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真の中国を語る出色の対談独立総合研究所社長・青山繁晴が読む
1ページごとに確実に役立つ情報を読者に提供し続ける、出色の対談である。すでにベストセラーと言ってよい売れ行きだと聞くが、読者の目は肥えている証左だ。
現在と近未来の日本国民の生活を考えると、中国は決して避けて通れない。たとえば身近な食品の危機や大気汚染の波及をはじめ、日本企業の今後から国民と国家の生存に至るまで、中華人民共和国という世界観のまるで違う巨大な存在のリアリティーを把握しないと、すべての政策も対策も意味を持たない。
この書は、中国の現実について広く包括的に、かつ明瞭に、あくまで具体的に明かしてくれる。中国で生まれ育った石平氏が身の危険を冒してまで踏み込んで述べていると同時に、その捨て身を受けて立つ有本香氏が実によく取材し事実を掴(つか)んでいるから、それが可能になっている。
本書が明かすショッキングな事実は、中国の真の姿に加えて、もうひとつある。それが日本の自称リベラル派の姿である。リベラルは、発祥の地の欧米では、自由と人権を護(まも)りたいと信じるときにはみずから銃を手に取ってでも戦う人々を本来、指している。だからアメリカでは、ベトナム戦争をケネディ大統領をはじめ民主党政権が担い、共和党のニクソン大統領が終わらせた。
だが日本では逆だ。国民が中国に何をされても、中国の属国であろうとする韓国に領土を奪われ国民の名誉を大嘘で汚されても、中国が属国にしたい北朝鮮に国民が拉致されても、一切争わずに、国民より中韓、北朝鮮を尊重する人々を指している。
有本氏が、共産党の指示のもと押し寄せた中国漁船団によって、大切に育てあげた赤サンゴをすべて奪われた東京都民、すなわち小笠原諸島、伊豆諸島の漁民のかたがたの実像を語り、言葉の背後からとめどない悲しみ、怒り、国民への愛情が噴き出て、石平氏がそれを熱く受け止めるのが、この書である。異様な日中関係に危機感を持つ目覚めた国民に加えて、リベラリズムを語る人々もどうぞ心を澄ませて読んでほしいと願う。(産経新聞出版・1200円+税)
評・青山繁晴(独立総合研究所社長)
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