登頂前日の休養日は一日中天気が悪く、小屋付近でも積雪。山頂は厚く黒い雲に覆われていました。
気分もブルー。「せっかく遠いロシア辺境の地まで来たのに、登れるだろうか‥‥」
小屋は荒天で足止めをくった人々も加わり、混雑するようになってきました。
ランチを食べに食堂棟へ行ったとき、ガイドのバレンティンは余裕の表情。
そして彼は言いました。
「君に登ろうという意志さえあれば、明日は登れるよ。ただしかなりの強風&地吹雪だから覚悟が必要」
去年の12月、友人のノルベルトと登った冬富士を思い出しました。ガチガチに凍った青氷の富士山を、強風に飛ばされそうになりながらもダブルアックスで耐えて山頂へ行った時のことを。
「そうだ。あれを思えば大丈夫!」
‥‥そして、その夜はぐっすり熟睡した私でした。(なんてノー天気な自分なんだろう~)
翌朝1時半起床、2時朝食、2時半出発。
実は、小屋からエルブルースを登る場合、ほぼ全員が雪上車(定員12名)を使って標高5千mまで上がります。
大グループならまだしも、「単独+個人ガイド=2名」の私には借り上げ費用が払えません。
そこでヴァレンティンは前日、私のためにスノーモービルを予約してきてくれました。
こちらは1台約5千円、スパシーバ!(ロシア語でありがとう)
真っ暗な中、午前2時半に小屋をトップでの出発。
ガタガタで亀裂だらけの氷河を登っていきます。「クレバスに落ちたらどうなるのだろう?」
スノーモービルは左右に揺れ上下に揺さぶられながら進みますが、それは恐怖の一言です。
そして一度、実際に大転倒して、私は5mぐらい飛ばされました。(山での遭難よりモービルの事故で死ぬかと思いました)
スノーモービルで4500m地点までなんとか駆け上がり、ここから歩きとなりました。
前日の積雪は30~50cmほど。ヴァレンティンは真っ暗な急斜面を果敢にラッセルしていきます。
5000mを超える頃には風速25mぐらい、飛ばされそうな風です。
しかし彼はスピードを緩めません。実に強靭な体力。
そして私には「離れないでついてきて下さい」を繰り返します。
視界は10m程度、地吹雪でトレースも消えるかもしれません。離れれば自分も危ないから、必死でついていくしかないのです。
私「どうしてこんなに急ぐ? 私は疲れているので休みたいよ」
ヴァレンティン「実はここからサドル(西峰・東峰間の凹部)までは微妙に危ない急斜面のトラバースだ。そこは本日出動のガイドの中で最も技術がある僕が、道を作らなければならないんだ」
私「‥‥‥‥」
本日、山頂を目指す者のうちガイドは20~30人もいるでしょう。
しかし彼らのなかで最も体力と登山技術のあるのは自分であり、自分が道を作らなければならないというのです。
その誇り、あっぱれ!
(しかし、クライアントの私は、大変でした)
1回5分間の休憩で2本のエネルギーゼリーを呑み込んだ以外はノンストップ。
山頂到着9時30分。時折切れる雲の間から陽が射し、一瞬現れる風景を楽しみました。
山頂で握手しようとする私に対しヴァレンティンは、厳しい表情で断ります。
「この強風とブリザードだ。下りが危ない。握手は小屋まで待って。すぐに下ろう」
彼の厳しい言葉に武者震い、休憩なしですぐさま下りにかかりました。
小屋が見えた安全圏で初めて、休憩が許され写真も取れました。
山頂で私はカメラのシャッターを押す時間的余裕すら与えられなかったのでした。
13時35分、小屋到着。(下りは速いなぁ)
リフトがまだ動いている時間に戻ることができたため、その日のうちに麓のホテルまで下ることとなりました。
Cheget村の広場のカフェから見上げるカラカス主稜線と氷河。
モチロン、このビールで一人乾杯です。
最初のグラスを開けたとき、ようやくジワリと登頂の喜びに浸ることができました。
エルブルースに乾杯! 登らせてくれて、ありがとう。
ヴァレンティン、ありがとう。
気分もブルー。「せっかく遠いロシア辺境の地まで来たのに、登れるだろうか‥‥」
小屋は荒天で足止めをくった人々も加わり、混雑するようになってきました。
