すっかり秋になりましたねえ。
テレビのニュースでは、紅葉の様子も伝えられるようになりました。
例年より少し暖かい秋のようですが、どんなに晴れても、さすがに
猛暑にはならなくなりました。一安心です。
では、お話の続きを始めましょう。
第二章 新米主婦
第一節 なんてこった
その3 なつかしいねえ~
ある日の午後二時半頃、いつものように奥さんが洗濯物を取り込み、
たたんでいた時、電話がなった。
ジリリーン、ジリリーン 今ではもう見られなくなったダイヤル式の黒電話だ。
奥さんが、受話器をあげると、
「私、t高校で一緒だった・・」
相手が言い終わらないうちに、奥さんが
「あ!naco? その声はnacoでしょ!」
「eちゃん!元気~?」
「元気、元気~!」
電話のむこうは、奥さんの高校時代の友人のようだ。
むこうの声はキンキン聞こえて、奥さんは受話器を少し耳からはなして
しゃべるので、そばにいたボクには丸聞こえだ。
どうやら、この奥さんのあだ名は、「eちゃん」っていうみたいだ。
「なつかしいねえ~~」
「eちゃん、新婚生活はどう?」
「まだ慣れないことばっかりで、なんだか落ち着かないよ。
そちらはどう?旦那様とアツアツ?」
「まあまあまあまあ(笑)」
「高校時代、なつかしいねえ~」
「ホントだねえ。一年生の時、同じクラスでさ、
eちゃんと私は席が前と後ろでさ、お弁当もいつも一緒に食べてたし、
帰る時も一緒。いろんなこと話したよね」
「そうそう。先生がさ、お前たちふたりいつも一緒だなって笑ってたよね」
「そうだったねえ」
「一年生の一学期の中間のあとぐらいに、男子三人がこっそり
コーヒー豆もってきててさ、豆を挽く道具やフィルターや、ポットにお湯まで
持ってきてて、放課後、みんながクラブに行っちゃって教室に誰もいなくなると
コーヒーを作っちゃうんだよね。その仲間にふたりで入れてもらったよね」
「そうそう。その男子三人とeちゃんと私で、`コーヒー会'って名前つけちゃってさ」
「教室がコーヒーのいいにおいでいっぱいになっちゃったよねえ」
「eちゃんはまだコーヒー飲めなくてさ、薄めて飲んでたよね(笑)」
「うん。でも、おいしかったよ。五人でおいしいコーヒーの作り方研究したよね(笑)」
「男子のひとりが、フォークギターまで持ってきて、弾いてくれたよね」
「なつかしいねえ~。
一学期の後半には、家庭科クラブにふたりで一緒に入部したよね」
「そうそう。文化祭の前は、大量のクッキー、作ってさあ」
「でも、文化祭第一日目のお昼には、ぜ~んぶ、売れきれちゃってね」
「人気あったよね」
「だって、おいしかったもんね」
「なっつかしいなあ~」
「文化祭っていえば、文化祭のポスターコンテストに、ふたりで一緒に考えて、応募したね」
「全校生徒の投票で一位になればポスターになるんだけど、二位になっちゃってさ」
「でも、文化祭パンフレットの表紙に採用されたんだよね」
「そうそう。パンフの方がみんなに配られるんだからすごいよって
ふたりで、喜んだよね」
「そうだったねえ。なつかしいねえ。先生達もどうしてるかなあ~」
「物理の先生、こわかったねえ」
「うんうん。いつもの竹の棒を持ってて
机をビシッとたたくんだよね。答えられないと立たされるんだよね」
「だから、みんな、シイ~ンとして、授業はいつも緊張の雰囲気だったよね」
「授業をよく聞いてないと答えられないもんね」
「お蔭で、よく頭に入ったわあ。
もう、みんな忘れちゃったけど(笑)」
「地学の先生、優しかったよねえ~」
「うんうん。人気あったよね。天体や、きれいな鉱石の話、おもしろかったよね」
「化学の授業はヒッチャカメッチャカだったよねえ~」
「年とったおじいさん先生でさ、教科書を読むような授業でさあ。退屈で、退屈で、
みんな授業中勝手におしゃべりしちゃってさあ、男子なんか騒いじゃってさ」
「それでも、先生、授業続けててね。あんまりうるさくなると、さすがに怒って
静かにしろって言ったけど、効き目はその時だけで、すぐまた騒ぎ始めるんだよね」
「お蔭で、化学、なんだかよくわからなくなっちゃったよ」
「何言ってるの、nacoは化学系に進んだんじゃないの」
