はじめに、朝日新聞編集委員の竹信三恵子さんから「ワークシェアリングの実像」についてのレクチャーがなされました。本来的にはワークシェアリングのもと、「短時間労働者」は正規雇用との均等待遇を保障され、労働者の賃金カットは生活保障が手厚くされた上で実施されます。ところが、そもそも日本におけるワークシェアリング論は、経団連などの財界によって、「賃下げ」や「非正規雇用化」を推し進めるために欧米から恣意的に輸入されたものにすぎないのです。また、欧米や日本において例外的に成功したワークシェアリングにおいては、ユニオンによる企業側への規制や労働者どうしの連帯が大きな役割を果たしていたことが強調されました。
次に、早稲田大学教授の伊藤守さんから、「外国人労働者の実態とメディア報道のあり方」についてレクチャーがなされました。雑誌のインタビュー内容とはうって変わって、名古屋や神戸における外国人労働者の実態を最新の調査をもとに報告され、金融危機を受けて現在、主に製造業に従事していた外国人労働者が深刻な失業状態にあることが明らかにされました。後半では、次のパネルディスカッションの土台として、なぜ日本のマスメディアが昨今まで「労働」や「貧困」についての報道をほとんどしてこなかったのか、また最近の過剰な報道は視聴率目当ての単なる一過性のものにすぎないのではないのか、という疑問が提起されました。
パネルディスカッションは、伊藤さんは噛み合わないと心配されていたようですが、それどころか、とても刺激的な議論が展開されました。大手マスメディアがなぜ「労働」や「貧困」にたいして沈黙していたかについては、具体的な理由が竹信さんからいわば「証言」されました。また、しばしば「リテラシー論」でもっともらしく説かれるようにマスメディアを信用せず批判的に見るというスタンスではなく、マスメディアは企業広告から成立つ単なる利益集団にすぎない、しかし未だ有効な一つの「媒体」ではあるのでそれをNPOや組合、地域メディアといった中間集団が「使う」ことはできるという、とても特異なメディア論が語られました。最後に、ワークシェアリングを本来の内容を換骨奪胎した財界に対抗できるように、労働側がメディアを「使って」もっと有効的に言葉や文化を発信する必要があると提案されました。
詳しくは近日HPで公表しますが、『POSSE vol.4』が6月末に発売されます。その後にもまた、第二弾のセミナーを予定しておりますので、ぜひ次回の参加もお待ちしております。
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