一寸の兎にも五分の魂~展覧会おぼえがき

美術展のおぼえがきと関連情報をすこしばかり。

「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」

2019-04-25 | 展覧会
2019年の東京の春は、ウィーン芸術祭といっても過言ではありません。




オーストリアとの外交樹立150周年をむかえる2019年4月、東京都美術館と国立新美術館というふたつの大きな美術館で、ウィーンの世紀末美術に関する展覧会が開催されています!

東京都美術館がグスタフ・クリムトに集中した展示であるのに対して、「ウィーン・モダン」展はそれこそマリア・テレジアからはじまって、ビーダーマイアーにシューベルトにヨハン・シュトラウスと、古き良き時代のウィーン文化をまんべんなく紹介するところから始まります。

そして、ウィーン万博を経て、オットー・ヴァーグナーの驚くほど充実した紹介があり、クリムトの華麗な初期作品で盛り上がり、一気に怒濤のウィーン分離派の世界にもつれこむ。

百花繚乱のグラフィック作品からシーレの油彩と断固たる筆圧のデッサンにかけては、連続花火をみているような迫力。

とにかく作品点数が多く、後半に行くに連れて盛り上がるので、最後は駆け足にならないように時間配分が肝心。

地図や図面など細かい作品も多いので、できれば単眼鏡もお忘れなく。

そして最後に図録。
ものすごく重いが美しい。






各章の扉は、銀器を思わせるデザインで、光の具合によって反射するところまで計算されているらしく……負けた。




"ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道

https://artexhibition.jp/wienmodern2019/

《東京展》
2019年4月24日(水)~8月5日(月)
国立新美術館 企画展示室1E

《大阪展》
2019年8月27日(火)~12月8日(日)
国立国際美術館

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見る者の想像力をかきたてるギュスターヴ・モロー、その真髄に迫る展覧会

2019-04-19 | 展覧会
パナソニック汐留美術館で開催中の「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」。
うっかりしていると混雑してしまうかもしれないので、早めに行ってきました。



パリのギュスターヴ・モロー美術館といえば、世紀末芸術に親しむ人にとっては聖地ともいうべき場所。

今回の展覧会は、約2万点近くのモロー作品を有するこの美術館から、選りすぐりの作品を集めた14年ぶりの展覧会(もう、そんなになるのか……と思わず遠い目……)と言うことで、期待は高まります。

今回、ひさしぶりにサロメを描いた作品をまとめて見て、あらためて感じたのは、サロメはいつも、画面の中央ではなく、巨大な伽藍のなかにぽつんといる、ということ。

ときには顔もよく判別できないこともありますが、それによってサロメの神秘性、あるいは永遠性のようなものが強調されているということです。

同じようにモローは、絶世の美女と言われたヘレネやデリラを描いても、顔ははっきりと描かないこともままあります。

でも、そのたたずまいだけで絶世の美女を表現してしまう。

あるいは観る者の想像力に委ねて、各自に補完させる、懐の深さがあるのかもしれません。

画家であれば、腕によりをかけて、これでもか、と「美女」を描きたくなるところを、あえて余韻で見せるところにモローの魅力があるようにも思えます。

とはいえ、今回の展覧会のポスターやチラシでもおなじみの《一角獣》では、おしみなく美女と一角獣の戯れを描いてくれて、まさにうっとり。

「花咲く乙女たちの陰に」とはまさにこのことでしょう(画像は、チラシの一部を拡大)。






この貴婦人たちは、クリュニー美術館の《一角獣のタペストリー》に着想を得ていると言うことなので、数年前の展覧会図録をひっぱりだしてきてイメージを並べてみました。




最後に、展覧会図録は中身ももちろんデザインにもかなり力が入っていて、カバーの《出現》の背景の装飾文様は、ちゃんとエンボスになっています。

見ただけではわからない(買って触ってみないとわからない)ところにもこだわりを感じさせます。
この写真でも、よくわからないかも……。




金曜日の夕方とはいえ、まだ会期前半なのにかなりの人出。ここから連休を経てますます話題になりそうな予感です。
ぜひ、お見逃しなく。

「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」
2019年4月6日(土)~6月23日(日)
パナソニック汐留美術館にて。







