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3月16日、「生活困窮者支援のあり方―20年間貧困問題に取り組んできて見えること」セミナーを開催しました

 3月16日、「生活困窮者支援のあり方―20年間貧困問題に取り組んできて見えること」セミナー(講師:NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表・稲葉剛さん)を開催しました



 3月16日(金)に、下北沢の北沢タウンホールにて、セミナー「生活困窮者支援のあり方―20年間貧困問題に取り組んできて見えること」を開催しました。NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表理事の稲葉剛さんを講師としてお呼びして、ここ20年間の貧困問題の社会への現れ方やメディアの取り上げ方、行政の対応の仕方の変化と、その変化にもかかわらず日本社会にとって一貫して大きな課題であり続けている貧困をどのように考えるかなどをお話ししていただきました。

 稲葉さんは、1990年代から新宿でホームレス支援を行っています。バブル崩壊後の1993年ごろから、新宿駅周辺では路上で生活する人々が急増しました。そのなかには、今まで山谷などの寄せ場で日雇い労働者として働いていたものの、不況により仕事がなくなってしまった人が多かったといわれています。当時は、そうした生活困窮者への偏見が強く、貧困は「社会問題」ではなく「治安問題」としてとらえられていました。最近、各地で餓死や孤独死の報道が相次いでいますが、以前から路上ではたくさんの人が亡くなっていました。しかしその実態はメディアにもほとんど取り上げられなかったといいます。

 2000年代に入り、それまでは追い出し一辺倒だった行政の対応にもわずかな変化が見られ、ホームレス自立支援法やホームレス自立支援センターなどができました。2001年、稲葉さんたちは、ホームレス状態にあった人がアパートに入居する際の保証人になる活動を行う、NPO法人自立生活サポートセンター・もやいを立ち上げました。その後、若者の貧困が問題になり始め、2007年には「ネットカフェ難民」が流行語になりました。社会の関心の高まりを受けて行政も動き出しましたが、「ネットカフェ難民」はそれまでの「ホームレス」とは違うものとされ、支援策も別々に行われました。しかし、実際はその日の懐具合で寝るところを変えているだけで、当事者にとって違いはありません。

 2008年末には、年越し派遣村が開設され、全国から派遣切りにあった人が押し寄せて、大きな社会の関心を集めました。この時も、行政は今までとは違う支援策を打ち出しました。貧困問題に対する場当たり的な行政の対応が、ここでもうかがい知れます。派遣村も今までの貧困問題の延長線上にありました。かつては山谷などの寄せ場において、日雇い労働(ワーキングプア)とドヤ(ハウジングプア)が結びついた生活困窮の状況がありました。それが現在は、派遣などの非正規雇用(ワーキングプア)と会社寮やネットカフェなどの不安定な居所(ハウジングプア)の結びつきに変わって、都市全体に貧困が拡大しているとしています。

 稲葉さんは、派遣村の後に外国メディアから受けた質問で、印象に残っているものがあるといいます。世界同時不況で、外国でも失業者が急増しました。そのなかで、「なぜ日本では仕事がなくなると、住むところがなくなるのか」と聞かれたのです。稲葉さんは、ワーキングプアとハウジングプアが密接につながっている日本の状況は、必ずしも世界の常識ではないのだと思ったそうです。

 このように、貧困は、「ホームレス」、「ネットカフェ難民」、「派遣労働者」など、時期によって別々の現象として語られていますが、一連の問題として日本社会に存在し続けてきました。しかし、私たちはこの問題にきちんと向き合ってこなかったといい、貧困を見る「まなざし」の変化が重要だとしています。生活に困窮している人を見るとき、その人が現在の社会のどのような立場にいるのか、またその人がどのような人生を歩んできたのかを考える必要があるといいます。私たちはよく自分の経験で人を裁いてしまいがちですが、そもそも人と自分ではスタートラインが違います。生活困窮者には、親も貧困だった人や、見えない障がい・難病を抱えている人も多いといいます。人々が貧困に陥るのは「自己責任」とはいえず、むしろ社会の方に問題があったからといえます。生活保護受給者が過去最多になり、メディアでは受給者バッシングが強まっていますが、そうした貧困者への差別や偏見は、貧困問題を見えなくさせてしまいます。

 複数世帯の餓死が報じられるなか、生活保護などのセーフティネットの改革も進められようとしています。このような状況下で、生活困窮者とどのように向き合い、支援をしていくべきか、考えを深めることができたのではないかと思います。


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