
就活とはなんなのかよくわからない状態で就活を始めさせられる。自己分析しようにも、これまで何も考えずにのほほんと生活してきたので、自分の軸のようなものが何も見えてこない。自分のことがわからないのに、まわりはリクルートスーツを着てがんばっているので焦る。合同企業説明会にたくさんの人がいて焦る。就活情報誌を見て焦る。第一志望の会社に落ちて焦る。
本書を読めば、このような周りに合わせた行動を取るのに追われる人にとって、自分が行っている行為を振り返るきっかけを生み出してくれるだろう。
また今日、大学のキャリアセンター等で自己分析が盛んに喧伝されている。第1章の「就活生はイタすぎる」においてこのような自己分析をはじめ様々な事柄を取り上げて、企業から見てイタイタしい学生について述べている。
しかし本書で述べられている問題は学生だけでない。企業の「採活」もこのような状況を助長しているのだ。また、学生に嫌われぬように事細かな配慮をする様子が描かれ、企業の都合でつくられた採用情報を読む際に注意すべきワード等が紹介されている。
例えば現場で働く社員の生の声を聞かせるといった手法に関して、現場で働く社員の生の声というより「会社が用意した人材」であり会社の中でも良い印象を持て、優秀な社員が選ばれていることを忘れてはならないといったことである。
さらにこのような状況を、人気企業を学生たちに投票させ、それを創出することで煽っているのが就職情報会社であるとする。
このようにマニュアル本に洗脳された学生と都合の良い事実を並べたてた企業の「騙し合い」が行われているというのが本書の見解である。
そのような中で本書の第3章等で見られる「正しいウソ」を見抜こうとする姿勢は一読に値すると思われる。
【本の概要】
著者名:石渡嶺司、大沢仁
書 名:『就活のバカヤロー』
出版社:光文社
出版年:2008年11月
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