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本日のミュージアムグッズ29 雲中供養菩薩像モバイルスタンド@天上の舞 飛天の美展・サントリー美術館

2013-12-25 | 展覧会
なんと、ほぼ2か月ぶりの更新は「本日のミュージアムグッズ」コーナー。

今回は、サントリー美術館で開催中の「平等院鳳凰堂平成修理完成記念 天上の舞 飛天の美」展より、雲中供養菩薩像のモバイルスタンドでございます。



平等院ミュージアムショップからやってきたこのすばらしくきれいなモバイルスタンド(本体価格1500円)。

ポップなカラーとクリアなボディがきれいですし、デスクに置いておいても素敵です。



(横からみたところ)

実際の《雲中供養菩薩像》のイメージとのギャップもかえって新鮮で、アイディアとしては、なかなか秀逸。


(左の雲と右の菩薩を組み立てます)

新年があけたら、仕事場のデスクの友にしようと思います。

というわけで、「天上の舞 飛天の美」展は、2014年1月13日(月・祝)まで。

京都・平等院鳳凰堂の修理落慶に先立って、堂内の国宝 《雲中供養菩薩像》や鳳凰堂内の絵画・工芸作品によって、「平安時代の飛天舞う浄土空間」を再現しようとしたこの展覧会。国宝 の《阿弥陀如来坐像光背飛天》も、寺外初公開だそうです。



というわけで、メリークリスマス。



おまけ:かまわぬの「クリスマスの宴」手ぬぐい。「鳥獣戯画絵巻」のアレンジがきいてます。みなさん、楽しそうですね。








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『岩佐又兵衛作品集』、「朝日新聞 本の舞台裏」で紹介していただきました

2013-11-03 | 展覧会
この秋、絶賛発売中の『岩佐又兵衛作品集―MOA美術館所蔵全作品』(矢代勝也著)が11月3日付『朝日新聞』の「本の舞台裏」コーナーで紹介されました。



大上朝美さんによる記事で、本書刊行のきっかけから、「謎の絵師」又兵衛の紹介、「山中常盤物語絵巻」のドラマティックな来歴まで、コンパクトにわかりやすくまとめてあります。


(『朝日新聞』11月3日付朝刊「本の舞台裏」、執筆=大上朝美)

本書は、アート関連のカリスマブログ「弐代目・青い日記帳」でもご紹介いただきましたので(コチラ)、あわせてご覧くださいませ。

すでに本ブログでもご紹介しましたが(コチラ)『岩佐又兵衛作品集』の最大の魅力は、「山中常盤物語絵巻」「浄瑠璃物語絵巻」「堀江物語絵巻」の3つの傑作絵巻の全画面(もともとはそれぞれ150メートル近い大作)をノーカット・フルカラーでじっくり見られることです。

又兵衛作品に限らず、通常の美術書はもちろん展覧会図録でさえ、絵巻の紹介といっても、代表的な場面を取り出して掲載するにとどまることが多いですが、本書では詞書も含めてまったく省略なしで、すべての画面を見ることができるのです。

これまで、辻惟雄先生の名著『岩佐又兵衛―浮世絵をつくった男の謎』(文藝春秋)や芸術新潮の特集号などでその一部が紹介されてきましたが、もっと見てみたいと思ってこられた方にとっては(わたし自身もその一人なのですが)、願ってもないチャンスですので、ぜひお手にとって又兵衛の世界をじっくり楽しんでいただきたいと思います。

特におすすめなのは、行きかう人々を生き生きと描いた街中の描写や、屋敷のなかの襖絵や屏風の絵柄までも克明に描いている場面です。


これまで、あまりとりあげられてこなかった場面を、敢えてご紹介します。


(『岩佐又兵衛作品集』「浄瑠璃物語絵巻」第4巻より、浄瑠璃姫の館のなかの一場面)


