事業展開している海外の派遣会社との競争に参入せざるをえない状況に置かれている。そうしたときに、派遣会社同士の合併を通して、より多くの市場を独占できる競争力のある大企業の誕生は、今後も続くであろう。しかし、そうした時、常に企業経営の調整弁として切捨ての対象と真っ先になるのは労働者である。ということは、労働者側も、そうした業界の動きに対抗できる力と戦略とを兼ね備えておく必要があるのではないだろうか。
コメント一覧
Unknown
matuya
半・蔵・門
半・蔵・門
アクセル
最新の画像もっと見る
最近の「ニュース解説・まとめ」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事