ランチを食べに食堂棟へ行ったとき、ガイドのバレンティンは余裕の表情。
そして彼は言いました。
「君に登ろうという意志さえあれば、明日は登れるよ。ただしかなりの強風&地吹雪だから覚悟が必要」
去年の12月、友人のノルベルトと登った冬富士を思い出しました。ガチガチに凍った青氷の富士山を、強風に飛ばされそうになりながらもダブルアックスで耐えて山頂へ行った時のことを。
「そうだ。あれを思えば大丈夫!」
‥‥そして、その夜はぐっすり熟睡した私でした。(なんてノー天気な自分なんだろう~)
翌朝1時半起床、2時朝食、2時半出発。
実は、小屋からエルブルースを登る場合、ほぼ全員が雪上車(定員12名)を使って標高5千mまで上がります。
大グループならまだしも、「単独+個人ガイド=2名」の私には借り上げ費用が払えません。
そこでヴァレンティンは前日、私のためにスノーモービルを予約してきてくれました。
こちらは1台約5千円、スパシーバ!(ロシア語でありがとう)
真っ暗な中、午前2時半に小屋をトップでの出発。
ガタガタで亀裂だらけの氷河を登っていきます。「クレバスに落ちたらどうなるのだろう?」
スノーモービルは左右に揺れ上下に揺さぶられながら進みますが、それは恐怖の一言です。
そして一度、実際に大転倒して、私は5mぐらい飛ばされました。(山での遭難よりモービルの事故で死ぬかと思いました)
スノーモービルで4500m地点までなんとか駆け上がり、ここから歩きとなりました。
前日の積雪は30~50cmほど。ヴァレンティンは真っ暗な急斜面を果敢にラッセルしていきます。
5000mを超える頃には風速25mぐらい、飛ばされそうな風です。
しかし彼はスピードを緩めません。実に強靭な体力。
そして私には「離れないでついてきて下さい」を繰り返します。
視界は10m程度、地吹雪でトレースも消えるかもしれません。離れれば自分も危ないから、必死でついていくしかないのです。
私「どうしてこんなに急ぐ? 私は疲れているので休みたいよ」
ヴァレンティン「実はここからサドル(西峰・東峰間の凹部)までは微妙に危ない急斜面のトラバースだ。そこは本日出動のガイドの中で最も技術がある僕が、道を作らなければならないんだ」
私「‥‥‥‥」
本日、山頂を目指す者のうちガイドは20~30人もいるでしょう。
しかし彼らのなかで最も体力と登山技術のあるのは自分であり、自分が道を作らなければならないというのです。
その誇り、あっぱれ!
(しかし、クライアントの私は、大変でした)
1回5分間の休憩で2本のエネルギーゼリーを呑み込んだ以外はノンストップ。
山頂到着9時30分。時折切れる雲の間から陽が射し、一瞬現れる風景を楽しみました。
山頂で握手しようとする私に対しヴァレンティンは、厳しい表情で断ります。
「この強風とブリザードだ。下りが危ない。握手は小屋まで待って。すぐに下ろう」
彼の厳しい言葉に武者震い、休憩なしですぐさま下りにかかりました。
小屋が見えた安全圏で初めて、休憩が許され写真も取れました。
山頂で私はカメラのシャッターを押す時間的余裕すら与えられなかったのでした。
13時35分、小屋到着。(下りは速いなぁ)
リフトがまだ動いている時間に戻ることができたため、その日のうちに麓のホテルまで下ることとなりました。
Cheget村の広場のカフェから見上げるカラカス主稜線と氷河。
モチロン、このビールで一人乾杯です。
最初のグラスを開けたとき、ようやくジワリと登頂の喜びに浸ることができました。
エルブルースに乾杯! 登らせてくれて、ありがとう。
ヴァレンティン、ありがとう。
乾杯のビール、5642の文字がいいですね。
記念にビール瓶かラベルを持って帰りましたか。
今回コメント投稿用の確認数字は6541でした。
ちょっと似ていますね。
写真をみているとすごい登山家のNHKかなんかのドキュメンタリーをみているみたい。
なんか田部井さんみたいになったね。
ビール王冠を持って帰ろうと思っていたのに、心地よく酔っぱらって忘れてきました。しまった~
田部井さん‥‥‥、とんでもありません。
エベレストはせめてその姿を拝んでみたいです。