人々が調理をしたり、行水をしたり、散髪をしたり、と当時の風俗が実に手に取るように描かれているのもおもしろく、「洛中洛外図屏風 舟木本」と同じ視点を感じさせます。


(『岩佐又兵衛作品集』「浄瑠璃物語絵巻」第8巻より、宿の井戸端で行水をするおじさんたち)

とまあ、これは氷山の一角で、じっくりと見れば見るほどおもしろいさまざまな場面が散りばめられております。

所蔵するMOA美術館では数年に一度、これらの絵巻を交代で展示する機会をもうけていますが、展覧会会場ですべての場面をじっくりと見ることは、混んでいたり、時間が足りなかったりなど、なかなか難しいもの。

本であれば、好きなときに好きな場面を自分のペースで楽しむことができます。

しかも、A4サイズ見開き単位で展開する大画面、要所要所に盛り込まれた拡大図はかなりの大きさで、迫力があります。

辻先生のご著書でも有名な、「山中常盤物語絵巻」での牛若と盗賊が戦う場面も、この迫力。


(『岩佐又兵衛作品集』「山中常盤物語絵巻」第9巻より 牛若は、笑いながら斬る!)

というわけで、『岩佐又兵衛作品集』、ぜひお手にとってみてください。全国の書店にて絶賛発売中です!

 


この秋、「京都展 洛中洛外図と障壁画の美」で又兵衛の「洛中洛外図 舟木本」が話題になっている東京国立博物館のミュージアムショップにもおいてあります。

ちなみに、MOA美術館では2014年09月26日~10月28日までのスケジュールで、

「又兵衛『豊国祭礼図屏風』と『浄瑠璃物語絵巻』」展が開催されるようです。

生「浄瑠璃物語絵巻」を見られるチャンス! こちらも楽しみですね!

《こちらもおすすめ》
又兵衛ファンなら、こちらも見逃せません!

『洛中洛外図屏風 舟木本』岩佐又兵衛筆 東京国立博物館 監修、本体価格1200円
→東京国立博物館所蔵《洛中洛外図屏風 舟木本》を四分の一のサイズに縮小した複製に、解説を付けた大型リーフレット(左隻と右隻の二枚セット、それぞれ片面が作品、片面が解説)縦42cm×横90cmのサイズなので、細部をじっくり見るには最適です。

『ミラクル絵巻で楽しむ「小栗判官と照手姫」伝岩佐又兵衛画』太田彩監修、本体価格1,800円、B5判、96ページ
→江戸初期の人気浄瑠璃を題材とした、奇想天外な物語絵巻「をぐり」全15巻(宮内庁三の丸尚蔵館所蔵、全長約300メートル)を迫力の大画面で紹介。恋人たちの数奇な運命と聖地・熊野における蘇りの奇跡が、又兵衛工房の真骨頂ともいえる極彩色豊かな細密描写で展開する。


そして最後にもうひとつ、又兵衛の「山中常盤物語絵巻」といえば、羽田澄子監督の映画、「山中常盤」を語らずにはいられません。コチラでご紹介していますので、ぜひご覧ください。







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本日のミュージアムグッズ27 横山大観展の「画伯旅すがた」トートバッグほかのグッズ@横浜美術館

2013-10-06 | 展覧会
横浜美術館にて本日より開催された「横山大観展 良き師、良き友」より、もうひとつ紹介したいグッズがこちら(先に紹介した山口晃トートバッグについてはコチラをご覧ください)。



その名も「画伯旅すがた」ランチトートバッグ(1200円)。

大正4年、横山大観と下村観山、今村紫紅、小杉未醒と、表具師・寺内銀次郎という総勢5名が、汽車に乗らず、人力車や馬車などを使って東海道を旅しながら、現地で写生して描き合作した「東海道五十三次」という9巻に及ぶ大絵巻があり、本展でも一部が展示されています(展覧会HPにて紹介されています)。



