未曾有の大震災と原発事故の被害を経験している日本において、学問はどう変わるべきなのか。政治学・哲学・社会学・文学・その他の自然科学など、多岐にわたる分野の学問に携わる大学関係者が結集し、オムニバス形式でそれぞれの視点から、現在進行形の問題に対する学問としての責務、そして将来への展望を語る。
2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、東北地方は壊滅的な被害を受けた。それは単なる津波による破壊に留まらず、これまで日本社会が抱えていた格差、貧困といった問題が、被災者の生活上の問題として直接的に現れている。仮設住宅の住環境、子どもの教育、生活保護受給への障害など、制度上の課題がまさにそうだ。それは、被災地においてのみならず、今後社会全体で解決していかなければならない雇用構造・格差・貧困の問題に接続しうる普遍的なテーマである。
より広い視点を持って見ると、経済のグローバル化と政府の新自由主義改革によって社会保障が切り下げられ、格差が拡大し、若者を中心とした雇用環境は急速に悪化している。地方は経済的に疲弊し、原発事故によって被災地は強制的に被曝させられた。人間の住む環境、人権が全く顧みられることなく、声を上げられない人々が次々に切り捨てられている。なぜこのような格差や差別が生まれるのか。放射能の問題にどう向き合えば良いのか。人の生活や命を守るにはどうしたらよいのか。そして、民主主義とは何か。社会に渦巻く根源的な問題に、学問が問われていることは多い。
また、本書のテーマは大学内での研究活動に留まらない。若者のボランティアや社会活動といった実践にまで視野を広げ、学校建設、NPO法人の運営等によって社会の問題に取り組む人々の活動も紹介している。
NPO法人POSSE代表の今野晴貴へのインタビューも掲載され、労働相談、調査、労働法教育、仙台の被災者支援等、POSSEの活動についても紹介されている。
また、これまで雑誌『POSSE』に掲載されたことのある本田由紀・永松伸吾・國分功一郎といった若手論客も登場している。
個々の内容に深く切り込めるほど一人当たりの紙幅が割かれていないのが難点だが、現在の日本が抱える問題点と、その解決への取り組みを概観することができる一冊だ。
【本の概要】
著者名:橋爪大三郎、本田由紀、今野晴貴ほか
(執筆者一覧→http://resemom.jp/article/img/2012/03/13/6796/24741.html)
書 名:『ポスト3・11 変わる学問 気鋭大学人からの警鐘』
出版社:朝日新聞出版
出版年:2012年3月
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
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