恩師を悼んで

私が今の仕事を志したのは、高校時代の恩師Ｓ先生の影響でした。

駆け出しの頃、Ｓ先生に連れられて白山山域の調査に歩き、険しい沢も登りました。
重い岩石や化石をリュックサックいっぱいに担いで歩き、バテテしまったのは、ほろ苦い思い出。

青年海外協力隊としてコロンビア共和国に派遣されていた２年間、毎月励ましの手紙をくださいました。
当時のコロンビアは治安と政情が非常に悪い上、マラリアやコレラが大流行していて、毎日周りで沢山の人々が無くなっていました。
狂いそうな緊張感の中で、「元気で笑顔で、現地の人々のために活動しなさい」という先生の手紙を、何度繰り返し読んだことか。

帰国後、一から勉強しなおしたいと大学院博士課程に入学を決めたのも、先生の励ましのおかげ。
博士論文ができて先生に届けに伺ったとき、本当に喜んでくださいました。

80歳近くになり病気で入院された先生、お見舞いに伺ったとき、病室で読んでおられたのは、英語の論文でした。
「この論文、面白くてね」笑顔でおっしゃいました。
生涯勉強、身をもって教えてくださいました。

Ｓ先生、ありがとうございました。生涯の師、第二の父です。
先生を恩師に持つことができて、本当に幸せです。