この旅は当時でも話題になったようで、東京朝日新聞に紹介された記事にはその旅すがたを描いたカットが掲載されました。

その「画伯旅すがた」カットをあしらったランチトートバッグ。

ほかの4人は見分けられませんが、大観はすぐわかりますね。

白、黒、紺、赤の4色あり、どれも素敵ですが、私はこの手のトートバッグにしてはめずらしい紺にしました。


マチが広いので、かなり大きなお弁当箱でも入りそうです。

ちなみに、この「東海道五十三次」のクリアファイルも売ってます(350円)。



もうひとつ、展覧会の花形としてチラシやポスター、展覧会図録の表紙を飾る「秋色」(個人像、大正6年、1917年)のクリアファイルも紹介します。


(「秋色」のクリアファイルと絵はがき2種。右下は小杉未醒の「飲馬」〈小杉放菴記念日光美術館、大正3年、1914年〉の絵はがき)

鹿といえば、東京国立近代美術館で開催中の竹内栖鳳が描く鹿を見たばかりですが、この鹿の描き方をとっても、両者の特質の違いが明らかなような気がします。

ちなみに、この「秋色」のトートバッグもとてもきれいだったのですが、さすがにバッグばかりそうたくさんも買えないので断念しました……。


(ミュージアムショップの様子。画面中央が「秋色」のトートバッグ)


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本日のミュージアムグッズ26 山口晃画「横山大観と良き師、良き友」肖像画トートバッグ@横浜美術館

2013-10-05 | 展覧会
横浜美術館にて本日より開催された「横山大観展 良き師、良き友」

岡倉天心の生誕150年・没後100年を記念して企画された展覧会ということで、横山大観を中心にその師・岡倉天心を紹介しながら、大観の4人の友(小川芋銭、今村紫紅、小杉未醒、冨田溪仙)らの作品あわせて140件を展示するという展覧会です。

山口晃が天心、大観ら6人の肖像画を描いたことでも話題を呼んでいます。

というわけで、本日ご紹介するミュージアムグッズはまさしくその、山口晃が描く天心、大観ら6名の肖像画をプリントしたトートバッグ(2200円)。



展覧会図録も余裕で入る大きさです。



ちょっとよってみましょうか。




6名それぞれに対する山口晃さんの思い入れなどは、展覧会紹介HPよりこちらのページをご参照ください。

ちなみにこの6枚の肖像画はポストカードとしても売られています(650円)。



会場にはこれら6枚の肖像画も展示されていますが、おそらくほかでは見られないのではないかと思われますので、山口晃ファンの方はお見逃しなく……。


(この写真は、内覧会の際、主催者の許可を得て撮影しています)

展覧会場の入り口では、若き日の大観先生のパネルがお出迎えしてくれるのですが、この写真が山口晃さんに似ていると思うのは私だけでしょうか??(上の写真と比べてみてください……)




「横山大観展 良き師、良き友」展覧会のチラシはこちらです。





横山大観をはじめ、今回紹介される6名を中心とした人物相関図はこちら。



個人的には、冨田溪仙の画業はさまざまな側面があり、かなり力がこもっていて興味深く、もっといろいろな作品をみてみたいと思わせました。

「横山大観展 良き師、良き友」は

2013年10月5日(土)~ 11月24日(日)まで、横浜美術館にて開催中です。

※会期中の展示替え
 前期:10月5日(土) ~ 10月30日(水)
 後期:11月1日(金) ~ 11月24日(日)

おまけ:

山口晃さんといえば、まもなく群馬県立館林美術館で開催される「山口晃展 画業ほぼ総覧 お絵描きから現在まで」も楽しみですね。






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「岩佐又兵衛作品集」又兵衛の絵巻がノーカット・フルカラーで満喫できます!

