5月初旬に開催した第一回に引き続き、第二回の今回も生活保護に関する無料相談を電話で受け付けました。
東京で開催したホットラインでは、4時間のうちに18件の相談が寄せられました。4日の京都での16件と合わせると、前回の倍以上となる計34件の相談が寄せられました。前回同様、新聞に記事が掲載されたことに加え、6月下旬に京都POSSEで開いた京都府舞鶴市の「水際作戦」に関する記者会見がNHKで放送されたこともあり(※)、相談件数が増えたのではないかと思います。
今回のホットラインに寄せられた相談としては、「借金があっても生活保護は受給できるか?」などの生活保護の制度に関する質問や、「ケースワーカーに今年中に引っ越しをするよう迫られている」といった、ケースワーカーから不適切な指導をされていたり、それが原因でトラブルになっていたりするケースもありました。
相談内容としては、現在生活保護を受給されている方からの相談が多く、東京POSSEに寄せられた18件の相談の過半数を占めました。相談者の属性を見ると、男性が7件、女性が11件で女性が多く、年代は60代以上が3分の1以上と最も多かったものの、40代や30代からの相談も複数ありました。また、障害や精神疾患を抱えているため、働きたくてもなかなか働けないという方が全体の3分の1を占め、多い印象を受けました。
最も印象的であったのが、相談された方のほとんどが、この間のメディアによる「不正受給」の報道や生活保護に対するバッシングについて言及されていたことです。メディア等で大きく取り上げられている「不正受給」は、全受給世帯の1%にも達しません。実際には、生活保護を申請した段階で、申請者は資産や扶養の可否などを厳しく調査される上、生活保護の受給が決まった後も、ケースワーカーの指導に従うことが義務付けられます。また、世帯構成や収入の変化等の申告漏れがあった場合は保護を廃止させられる可能性もあります。このことから見ても、生活保護を“不正に”受給することは極めて困難です。メディアによる実態から乖離したバッシングによって、現在生活保護を受給している方々が精神的にも追い詰められてしまう現状を目の当たりにし、法的に全く問題のない受給さえ「不正受給」かのように批判したり生活保護受給者個人をバッシングするような報道や、政治家の繰り返すそのような発言は、本当に許しがたい暴力的なものであると深い憤りを覚えました。
また、今回相談を寄せられた方の中には、障害や精神疾患を抱えていて、医療的なケアが必要な方も多く、生活保護の制度の利用だけでなく、医療や介護の観点も踏まえたトータルな支援をできるようなスキルを、相談員である私自身がつけていかなければいけないと感じました。
さらに、今回相談をされた方のほとんどは、これまで貧困問題の中心となってきた路上生活者ではなく、住居に暮らしているけれども、例えば派遣などの非正規雇用の仕事にしか就けない、あるいは失業や精神疾患のため働きたくても働けないため不安定な収入しか得られない人、介護やDVなど様々な家庭の事情から生活困窮に陥ってしまった人など、私たちの身近にいてもおかしくないような人々です。このように、これまで焦点となっていない、貧困層の中でも相対的に上層にいる人々に対する支援が必要となっている現状が浮き彫りにされてきていると思います。そのような人々の支援をしていくためには、現在の雇用情勢や労働法を含む幅広い知識やスキルが必要となります。そうした総合的なスキルを持った相談員を増やしていくことで、より多くの相談に対応できるようにしていくと共に、生活保護を含む日本の社会保障制度や生活保護受給者の実態を明らかにし、現在のバッシングのような感情的なものではなく実態を踏まえた議論をしていくよう世論を喚起していきたいと思います。
※ 舞鶴市の水際作戦に関しては
「舞鶴市の生活保護の水際作戦に対し、抗議文を提出しました。」(2012/6/19)
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/859df66535ee11833f3fd3cee6d7cdef、
「舞鶴生活保護ニュース NHK「610きょういちにち」7/12放送」(2012/7/21)
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/4e5dd42d107ebc3fc4126408e40bbe83、
「舞鶴生活保護ニュース NHK「610きょういちにち」7/17放送」(2012/7/22)
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/efe1e93da9591145b399ababd4dd4ced、
「舞鶴市に対する京都府の特別監査結果通知の内容と舞鶴市の回答文書」(2012/7/26)
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/0665149d488fd064bfd435fe70c91d23
もご覧ください。
(大学4年生、ボランティア参加1年目)
---------------------------------------------------------------------------
貧困・生活困窮問題に取り組むボランティアの力が必要です
POSSEでは、生活相談ボランティアを募集しています。生活困窮や介護保険などの制度利用、奨学金返還の困難といった相談には、全てボランティアで対応しています。知識や経験は一切問いません。社会福祉士や弁護士によるレクチャーを定期的に開催しているので、相談対応に必要な法制度などの知識は一から学ぶことができます。
会の終わりにボランティア募集のご案内も行いますので、ご関心のある方はお気軽にスタッフにお声をおかけください。
****************************
NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んでくださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
____________________________________________________
NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15 ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
最新の画像もっと見る
最近の「活動報告」カテゴリーもっと見る
【寄付のお願い】過労死やハラスメント自死をなくすための取り組みに、ご支援をお願いします。
7/24 アウティング労災認定の記者会見を開催しました!
1/24、家事労働者過労死裁判の控訴審初回期日へ多くの支援者が駆けつけました!
第8回POSSEオンラインアカデミーイベントレポート「難民を「犯罪者」にする「入管法改定案」を廃案に!ー若者が取り組む日本の難民問題ー」
【寄付のお願い】LGBTQの労働問題を解決する活動へご支援お願いします!
[សំណើសុំការបរិច្ចាគ] សូមជួយគាំទ្រសកម្មភាពដើម្បីការពារសិទ្ធិមនុស្សរបស់សិក្ខាកាមបច្ចេកទេសបរទេស។
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事