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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

職場のメンタルヘルス2~LAW DOキャンペーン~

「職場のメンタルヘルス1」では、単にセルフケアによる対処だけでなく、企業に職場環境の改善等の措置をとらせていくことで職場のメンタルヘルスの問題が解決しうるんだということを書きました。
(URL→http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/b670a9ca8ecbfe7beffcb0eae1516d70) 

 今回は、「もし今、精神疾患にかかってしまったらどうするか?」という点について考えてみたいと思います。

○労災制度
 想像してみてください。あなたは工場で働いています。作業中に、上から工具が落ちてきました。すぐに病院に運ばれたものの、出血が酷くて、しばらく入院していなくてはいけないそう。入院している間の治療費や、本来なら働いてもらっていた分の給料を、あなたは一挙に失うことになったのです。暫くは貯金を切り崩して暮らすしかありません。でも、もし貯金が無かったら…? 明日からどうやって生活していけばいいのでしょうか?
 実はこのような事態は、それほど珍しいものではありません。例えば、指を切断するような事故とか、命に関わるほどの大事故とか、工場は意外と危険でいっぱいなのです。工場以外の職場でも、もちろん何らかの事故に遭う危険を常に孕んでいます。もっと言えば、通勤途中で事故に遭うかもしれません。
 では、それらのリスクを誰が負担すべきでしょうか。ここで、使用者の「責任」について考えてみましょう。「人を働かせる」ということは、職場まで人を赴かせ、自分の管理する敷地や建物の中に一定の間、人を拘束するという要素も含んでいます。ですから、「人を雇う」以上、その過程で生じた事故については、使用者の側が責任を負担すべきなのです。
もしそのような使用者の「責任」が保障されていなければ、安心して働くことなどできないでしょう。
 
 以上の「責任」を法的に保障したのが、労災制度です。この制度が使用者の「責任」を示すものである一つの理由として、「保険料は全額使用者が負担する」、「すべての労働者を労災保険制度に加入させる義務がある」ということが挙げられます。
 労災制度を活用すると、たとえば、「治療費や入院費が無料になる」、「入院して働けない間の生活費をもらえる」、「労災補償を受けている間は解雇されない」などのメリットがあります。労災制度が「人を雇うことの責任」からスタートした制度だと考えれば、当然の補償ですね。

○メンヘル×労災
 前置きが長くなりましたが、ここまでは労災制度の意義について説明してきました。特に強調しておきたいのが、「精神疾患にかかる」ことも「労災」として認められている、ということです。ある人に雇われて働いていたために病気になってしまったのだとしたら、当然その職場で働かせていた人に責任がある、と考えるわけです。労災制度は身体的なケガやじん肺などの病気だけでなく、精神的な病気についても補償の対象としているのです。かなり画期的な制度だと評価して良いでしょう。
 しかしながら、問題はその制度がどの程度活用されているのか、という点にあります。昨年度の統計によると、メンヘルで労災を申請した人は全国で1年間に819人しかいません。前年度に比べて約25%ほど増加し過去最高を記録してはいますが、職場のメンヘルについての現状を鑑みる制度が十全に機能しているとは到底言えません。また、現段階では認定率も低く、4件のうち1件が労災として認定される程度です。このような状態では、せっかくセーフティネットになりうる制度が存在していても、実際に働いている人たちは安心することができません。
 このような現状を変えるために、私たちは何をすることができるでしょうか。

○労災申請をサポートしよう
 せっかく存在する労災制度を、もっと活用していこう! そのような趣旨で、POSSEは「メンタルヘルスの労災申請サポート」キャンペーンを始めました。このキャンペーンは「LAW! DO!法律を守らせよう、法律を活用しよう」キャンペーンの一環として行っています。
(「LAW!DO!」キャンペーンの特設HPのURLはこちら→http://npoposse.jp/lawdo/  自分一人ではなかなか労災申請がしづらかったり、そもそも労災制度についてあまりよく知らないという人がほとんどだと思われます。POSSEでは、そのような方々に制度について知識を伝えていきます。そして、そうして得た知識を、「もしものとき」に備えて利用してもらおうと考えています。
「もしものとき」は、必ずしも自分にとってのものではなく、同僚や恋人、友人にも訪れるかもしれません。そのときに備えて、得た知識を多くの人に伝えていく、また、実際に「もしものとき」が訪れたときには労災申請をサポートするようにしてほしいと私たちは考えています。もちろん、POSSEも皆さんの労災申請をサポートしていきます。