2013-10-01 | 展覧会
このたび、「岩佐又兵衛作品集 MOA美術館所蔵全作品」(矢代勝也著 東京美術)が刊行されました。

「山中常盤物語絵巻」や「浄瑠璃物語絵巻」をはじめとする岩佐又兵衛とその工房作とされる絵巻がノーカット、フルカラー、適宜拡大図にて満喫できるというぜいたくな画集です。

表紙は「山中常盤物語絵巻」より、牛若からの手紙を読む常盤と、母の仇討ちのため八面六臂の活躍をする牛若丸を描いた場面。



裏表紙は「浄瑠璃物語絵巻」より、天狗にのって矢矧の宿に帰る浄瑠璃姫と「堀江物語絵巻」より父の仇討ちに出かける岩瀬太郎。



本書の魅力はなんといっても、又兵衛とその工房作の代表的な絵巻を最初から最後まで、すべての場面をカラーで見られること。

詞書も省略なしで掲載しています。

辻惟雄先生の著作などで繰り返し紹介されてきた「山中常盤物語絵巻」常盤の臨終場面や、牛若と盗賊の戦闘シーンも、大きな画面で見られます。

しかも、絵の下には対応する場面の説明が入っているので、詞書が読めなくても、絵巻の流れに沿って話の流れがわかります。

あらすじや作品解説は、各絵巻の冒頭にわかりやすくまとめられています。



掲載されているのは、「山中常盤物語絵巻」「浄瑠璃物語絵巻」「堀江物語絵巻」の3つの絵巻のほか、

「柿本人麿・紀貫之図」「寂光院図」「伊勢物語図(鹿と貴人図)」「官女図」「楊貴妃」「歌仙図」五点「自画像」に「自筆書状」も!

「岩佐又兵衛作品集」は2013年9月末刊行。A4判、200ページで本体価格3000円はむしろリーズナブルといってもよい価格。

10月8日から東京国立博物館で開催される「京都 洛中洛外図と障壁画の美」展でも「洛中洛外図 舟木本」が紹介される岩佐又兵衛。この秋、又兵衛が見逃せません。

※「朝日新聞」11月3日(日)付の「本の舞台裏」で『岩佐又兵衛作品集』をご紹介いただきました。ぜひ、コチラもご覧ください。
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園芸好きも必見!江戸時代の草花やきのこの絵が見られる「博物図譜」展示@東京国立博物館

2013-09-29 | 展覧会
トーハクこと、東京国立博物館にて、2013年8月27日から10月20日まで展示されている、「博物図譜」(本館1階の16室)。

前回は、躍動感あふれる魚や動物たちの作品をご紹介しましたが、園芸好きには見逃せない植物を扱った作品も非常に美しいのです(ガラスへのうつりこみなど、ご容赦ください)。

まずは馬場大助の「遠西舶上画譜」より、珠玉の2枚。

この本は、「文化年間以降に渡来した草木349品」を扱っているそうです。




(「遠西舶上画譜」馬場大助筆 江戸時代・文政2年・1855年)

地の色がグレーというか銀色に見えるのは、「袋綴本の間紙」として薄墨色の紙を使っているからだそうで、それがなんともいえず繊細で高貴な雰囲気をかもしだしています。

そしてなんといっても、描写の細やかさに圧倒されます。まずは必見の作品です。

そのほかにも、幕府の御家人だったという岩崎灌園の手になる一連の著作も展示されています。


(「本草図説 草類」岩崎灌園著、江戸時代)


(「本草図譜 雑草類部」岩崎灌園著、馬場大助ほか画 江戸時代)

虫好きには、こんな本も。


(「博物館虫譜 中 蜘蛛類・昆虫類上 関根雲停ほか筆、帝室博物館編 江戸~明治時代)

そして、もっと時代が早い作品でもこのように美しいものもあります。



きのこ好き必見。江戸時代のきのこです。



鳥好きも。



(「随観写真」 10冊 後藤光生編 江戸時代・宝暦7年・1757年)

江戸時代、このように真剣に動植物を観察し、その姿を記録し続けた人々がいたこと、その作業の地道さを思うと、残された作品の美しさを目の当たりにしながら、思わず胸が熱くなってしまうのでした。

昆虫好きには、もうひとつ見逃せない増山雪斎筆「虫豸(ち)帖」は、10月1日から11月10日まで、本館8室で展示されます。

伊勢長島藩の第六代藩主だった増山雪斎が蝶や蜻蛉、蝉、蜘蛛などの昆虫から魚や蛙といったさまざまな生き物を描いたこの図譜では、蝶の鱗粉の質感を出すために金銀泥や雲母が使われているそうです(さすが、お殿様!)。

