迷っている・・・・・・・・・煩悩にまみれて、迷っている・・・・・無明の闇の奥に、食欲の煩悩の炎がメラメラと燃えあがっているのである・・・・・・
「かつ丼」か、「冷たい肉そば」か・・・・・
山形滞在での、最後のお昼ごはんである。
拙僧の出身地、河北町名物数々あれど・・・・「冷たい肉そば」を食べるべきか、それとも、カレー風味のソースだれをくぐってきた、さっくりアツアツのソースかつ丼か・・・・・・揺れているのである。
心は激しく波打ち、そして春のおだやかな日々を忘れた冬の日本海のように、荒れ続けるのである。
このところ帰郷のたびに冷たい肉そばは食べてきたのだから、たまにはかつ丼も、と思うのだけれど、
いやいや、今度帰ってこれるのはいつになるか解らないのだから、とおもうと、やはり蕎麦も食べたい。
しかし、久しく食べていないカレー風味の香ばしいソースかつ丼のいい匂いにもこころ惹かれ・・・・いつしか煩悩の熾火がまた燃え上ってしまうのである・・・。
主よ、憐れみたまえ・・・・・ああ・・・・
そのときである。
「だったら『といや』さんに行けばいいじゃないか」と、極楽から亡き師匠の声。
おお、そうだ、「といや」があるじゃないか!
河北風ソースかつ丼の老舗、しかも、しっかり鶏だしのきいた塩味系(?)冷たい肉そばもある地元の名店。
早速、「といや」でのお昼御飯に出陣、である。
最後の一席であった。さすが人気店である。
ミニかつ丼と冷たい肉そばのセット・・・・すばらしい、これ以上何を望むことがあろうか・・・・・。
「じゃあ、お兄ちゃんはセット。私はかつ丼。お母さんは冷やし中華。はい、よろしく。」
妹よ、兄は冷たい中華も食べたかったのだよ・・・・・・・心の中で叫んだが、遅かった。
待つこと10分。
妹の目の前に運ばれてきた。かつ丼、である。
子供のころ、かつ丼はこういうものだと思っていた。
卵でとじた、いわゆる「煮かつ丼」を食べたのは、かなり成長してからであった。こんなのかつ丼じゃない、とおもった。
しかし、全国的には「煮かつ」がかつ丼の主流であった。
偽物と思っていたものが主流と知った時、わたしの世界観は、少し変わった。
まあ、いい。「といや」のかつ丼に戻ろう。
ふた粒のグリンピースと、真っ赤な紅ショウガ。
理不尽なほど、単純な色使い。
しかしその単純な色の奥深くから立ち上る、ビクウをくすぐる懐かしいカレーソースの、香ばしい香り。
うう、たまらん・・・・・・
お米は地産地消でつや姫かどまんなか(かもしれない)。美味しいに決まっている。
妹は箸をわって、お味噌汁を一口飲んで、おもむろにどんぶり持ち上げて・・・・・・・・・真ん中の大きいカツから食べ始めた。
ゥわあ、旨そう・・・・・)^o^(
さらに待つこと数分。セットの登場である。
ミニかつ丼とはいいうものの、結構なボリュームである。感激のあまり、手が震えて写真がうまく写せない。
しょっぱすぎないソースだれ。ほんのりカレーの味がしみた御飯が、また旨い。
老舗のつめたい肉そばも、その端正なたたずまいからして、すでに歴史的世界遺産的存在感を漂わせている。
実食。
旨い。
きれいに澄んだダシ汁。少し固めにゆでた麺。コシのある鶏皮。
お口の中はカツ丼と肉そばの小宇宙がぶつかり合って、まるでビッグバンと化している。
幸せである。美味しいものは、人を幸せにする力がある。口福力とでもいおうか。
でも、こんだけ食べたら帰りの高速道路、眠くなっちゃうなあ。
いいなあ、故郷は。
故郷を離れて避難してる人達も、早く地元で自分たちの食べなれたものを、お腹いっぱいたべられたらいいのになあ・・・。
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冒頭の写真はねじ花。霊園のあちこちにたくさん咲いています。
ちっちゃい花ですが、よく見るとちゃんと蘭の花の形をしています。
沙羅やアジサイも終わりに近づきましたが、枯れゆく花のひとつひとつからも、命のいとなみ、宇宙の鼓動を感じることができます。
御盆の棚経の時期になりました。更新はしばらくお休みになります。
今日はここまで。
檀信徒皆さん大変感銘を受けておりました。
といやの肉そばも、結構いけます。ぜひ一度、かつ丼とセットでお召し上がりください(^o^)/