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さて、『POSSE』第4号の文化特集は、「「格差論壇」の座標軸」です。
若者の格差をめぐる言説はここ数年で非常に大きな盛り上がりを見せている。
しかし、なかには格差を「消費」するだけのメディアや言説も少なくはない。
また、一見格差を是正するとみせかけて、貧困を生み出してきた構造やその転換の必要性から眼をそらすような議論や政策も出されている。
さらには、自己満足の言説に陥り、若者にとどかない、あるいは社会を現実的に変えることのできない抽象論・理想論になっているとの批判もある。
もちろん、格差への批判そのものは今後もますます強まっていくだろう。
しかし、だからこそ、いま立ち止まり、この論壇を見渡す必要があるのではないか。
格差社会をどのようなシステムに変えていくのか。
そしてそのヴィジョンを実現するためには、どうやって社会の構造へ、そして 「当事者」へとはたらきかけていけばいいのか?
今回の文化特集のテーマは、格差をめぐる「論壇」そのものである。
(「特集2 「格差論壇」の座標軸」扉より)
本特集の目玉のは二つ、「格差論壇」MAPのゆくえ」と座談会「「ニート論壇」って言うな! ~「セカイ系化」する論壇か、論客の「精神の貧困」か」です。
「「格差論壇」MAPのゆくえ」では、格差論壇を政策の観点から4つの象限に分類するという木下武男さん考案の「「格差論壇」MAP」をもとに、
五十嵐仁さん
(ブログhttp://igajin.blog.so-net.ne.jp/)
濱口桂一郎さん
(ブログhttp://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/)
のお二方に登場していただき、それぞれの分析を披露していただいています。
さて、本誌4号に掲載している「格差論壇」MAPですが、問題提起として本ブログでもご紹介致します。(図参照)
今後「格差論壇」で政策を語るうえで、外すことの出来ない図になるのではないでしょうか。
この図は、以下の2つの座標軸で構成されており、
縦軸にジョブ派―年功派、
横軸に規制緩和派―規制強化派(第一象限側に国家・ユニオン、第四象限側に慣行・社会的規範)があります。
そして以下の4つの象限、
第一象限が福祉国家派、
第二象限がジョブ型競争社会派、
第三象限が「構造改革」派、
第四象限が既存労組・諸政党となっています。
この木下マトリクスをもとに「格差論壇」をマッピングしていきます。
いったいどんな論点が提起されているのか。
ここでは、それぞれのインタビューの見出しをご紹介します。
■「「格差論壇」MAPとは何なのか」
木下武男(昭和女子大学教授)
・戦略としての動態的MAPへ
・濱口ブログと「派遣村」 ~マトリクスをつくった契機~
・全く違う福祉国家論 ~第1象限と第4象限の差異~
・非正社員は日本型雇用に戻せない ~既存労組の可能性~
■「私は「格差論壇」MAPをどう見たか①」
五十嵐仁(法政大学大原社会問題研究所)
・「格差論壇」の転換と議論の交通整理 ~論壇MAPの意義~
・日本的経営の打破をめざして規制緩和を支持した旧左派の一部
・誰が敵で、誰を味方につけるのか ~戦略としてのマッピングの意味~
・ジョブよりも「メンバーシップ」 ~「就職」対「入社」~
・中谷巌は「懺悔の値打ちもない」
・日本型雇用は必ずしも全否定されるものではない ~ステークホルダー論として~
・「派遣村」以降の政策案をどう評価するか
■「私は「格差論壇」MAPをどう見たか②」
濱口桂一郎(独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)統括研究員)
・視覚的わかりやすさ ~木下マトリクスの意義~
・国家の規制とユニオンの規制は違う
・社会運動による国家規制か、ポピュリズムの危険性か
・職場を基盤にしたシステムを
・再分配する国家≒ジョブ派、再分配しない国家≒年功派
・日本のジョブ型と既存労組は再分配をしない
・「新時代の日本的経営」・「構造改革」派こそ隠れ年功派
・八代尚弘は福祉国家派か? ~ジョブ派の論客図~
・濱口桂一郎の位置づけ ~「理念」と「短期戦略」の軸~
・「ロスジェネ論壇」の座標軸 ~「叫び型」の問題提起~
・自覚的に年功派を選んだ日経連
・企業別組合をどこに入れるのか ~木下マトリクス最大の「問題点」~
ぜひご覧下さい。
そしてもう一つ、座談会「「ニート」論壇って言うな! ~「セカイ系」化する論壇か、論客の「精神の貧困」か~」も要注目です。本企画では、超左翼マガジン『ロスジェネ』から増山麗奈さん、『フリーターズフリー』から杉田俊介さん、そして「俗流若者論」批判で著書をいくつか出されている後藤和智さんにご参加いただき、批評的・思想的な立場から「格差論壇」を論じていただきます。
他にも、若者の内面と政策論の必要性から論じた阿部真大さんの「「やりがい」は間違っちゃいない! ―若者の力を生かすセーフティネット論―」があり、上二つの企画の論点をちょうど消化するようなかたちになっています。短いインタビューですが、お薦めです。
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