種類の識別が可能なほど正確な描写だというこの図譜は、科学的な正確さと芸術的な美しさが共存する稀有な作品とのこと。

間近で拝見するのが楽しみです!
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動物好きも必見の「竹内栖鳳」展@東京国立近代美術館

2013-09-09 | 展覧会
開催から1週間もたたぬうちに早くも人気沸騰中の東京国立近代美術館「竹内栖鳳」展。

展覧会の目玉作品のトップバッターは、図録の表紙にもなっている「斑猫」(大正13年、1924年、山種美術館蔵)。


(「竹内栖鳳展」図録表紙。この図録がまた内容の充実度、色の再現性ともに非常にすばらしいです)

残念ながらこの「斑猫」の展示は後期のみということで、今現在は会場では会えないのですが、わたしのような犬好きの方に、ぜひ見ていただきたい作品があります。

ともに同じ仔犬をモデルにしたと思われる、「清閑」(昭和10年、1935年、京都市美術館蔵)と「爐邊(ろべ)」(昭和10年、1935年、足立美術館蔵)。


(上が図録に掲載された「清閑」、下が「爐邊」のポストカード)

よく見るとそれほどリアルな描写ではないのに、仔犬のふさふさした毛や湿った鼻などが手に取るようにリアルに感じられます。

「爐邊」は前期のみの展示なので、お見逃しなく。

ちなみに、「清閑」は今年の5月~6月にかけて各地の高島屋で開催された「美の競演 京都画壇と神坂雪佳展」にも出展されていました(レビューはコチラ)。

このときは、この「清閑」の仔犬がルーペの図柄になっていて、わたしも購入したのですが、今回の「竹内栖鳳展」では「斑猫」がルーペの図柄になっていますので、猫好きの方はぜひどうぞ。



栖鳳は人物、風景もよくしますが、なんといっても動物の描写が非常にいきいきとして、群を抜いて優れています。

そのなかのほんの一部を、内覧会会場の様子からご紹介します(会場写真は、主催者の許可を得て撮影)

比較的若い時代に描かれた「象図」(明治37年ごろ、1904年ごろ、個人蔵)は大胆な筆致で象の力強さだけでなく、優しさのようなものも表現しています。


(「象図」明治37年ごろ、1904年ごろ、個人蔵のクリアファイルより)





前回の記事
でもご紹介した「夏鹿」は本当にいくら眺めてみても見飽きない躍動感に満ちたすばらしい作品なのですが、前期展示のみなので、ぜひお見逃しなく。



(「夏鹿」昭和11年、1936年、MOA美術館蔵、前期展示、東京会場のみ)

子どもの家鴨の屈託なさがほほえましい「若き家鴨」(昭和12年、1937年、京都国立近代美術館蔵)。



虎のちょっとひょうきんな表情がユニークな「雄風」。


(「雄風」昭和15年、1940年、京都市美術館蔵)

ここでご紹介したのはほんの一部で、そのほかにも兎や猿、狐、闘鶏の様子など、身近に観察したさまざまな動物が描かれています。

美術ファンのみならず、動物好きは必見のこの展覧会。動物好きなお子さんにも、ぜひ見ていただきたい展覧会。きっと楽しめます。

東京での会期は10月14日までですが、展示がえがありますので事前にチェックしてお出かけください。もちろん、前期(~9月23日まで)・後期(9月25日~)それぞれに見逃せない作品がでているので、両方ご覧になることをおすすめします。

関西方面の方は、10月22日からの京都市美術館での開催をもうしばらくお待ちください。



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今日のトーハク「十二神将」にも会えます

2013-09-05 | 展覧会
「国宝 興福寺仏頭展」で人気沸騰の十二神将。

東京藝術大学大学美術館の帰りにはトーハクの常設展示もお忘れなく。

鎌倉時代、浄瑠璃寺伝来の十二神将、四躯に会えます。



頭にちょこんと蛇をのせた「巳神」



展示は11月17日まで、東京国立博物館、本館14室にて。

お見逃しなく。
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