「まあね(笑)」
「今思えば、先生ちょっとかわいそうだったよね。年だったのにね」
「みんなで、もっと、いたわってあげればよかったのにね」
「そうだよね」
「こうやってしゃべっているといろんなこと思い出すね」
「そういえば、al子とso君って、アツアツだったよね」
「あ、あれね、高校卒業したら、あっさり、別れちゃったんだって。
んでもって、もう、それぞれ、相手がいるらしいよ」
「へえ~、そうなんだあ~」
「高校時代は、eちゃんも私も彼氏なんていなかったね(笑)」
「nacoは、大学入ってから彼氏ができて、今の旦那様だもんね」
「もー、結婚したらさあ、あの時のときめきなんてないよ~。でもね、
かえってお互いが自然体になれたっていうか・・まあ、そんな感じ。
そういう、eちゃんはまじめ一本で、学生時代は彼氏なんていなかったね(笑)」
「私って、松田聖子とか、キャンディーズみたいな現代風の美人じゃないからね(笑)」
「でも、eちゃんの笑顔、好きだよ。優しそうで、ふんわりしてて。
eちゃんってさ、大学卒業して事務職についてさ、社会にでてから、30才位の
殿方にもてたんだよね」
「もてたなんてほどじゃないよ」
「え~そうかなあ~、あの時のあの人とは、どうだったの~?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヒエ~、この話まだ続くよお~!なんてこった!
女性の長電話とはすごいもんだあ。
携帯もメールもチャットも無い時代、黒電話さんは大活躍、ご苦労様でした。
それにしても、化学の授業態度は、けしからんけしからん!
良い子の皆さんは、絶対にまねをしないように。
先生のお話は、きちんと聞きましょうね。
ところで、奥さん、洗濯物たたみはどうなったのお~?
もう3時になったよお~!夕飯の支度、始めるんじゃないのお~?
この続きは、また次回。
次回更新は、10月末頃です。
半袖でもちょうどよい日があったり、長袖を着込む日があったり、
着る物の調節にはくれぐれも気をつけて、秋を元気にお過ごしください。
テレビのニュースでは、紅葉の様子も伝えられるようになりました。
例年より少し暖かい秋のようですが、どんなに晴れても、さすがに
猛暑にはならなくなりました。一安心です。
では、お話の続きを始めましょう。
第二章 新米主婦
第一節 なんてこった
その3 なつかしいねえ~
ある日の午後二時半頃、いつものように奥さんが洗濯物を取り込み、
たたんでいた時、電話がなった。
ジリリーン、ジリリーン 今ではもう見られなくなったダイヤル式の黒電話だ。
奥さんが、受話器をあげると、
「私、t高校で一緒だった・・」
相手が言い終わらないうちに、奥さんが
「あ!naco? その声はnacoでしょ!」
「eちゃん!元気~?」
「元気、元気~!」
電話のむこうは、奥さんの高校時代の友人のようだ。
むこうの声はキンキン聞こえて、奥さんは受話器を少し耳からはなして
しゃべるので、そばにいたボクには丸聞こえだ。
どうやら、この奥さんのあだ名は、「eちゃん」っていうみたいだ。
「なつかしいねえ~~」
「eちゃん、新婚生活はどう?」
「まだ慣れないことばっかりで、なんだか落ち着かないよ。
そちらはどう?旦那様とアツアツ?」
「まあまあまあまあ(笑)」
「高校時代、なつかしいねえ~」
「ホントだねえ。一年生の時、同じクラスでさ、
eちゃんと私は席が前と後ろでさ、お弁当もいつも一緒に食べてたし、
帰る時も一緒。いろんなこと話したよね」
「そうそう。先生がさ、お前たちふたりいつも一緒だなって笑ってたよね」
「そうだったねえ」
「一年生の一学期の中間のあとぐらいに、男子三人がこっそり
コーヒー豆もってきててさ、豆を挽く道具やフィルターや、ポットにお湯まで
持ってきてて、放課後、みんながクラブに行っちゃって教室に誰もいなくなると
コーヒーを作っちゃうんだよね。その仲間にふたりで入れてもらったよね」
「そうそう。その男子三人とeちゃんと私で、`コーヒー会'って名前つけちゃってさ」
「教室がコーヒーのいいにおいでいっぱいになっちゃったよねえ」
