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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

【解説①】 経済財政諮問会議 労働市場改革専門調査会 「第四次報告」


 9月17日、これまでの労働市場改革を引っ張ってきた経済財政諮問会議(以下諮問会議)の労働市場改革専門調査会(以下調査会)の「第四時報告」が出されました。これはワーク・ライフ・バランスの理念の下に、労働市場を抜本的に改革しようとしてきた調査会の集大成ともいえる内容になっています。
 これまで諮問会議や会長の八代尚弘氏は規制緩和の推進機関・代表格とされてきました。実際、諮問会議や八代氏の主張は労働などの規制を緩和すべきだというものです。ところが今回出された報告では、きわめて進歩的な政策群が見られます。
 安直な規制緩和から、新しい規制の流れへと方向転換しているようにも見えます。これは規制緩和路線から「労働再規制」へという、流れを意味しているのでしょうか。若干の検討を試みてみたいと思います。

・趣旨
 第四次報告の趣旨は、「「不安定就業者」への総合的な対策のあり方について検討する」というもので、実際に多岐に渡る総合的な政策群を提案しています。中でも、福祉と労働市場政策の一体的活用が強調されているところに特徴が見られます。雇用の不安定化に対して福祉政策と労働市場政策を一体的に取り組もうというものですが、これは画期的な提案だと思います。

・「第四時報告」の概要
▼労働市場政策
 まず、労働市場政策のコンセプトとなっているのが「働き方の壁」の是正です。これは調査会がその発足当初より提起し続けてきたものです。ここでは以下のように書かれています。

「現行制度のままで、非正社員をできるだけ正社員化することで格差を解消するという考え方があるが、それに加えて、非正社員の雇用の安定化への対応も求められている」

 ここでは正社員・非正社員の格差・差別構造そのものの是正を志向していることが伺えます。これまでの厚生労働省や財界が出してきた問題設定は「正社員比率の向上」でした。格差の元である非正規雇用差別は前提のとどめたままで、いかに状況を場当たり的に改善するか、という態度をとり続けてきました。
 調査会はこうした態度と決別し、非正規雇用と正規雇用の格差そのものに手をつけなければならないといっています。そのために必要な政策がいかに示されます。

(1)短時間正社員制度の促進
(2)非正社員の雇用安定化
(3)正社員と非正社員との中間的な働き方
(4)労働市場政策-雇用・処遇の「共通ルール」の策定
(5)ジョブ・カードを通じた職業訓練
(6)脱法行為に対する効果的な是正措置の検討

 この中で特に重要だと思われるのは、(4)労働市場政策-雇用・処遇の「共通ルール」の策定と、(5)ジョブ・カードを通じた職業訓練です。
 前者は非正規・正規を問わない賃金決定や労働条件決定のルールを、しかも個別企業の中での人事制度にとどまらず労働市場全体で設定しようというものです。実は、調査会は昨年4月に出した「第一次報告」で、「外部労働市場が整備され、合理的根拠のない賃金差が解消されること」を目指すとしていました。そこでは外部市場、つまり転職市場の整備によってそれぞれの仕事の賃金の基準が企業を超えて設定され、「同一労働・同一賃金」の基礎が作られると書かれています。
 これは、従来の年功賃金が適用される正社員とそこから排除されてずっと低賃金の非正規雇用という、これまでの日本型雇用システムの枠組みを根本から突き崩す発想です。ここでいう「市場価格」が、現在の法規制・社会的規制の下では非常に低い水準にとどまってしまう危険性が高いことや、この政策が正社員の解雇を容易にすることとセットになっていることで、非常に評価は難しくなっています。しかし、現在の差別的人事処遇のあり方を、企業や雇用形態を超えた「共通ルール」に置き換えていくという方向性は高く評価できるものと思います。
 また、後者の職業訓練についてもかなり具体的なものになってきました。外部労働市場を整備するということは、企業を超えた共通の訓練の仕組みを国家や自治体が整備していく政策とセットでなければなりません。そのことによって、ひとつの企業を超えて働く将来の設計が可能となります。

【解説②】に続く。
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