今回は、笹山尚人弁護士が今年の二月に出版された『労働法はぼくらの味方!』を紹介したいと思います。(笹山弁護士にはPOSSEは労働法セミナーでの講師や『しごとダイアリー』の監修などでお世話になっています。)
この本は岩波ジュニア新書(主に中高生を対象として分かりやすく書かれた岩波新書のシリーズ)として出されており、「何とかわかりやすい形で、生きた労働法を、これから働くことになる子どもたちに、伝えたい」いうことで書かれた本です。
内容は、アルバイトをはじめた高校生の主人公が、職場でいろいろなトラブルや疑問にぶつかり、弁護士のおじさんとそれについて話すなかで、労働法を学び、働く上での労働法の使い方を身に着けていくというものです。非常に分かりやすく労働法の実践的な使い方とその意義が理解できるようになっています。
取り上げているトピックも幅広く、単にアルバイトをする上での注意点にとどまらず、将来働いていく上でのさまざまな問題を扱っています。例えば、アルバイトをする上でも身近な就業規則や募集要項のルールなどから、近年大きな社会問題となっている名ばかり管理職の問題、解雇に関する基本的な考え方、セクハラ・パワハラ・いじめ、派遣労働、偽装請負、雇い止め、社会保険などがあります。
あとがきで笹山弁護士もふれていますが、日本の教育の中で労働法や働く上での権利について教わることは非常に少なく、社会の労働を取り巻く状況は悪くなっているのにも関わらず、これから働き始める若者の多くがきちんとした労働をする上でのリテラシーを学べていないというのは大きな問題です。
ただ、単純にどんな労働法があるのかを教科書的に教えられてもあまり意味はないかもしれません。というのは、多くの人は「残業代」や「休憩」などについての取り決めをなんとなく知っていても、実際にそれをどのように使っていけるのかが分からない、イメージできないという問題があるからです。
この本では、労働法をどのように実践的に使っていけばいいのかということを、第6章「労働法の活用方法」で一章を割いて展開してあります。そこでは①会社と話し合う、②行政のあっせんを利用する、③労基署を使う、④裁判を行う、⑤労働組合(ユニオン)を通じて交渉する、の五つの方法がそれぞれメリットとデメリットをあわせて紹介しています。そして、自分の権利を勝ち取るために組合に手助けしてもらうことが一番強力なやり方であること、何もしようとしなければ、権利が守られることはない、ということを強調しています。本書を単なる労働法の教科書と一線を画すポイントです。
労働法の最初の入門書としてお薦めしたい一冊です。
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