●初☆日雇いバイト☆
記念すべき「日雇い初日」は、3年前の冬でした。
大学の学園祭でお金を使い果たした私(当時19歳)は、
「即日手渡し可能!稼ごう!時給1000円以上のバイト!」という謳い文句に惹かれ、日雇い派遣の某F社(新宿支店)に登録しました。
「即日手渡し」だったはずのF社は、「火曜・木曜の9:00~17:00」というようにお金を受け取る時間が決まっていました。ビックリです。
「時給1000円以上」に嘘はありませんでした。6時間で7000円(交通費1000円含む)、です。まずまずです。
余談ですが、そこの事務所で働く女性たちもF社で雇われたアルバイトでした。私は時給1000円、事務の彼女らは1500円。(私の思い込みかも知れませんが)お金を渡す慣れた手つきもなんだかエラソーです。その日雇い登録会社には学生支部もあり、高校生も登録しているようでした。
●テレホンアポインターという仕事を知っていますか?
さて、お仕事です。
日雇い初日に、新宿駅西口に集合した私たち日雇い労働者は、F社のお姉さん(結構美人)の引率で、派遣先に案内されます。
テレホンアポインター(通称テレアポ)とは、
「ご家庭に電話をして、新商品を売る」という仕事です。
例えば、家庭教師や着物の売り込みも、テレアポの仕事です。
ここからが、この仕事のポイントなのですが、
テレアポの大半は、本社の正社員ではなく、派遣のアルバイトです。
(本当は契約のときに「秘密にしといてくれ」と言われましたが、
周知の事実という前提で話を進めます。)
私が体験したのは、
大手電話会社の下請けで、お宅のインターネット回線をADSLにしませんか?というご案内(契約をとりつける)をするもの。
まず、3時間ぐらい研修を受けます(研修にも給料が出たので良かったです)。
ADSLの仕組みの話、光の話、モデムの話、電話回線の話、契約をとるまでの流れetc…
次に、本番、電話をかけます。
電話をかける、と言っても電話は”機械が勝手に”かけてくれます。
パソコンの前に座っていれば、5秒ともなくかかります。
かかった瞬間、顧客情報の管理画面が映し出されます。(電話番号・住所等)
電話をかける側のルールとして、「本社からかけている」ということを前提に、電話越しのお客様との話を進めます。
つまり、「どこからかけているのですか?」と聞かれたら、「大手電話会社の○○です。住所は___です。」と答え、決して「派遣のアルバイトの学生がかけている」という事実を伝えてはなりません。
しかし、そのテレアポ事務所には、担当した大手電話会社の他にも、様々な電話会社のポスターが貼られ、期間ごとに契約先を変えていることが見え見えでした。
最初は緊張しますが、やっていくうちに慣れます。
最初の3フレーズぐらいは、自然と口から出るようになります。
1 「○○社担当の__です」
2 「新サービスのご案内でお電話かけさせていただいておりますが、
ご主人の□□様はいらっしゃいますか?」
3 「ADSLサービスのご案内です。ご家庭でインターネットを使われていて、
不自由に感じた点などございますか?」
と、話を繰り出します。
パソコンの顧客画面には自由に書き込める欄があり、聞き出してわかったこと
(家族構成・パソコンの台数・誰が主にインターネットを使うのか等)を書き込みます。
また、電話での結果をチェックする欄もあります。
(契約の有無・脈あり・拒否などの項目に分かれています)
知らない人と(例え電話越しであるにせよ)話す、というのは大変疲れます。
「電話かけてくんな!」とかそういった拒否が続くと凹みます。
精神的にキます。
でもなによりキツいのが、
機械を介して他の人(主にテレアポ会社の社員)に聞かれるということです。
脈がありそうなのに、話を発展できなかったり、
わけもなく「拒否」が続いたり、
そういうことが全部、つつぬけなのです。
●なによりも「数」
仕事に「数」は大事、というのはわかっています。
わかっていても、苦しいものは苦しい。
働いていたテレアポ事務所では、
「獲得数一人一日2件!」を目標に奮闘していました。
3時間に1件のペースです。
簡単そうでしょ?