「eちゃんはまだコーヒー飲めなくてさ、薄めて飲んでたよね(笑)」
「うん。でも、おいしかったよ。五人でおいしいコーヒーの作り方研究したよね(笑)」
「男子のひとりが、フォークギターまで持ってきて、弾いてくれたよね」
「なつかしいねえ~。
一学期の後半には、家庭科クラブにふたりで一緒に入部したよね」
「そうそう。文化祭の前は、大量のクッキー、作ってさあ」
「でも、文化祭第一日目のお昼には、ぜ~んぶ、売れきれちゃってね」
「人気あったよね」
「だって、おいしかったもんね」
「なっつかしいなあ~」
「文化祭っていえば、文化祭のポスターコンテストに、ふたりで一緒に考えて、応募したね」
「全校生徒の投票で一位になればポスターになるんだけど、二位になっちゃってさ」
「でも、文化祭パンフレットの表紙に採用されたんだよね」
「そうそう。パンフの方がみんなに配られるんだからすごいよって
ふたりで、喜んだよね」
「そうだったねえ。なつかしいねえ。先生達もどうしてるかなあ~」
「物理の先生、こわかったねえ」
「うんうん。いつもの竹の棒を持ってて
机をビシッとたたくんだよね。答えられないと立たされるんだよね」
「だから、みんな、シイ~ンとして、授業はいつも緊張の雰囲気だったよね」
「授業をよく聞いてないと答えられないもんね」
「お蔭で、よく頭に入ったわあ。
もう、みんな忘れちゃったけど(笑)」
「地学の先生、優しかったよねえ~」
「うんうん。人気あったよね。天体や、きれいな鉱石の話、おもしろかったよね」
「化学の授業はヒッチャカメッチャカだったよねえ~」
「年とったおじいさん先生でさ、教科書を読むような授業でさあ。退屈で、退屈で、
みんな授業中勝手におしゃべりしちゃってさあ、男子なんか騒いじゃってさ」
「それでも、先生、授業続けててね。あんまりうるさくなると、さすがに怒って
静かにしろって言ったけど、効き目はその時だけで、すぐまた騒ぎ始めるんだよね」
「お蔭で、化学、なんだかよくわからなくなっちゃったよ」
「何言ってるの、nacoは化学系に進んだんじゃないの」
「まあね(笑)」
「今思えば、先生ちょっとかわいそうだったよね。年だったのにね」
「みんなで、もっと、いたわってあげればよかったのにね」
「そうだよね」
「こうやってしゃべっているといろんなこと思い出すね」
「そういえば、al子とso君って、アツアツだったよね」
「あ、あれね、高校卒業したら、あっさり、別れちゃったんだって。
んでもって、もう、それぞれ、相手がいるらしいよ」
「へえ~、そうなんだあ~」
「高校時代は、eちゃんも私も彼氏なんていなかったね(笑)」
「nacoは、大学入ってから彼氏ができて、今の旦那様だもんね」
「もー、結婚したらさあ、あの時のときめきなんてないよ~。でもね、
かえってお互いが自然体になれたっていうか・・まあ、そんな感じ。
そういう、eちゃんはまじめ一本で、学生時代は彼氏なんていなかったね(笑)」
「私って、松田聖子とか、キャンディーズみたいな現代風の美人じゃないからね(笑)」
「でも、eちゃんの笑顔、好きだよ。優しそうで、ふんわりしてて。
eちゃんってさ、大学卒業して事務職についてさ、社会にでてから、30才位の
殿方にもてたんだよね」
「もてたなんてほどじゃないよ」
「え~そうかなあ~、あの時のあの人とは、どうだったの~?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヒエ~、この話まだ続くよお~!なんてこった!
女性の長電話とはすごいもんだあ。
携帯もメールもチャットも無い時代、黒電話さんは大活躍、ご苦労様でした。
それにしても、化学の授業態度は、けしからんけしからん!
良い子の皆さんは、絶対にまねをしないように。
先生のお話は、きちんと聞きましょうね。
ところで、奥さん、洗濯物たたみはどうなったのお~?
もう3時になったよお~!夕飯の支度、始めるんじゃないのお~?
この続きは、また次回。
次回更新は、10月末頃です。
半袖でもちょうどよい日があったり、長袖を着込む日があったり、
着る物の調節にはくれぐれも気をつけて、秋を元気にお過ごしください。