 ということで、早速労災にまつわる実践的な知識を・・・。更に詳しく知りたい方は、POSSEの特設HP「メンタルヘルスの労災申請サポート」をご覧ください。
(URL→http://npoposse.jp/lawdo/mental_health/index.html


1.労災申請は個人でもできる!
 慣例として、労災申請は勤務先の担当者がやってくれることが多いようです。しかし、現実には「労災隠し」や「労災飛ばし」と呼ばれるような、企業が事故をもみ消すケースも多いようです。そのような場合にも、労災は申請することができます。申請書を書いて、提出すればOKです。


2.こういう「証拠」が必要!
 メンヘルの労災申請で証明したいのは、

 ・精神疾患のせいで業務に支障をきたしていること
 ・精神疾患にかかった最大の要因が職場にあること

の2点です。これらを証明するためには様々なものが証拠になると考えられますが、特に挙げたいのが「メモ」です。たとえばセクハラやパワハラをうけた場合、物的な証拠は通常存在しません。メンヘルの労災があまり認定されていないのもこの点に大きな要因があります。しかし、それらの言動を物的な証拠に変えるのが、「メモ」なのです。
 「メモ」は、毎日つけておくと証拠能力が上がります。何も無かった日も「何も無かった」と書いておくことで、信頼性は高くなるのです。「メモ」のつけ方については、『しごとダイアリー』の特設HPを参考にしてください。
(URL→http://npoposse.jp/lawdo/sigoto_diary/index.html

 積極的に労災制度を活用していくことを通じて、労災制度の機能を最大限ひきだす。そして労災制度を通じて、使用者の「責任」を再確認し、使用者の働かせ方に規制をかけていくような雰囲気が生まれていく。POSSEは、こうした可能性を、キャンペーンを通じて追求しようと考えています。
 おかげさまでこれまでのイベントは非常に盛況なものとなりました。今後も応援よろしくお願いします!!
 

コメント一覧

Unknown
メンタル面での労災申請ってほんの数年前までは問題にもされてこなかったですよね。

当時は、過労自殺とかいって、長時間労働や職場でのいじめによって精神的に働いている人がまいってしまっても、本人の責任にされていたと思います。よく会社は、「~さんはまじめだから、いろいろ抱え込んじゃったんだろうね」とかいってあたかも個人の問題に摩り替えられるなんてことが横行していた。本当なら会社には働きやすい職場を整える義務があるのに!

今回の「LAW DO」キャンッペ-ンは、手帳と労災をメインにしているけど、この2つともなんで誰も手をつけてこなかってんて思います。
POCO
職場でのいじめなんかでメンタル面を害した場合なんかは、自分一人だけでは諦めてしまうだろうな、と思います。それこそ「セルフケアできてない自分が悪い」と。



昔バイトしてたときには、「仕事できないから怒られて当たり前」と思って、上司からの(仕事のミスをしかるのを超えた)激しい罵倒に耐えていました。よく考えたら仕事できない=罵倒されて良い、にはならないはずなんですけど。

怒られているうちに自分の方が悪いと思いこんで、自分を追い詰めてしまうんですよね。

自分がどういう状況に置かれているかを把握することって、意外と難しいです。だからこそ、メモが大事なんですよね。

とにかく、一人で悩まないことと、悩んでいる人を見かけたら放置しないことが大事ですね。
アクセル
かつてガソリンスタンドでバイトしていた時、炎天下の8月に230時間くらい働かされて、9月に入ってもあまり休みがもらえず、とうとう10月にぶっ倒れたことがあります。

これも労災だと言えると思うんですよね。でも、この時は、「ああ、結局自己責任だっていわれちゃうんだろうな」って感覚でしたね。当然使用者は知らんぷりでしたよ。よく考えれば、あの使用者の高圧的・無神経な態度のおかげで、精神的にも少々参ってましたね。

思い出すだけで腹立ちます。だからこそ今、労災申請の重要性を痛感します。これが職場環境の改善につながるんだとしたら、自分一人の問題でもないんですね!
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