確かに慣れている人には簡単そうでした。
半日で50件以上電話してるんだから、
それぐらい採れて当然、かも知れません。
さて、たくさん「件数」を「獲得」する人たちを観察していたら、
3つのタイプに分かれました。
・業務に慣れている人 …とにかく気さくです。社員並みに働く大学生アルバイト
(日雇い派遣ではなくテレアポ会社に直接雇われている→給料もきっと良い)もいました。
・機械に詳しい人 …インターネット関連の知識に詳しく、電話越しのお客様に信頼される。
・半分嘘つく人 …「数」をとるためなので多少の嘘は仕方ないのですが、
嘘と本当の中間をついてくる(某F社の求人広告並みの)人も多々いました。
彼らを見ていると、本当に口が軽くて、仕事人としては尊敬(?)できますが、
友達にはなりたくねーなー、と勝手に思ったりしました。スミマセン。
でもしょうがない。これが仕事。「数」のためなんだから。
2日目の夕方、貴重な30分休みの合間に給料を貰いに行きました。
(そうしないとF社の事務所が閉まっちゃうからね☆)
●おめでとう!
こんな私も、3日目にして
ついに!念願の!
一日2件
獲得しました~~~~~!!!
「皆さ~ん、手を休めて聞いてくださーい!!」
社員さんの一声で静まる職場。
「○○(私)さんは、来て3日目なのに目標件数の2件とれましたーー!
これはすごいことです。皆さんも負けじと頑張ってください。
おめでとう!!!!!」
拍手鳴り止まない場内。
照れる私。
喜ぶ私。
……えっ!?喜んでいいの?
その日の仕事が終わった午後9時、派遣スタッフ用ロッカールームで、
知らない同期のスタッフに「2件すごいですね。おめでとうございます。」
と言われ、なんだかむなしくなりましたとさ。
●ロンリーリンリ
結局、このテレアポの仕事は1週間で辞めてしまいました。
ん? 辞めて「しまい」ました?
なにガッカリがってんの自分?
きっと「辞めること=良くないこと」というふうに、
認識して(認識させられて)いるのだと思います。
だから、テレアポバイトを辞めるときも罪悪感はあった。
けど、私の体質に合わないことも確かだった。
倫理観というと大袈裟ですが、「それはよしたほうがいいんでないの?」ということも、企業の利益が絡むとやらなくてはいけない&仕事なんてそもそもツラいものなのだからやって当然、という空気があります。
私の場合、
自分が良いと思えないものを、電話越しのお客様にお勧めできない
というリンリの壁を超えられなかった。
辞めたとき、
このバイトでダメだったから次もダメなんじゃ…と考え落ち込みました。
一人で決断するからこそ、一人で孤立する気分になる。
誰も怒らないだろうけど(誰も怒らないからこそ)、
すごくこわかった。
口が軽かったり、思ってもないこと言ったり、嘘ついたり、
少しぐらいキタナくないと社会に適合できないのでしょうか?
●この仕事
忘れちゃいけないことは、この仕事がなくなると困る人がいる、
ということです。
私が見てきたのはこの業界の「一面」にすぎず、実際この仕事がなくなると困る人はたくさんいます。(現にバイト先のフリーターの人も、好きなバンドの人もテレアポで生計を立てています。)
私はたった7日で辞めてしまいましたが、長く続ければ楽しい面も見れたかも知れません。
この仕事をやって、私自身とても勉強になりました。
別に劣悪な環境でもなかったし(業務内容は精神的にキテるけど)
自宅にかかってくるちょっとした勧誘電話でも「おつかれ様です」と労うようになりました。しかもきちんとお断りして「拒否」します。
ちなみに、今のバイトは楽しくやっています。
長々と失礼しました。
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今後もPOSSE blog ではバイトで実際に経験したことを載せていく予定です。
極端な内容かも知れませんが、あくまでも一個人が体験した一例として、ご理解いただけると幸いです。
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あおい
jim
Unknown
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