ようやく朝夕涼しい日が出てきましたねえ。
今年の夏将軍は元気良すぎだったですね~。
さて、お話の続きを始めましょう。
第二章 新米主婦
第一節 なんてこった
その2 なんだこりゃあ~!
奥さんは、大家さんにジイィとにらまれて、一瞬たじろいだが、
「あの~、一週間前に結婚しまして・・・こちらにきてまだバタバタしてまして・・・、
ご挨拶に伺うのがすっかり遅くなってしまって・・スミマセンでした」
と言いながら、奥さんは思った。
(うちの人、大家さんに何にも言ってないんだ・・・)
大家はまだ疑わしい目つきでジロジロジロ。
すると
「あーそれ、ほんとの話だから。あたしが保証するよ。
あたしゃ、すぐ隣に住んでいるんだからねえ。なあんでも知っているんだから」
あの隣の婦人がいつの間にか後ろに立っていた。
「早く流し台のホースを取り替えてあげてくださいな。それにうちの台所の床、
早く直してくださいよ」
大家は「こいつ来た~!」みたいな顔に急になった。
「あー、わかりましたよ。すぐ修理屋を行かせるから」とボソッと言い捨てて、
そそくさと豪邸に引っ込んでしまった。
突然の助っ人登場で、奥さんは一安心したが、
(それにしても、このオバハンって、すごい威力があるんだなあ)と
びっくりするやら感心するやら・・・。
それから、一時間程で、修理の職人がやってきた。
日焼けした顔、坊主頭、目玉がギョロギョロしていて、筋肉質でがっしりした男だった。
「もう安心しな。今、新しいホースに取り替えれば、すぐ直っちまうさ。
こんなの、チョチョィのチョイさ! それにしても、この流し台をよくひとりで
外に運び出したもんだあな。あははははは!」
それから、この男は、
「ふふふ~ん♪ふふ~ん♪」と何やらわからない鼻歌を歌いながら、修理を始めた。
とにかく、この男の声のでかいこと!
早速、あの隣のオバハンが出てきた。
「おや、修理、やってんだね。こんなに古くちゃ、どーしようもないよねえ。
うちだってさ、あっちこっち穴だらけだよ。台所だってさ・・・」
オバハンは、修理の男相手に、いろいろ愚痴っぽく話し始めた。
奥さんはそれをずっと見てるのも変な気がして、家の中に引っ込んだが、
オバハンは修理が終わるまで、ずっとその男相手に家のボロさを話していたようだ。
しばらくして、その男が
「奥さ~ん、手を洗いたいから、水使わせてくれ~。台所は今、流し台をとっぱらっちまってるから、
風呂場でいいや」
「あ、どうぞ、どうぞ」奥さんは風呂場の木のドアをギシっと開けた。
男は、どかどかと上がってきて、風呂場に入った。
その瞬間、男は、すっとんきょうな声で、
「な、なんだこりゃあ~!」
男は、目玉をぐりんぐりんさせて、言った。
「これが、新婚さんの入る風呂かよ~!」
風呂場は、全タイルばりで、壁も浴槽もひびだらけ。木枠のまどは鍵はついているものの
がたぴし。天井は黒ずんでいる。
「奥さん、これ、水たまるの?!」
「あ~、お水ためると一時間で10センチは減ってちゃう・・・」
「クー、なあんてこった! 旦那は何とも言ってないの?」
「風呂はお湯が減っていくけど、下から30センチ位でとまるからって言ってました」
男は壁やら浴槽やらすみずみまで手で触ってひびの状態を確認した。
「奥さん、俺にまかせて。大家に言ってやるよ」
「とにかく、今日のところは流し台だな」と言って、男は修理の続きを始め、
手際よく終わらせ、流し台を台所のもとの場所にきちんと設置した。
水がちゃんと流れることを確認して、「よし、これで大丈夫。んじゃ、奥さん、
今度は風呂、直しに来るからよ。ほかの家の修理とかもあるから、
すぐには来れないけどよお、大家に話してできるだけ早く来るようにすっから」
そして、修理道具を片付けながら、苦笑いして、
「新婚夫婦の風呂なおすのかあ~。俺、いい役、かってでちゃたよなあ~~。
うんじゃなあ~。あ~らよっとお~」
道具をかついで、頭をかきかき、出て行った。
家の中が急に静かになった。
時間は、午後一時半をまわっている。
「あー良かったあ。夕飯のしたくの前に修理が終わって」
この夫婦の夕飯は午後六時。
奥さんは午後三時から準備を始める。本を見ながら、料理メモを見ながら・・・。
ほんとに、新米主婦だね~。
旦那が「お前の料理はうまいなあ」と言っていつも食べるから、ますます奥さんは
準備に力が入っているようだ。まだ結婚一週間だからね(笑)
さて、今日もいつものように夕飯の時がやってきた。
この旦那は、夕飯の時には、テレビのニュースを見るのが日課となっている。
「あ、あのね、今日ね、」
「なんだよ、今、俺、ニュース見てるんだぞ」
「じゃあ、あとで」
「なんだよ、気になるじゃないか」
「あ、今度ね、お風呂、直しに来てくれるんだって・・」
「へー、良かったじゃないか」
「それがね、今日ね、」
「おい、お前もしゃべってないで、今日一日何があったのか、
ちゃんとニュース見ろよ」
「・・・・・」
その後はニュースの声だけがして、二人は静かに夕飯を食べていた。
夕飯の後は、旦那はいつものように、好きなレコードを大音量で楽しみ、
奥さんも横に座って聴いていた。
結局、奥さんは、今日あったいろいろな出来事を言いそびれてしまった。
奥さん、ほんとは、どう思っていたのかなあ・・・。
それにしても、この夫婦、これから大丈夫かなあ・・・。
ボクは、ちょっと心配になったよ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この続きは、また次回で。
次回更新は、間があきますが、十月中旬頃です。
そのころは、すっかり涼しくなっている・・・と思います。
季節の変わりめ、気温の変化に気をつけながら、
皆様お体お大事にお過ごしください。
今年の夏将軍は元気良すぎだったですね~。
さて、お話の続きを始めましょう。
第二章 新米主婦
第一節 なんてこった
その2 なんだこりゃあ~!
奥さんは、大家さんにジイィとにらまれて、一瞬たじろいだが、
「あの~、一週間前に結婚しまして・・・こちらにきてまだバタバタしてまして・・・、
ご挨拶に伺うのがすっかり遅くなってしまって・・スミマセンでした」
と言いながら、奥さんは思った。
(うちの人、大家さんに何にも言ってないんだ・・・)
大家はまだ疑わしい目つきでジロジロジロ。
すると
「あーそれ、ほんとの話だから。あたしが保証するよ。
あたしゃ、すぐ隣に住んでいるんだからねえ。なあんでも知っているんだから」
あの隣の婦人がいつの間にか後ろに立っていた。
「早く流し台のホースを取り替えてあげてくださいな。それにうちの台所の床、
早く直してくださいよ」
大家は「こいつ来た~!」みたいな顔に急になった。
「あー、わかりましたよ。すぐ修理屋を行かせるから」とボソッと言い捨てて、
そそくさと豪邸に引っ込んでしまった。
突然の助っ人登場で、奥さんは一安心したが、
(それにしても、このオバハンって、すごい威力があるんだなあ)と
びっくりするやら感心するやら・・・。
それから、一時間程で、修理の職人がやってきた。
日焼けした顔、坊主頭、目玉がギョロギョロしていて、筋肉質でがっしりした男だった。
「もう安心しな。今、新しいホースに取り替えれば、すぐ直っちまうさ。
こんなの、チョチョィのチョイさ! それにしても、この流し台をよくひとりで
外に運び出したもんだあな。あははははは!」
それから、この男は、
「ふふふ~ん♪ふふ~ん♪」と何やらわからない鼻歌を歌いながら、修理を始めた。
とにかく、この男の声のでかいこと!
早速、あの隣のオバハンが出てきた。
「おや、修理、やってんだね。こんなに古くちゃ、どーしようもないよねえ。
うちだってさ、あっちこっち穴だらけだよ。台所だってさ・・・」
オバハンは、修理の男相手に、いろいろ愚痴っぽく話し始めた。
奥さんはそれをずっと見てるのも変な気がして、家の中に引っ込んだが、
オバハンは修理が終わるまで、ずっとその男相手に家のボロさを話していたようだ。
しばらくして、その男が
「奥さ~ん、手を洗いたいから、水使わせてくれ~。台所は今、流し台をとっぱらっちまってるから、
風呂場でいいや」
「あ、どうぞ、どうぞ」奥さんは風呂場の木のドアをギシっと開けた。
男は、どかどかと上がってきて、風呂場に入った。
その瞬間、男は、すっとんきょうな声で、
「な、なんだこりゃあ~!」
男は、目玉をぐりんぐりんさせて、言った。
「これが、新婚さんの入る風呂かよ~!」
風呂場は、全タイルばりで、壁も浴槽もひびだらけ。木枠のまどは鍵はついているものの
がたぴし。天井は黒ずんでいる。
「奥さん、これ、水たまるの?!」
「あ~、お水ためると一時間で10センチは減ってちゃう・・・」
「クー、なあんてこった! 旦那は何とも言ってないの?」
「風呂はお湯が減っていくけど、下から30センチ位でとまるからって言ってました」
男は壁やら浴槽やらすみずみまで手で触ってひびの状態を確認した。
「奥さん、俺にまかせて。大家に言ってやるよ」
「とにかく、今日のところは流し台だな」と言って、男は修理の続きを始め、
手際よく終わらせ、流し台を台所のもとの場所にきちんと設置した。
水がちゃんと流れることを確認して、「よし、これで大丈夫。んじゃ、奥さん、
今度は風呂、直しに来るからよ。ほかの家の修理とかもあるから、
すぐには来れないけどよお、大家に話してできるだけ早く来るようにすっから」
そして、修理道具を片付けながら、苦笑いして、
「新婚夫婦の風呂なおすのかあ~。俺、いい役、かってでちゃたよなあ~~。
うんじゃなあ~。あ~らよっとお~」
道具をかついで、頭をかきかき、出て行った。
家の中が急に静かになった。
時間は、午後一時半をまわっている。
「あー良かったあ。夕飯のしたくの前に修理が終わって」
この夫婦の夕飯は午後六時。
奥さんは午後三時から準備を始める。本を見ながら、料理メモを見ながら・・・。
ほんとに、新米主婦だね~。
旦那が「お前の料理はうまいなあ」と言っていつも食べるから、ますます奥さんは
準備に力が入っているようだ。まだ結婚一週間だからね(笑)
さて、今日もいつものように夕飯の時がやってきた。
この旦那は、夕飯の時には、テレビのニュースを見るのが日課となっている。
「あ、あのね、今日ね、」
「なんだよ、今、俺、ニュース見てるんだぞ」
「じゃあ、あとで」
「なんだよ、気になるじゃないか」
「あ、今度ね、お風呂、直しに来てくれるんだって・・」
「へー、良かったじゃないか」
「それがね、今日ね、」
「おい、お前もしゃべってないで、今日一日何があったのか、
ちゃんとニュース見ろよ」
「・・・・・」
その後はニュースの声だけがして、二人は静かに夕飯を食べていた。
夕飯の後は、旦那はいつものように、好きなレコードを大音量で楽しみ、
奥さんも横に座って聴いていた。
結局、奥さんは、今日あったいろいろな出来事を言いそびれてしまった。
奥さん、ほんとは、どう思っていたのかなあ・・・。
それにしても、この夫婦、これから大丈夫かなあ・・・。
ボクは、ちょっと心配になったよ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この続きは、また次回で。
次回更新は、間があきますが、十月中旬頃です。
そのころは、すっかり涼しくなっている・・・と思います。
季節の変わりめ、気温の変化に気をつけながら、
皆様お体お大事にお過ごしください。