さんぜ通信

合掌の郷・倫勝寺のブログです。行事の案内やお寺の折々の風光をつづっていきます。 

春の来ない冬はない

2011-04-19 07:13:03 | 東日本大震災

 

13、14日の2日間、親戚のいる塩竃市、知人のお寺のある登米市、炊き出しに行く予定の石巻市、そして実家の山形に行ってきました。
おかげさまで、山形の実家の方は何ともありません。ご心配いただきました皆様、ありがとうございました。

さて、13日は朝7時過ぎに横浜を出発。
途中休憩をはさみながら登米市の友人のお寺に着いたのが午後1時半。
津波の被害が無い地域でしたので、見た目は平穏な田園風景です。
しかし、橋をひとつ渡ると風景は一変しました。
石巻市内を一巡案内してくれたのですが、大津波の凄まじい被害の跡に茫然自失、言葉になりません。

ボランティアの方々が泥だらけになりながら、家の掃除を行っています。
ガレキ撤去のために、市内にたくさんの重機も入っています。
いつになったら全部片づけが済むのでしょうか・・個人の力ではとてもどうにもなるものではありません。

市内の小高い場所にある日和山公園から、浜の通りの様子が一望できます。
どこかで見たことのあるような風景・・・想い出したのは、原爆の被害を受けた広島や空襲後の東京の写真でした。

浜の通りの松並木には、木の上の方までたくさんゴミが絡まっています。
震災直後、その松の枝につかまって救出を待っていた人たちもたくさんいたそうです。
しかし、濡れた身体に降り始めた雪のせいで力尽き、多くの方がボタボタと水の中に落ちていったのだそうです。
ただただ、絶句するばかりです。

暗い気持ちで運転しながら街中を行くと、壊れた家の裏手にふっと明るく輝く場所がありました。
白梅が咲いているのです、しかも満開。
そこだけ、空気の匂いも違う気がしました。

春の来ない冬はない。

焦らず、一日一日をしっかりと、そして少しずつでも前に進んでいくことが大事なのだよ、と教えてくれているようです。
この梅の木に実がなるころは、少しずつでもきっと復興の歩みがすすんでいることでしょう。

さて、石巻市内をまわったあと、炊き出し予定のお寺さんに立ち寄って打ち合わせをさせていただきました。
現在、避難所の食事を担当しているのは、被災したレストランの店主の方。
彼が責任者となり、いっしょの避難所にいる方々が当番でご飯作りに参加しています。
つまり、よそからの手伝いではなく、避難所のなかで力を出し合っているのです。



今月下旬に炊き出しに来ますよ、というと、少し休めるねと、料理長はちょっと嬉しそうです。
震災直後は450人近くの方が、このお寺に避難していたのだとか。
徐々に減っていって今はだいたい70家族、160人ほどが本堂や客殿、事務室で暮らしています。
そんな多くの方々の食事の面倒をひとりで見ているのだから、とても大変です。

食事の準備が整ったことを知らせる雲版(雲型の鉄板)が打ち鳴らされ、皆が本堂に集まってきました。
この日の晩御飯の献立は、シチューにツナサラダ。
友人とふたり、方丈さんご家族と一緒に夕食を御馳走になってしまいました。
美味しい、そして量もたっぷり。

「僧堂の規則が、共同生活する時はとても役に立つ」と住職さんが言います。
共同生活だから、出来る仕事はみんなで分担して行っているとのこと。

朝はみんなで読経をして亡くなった方の冥福を祈り、お粥の食事。
午前8時にはスタッフミーティング。
その後、みんなはそれぞれガレキの片付けに行ったり、夕食の準備をしたり。
午後4時半の夕食は全員集合していただきます。そしてその後は、必要に応じて講習会が行われます。
この日は、役所へ提出する罹災証明書類の書き方の講習会でした。先生もここにいる被災者の方。
遅くとも9時ころには、皆さん就寝します。

大人たちが協力し合うのはもちろん、小さな子供たちが靴を揃えたり、水汲みをしたり、トイレ掃除もみんなで分担です。
いっしょに暮らすお互いのために、みんなが一生懸命働いています。

「ボランティアの方や役所などに頼りっきりになっている避難所では、はきものも乱れているし、
トイレも不衛生でノロウイルスが発生しているところもあるけれど、ここではそんなことはありません。」

自分が出来る仕事があるということ、そして愛情をかける相手がいるということ、このふたつが生きる力になる、と聞いたことがあります。
避難所での暮らしも、もちろん同じことでしょう。
仮設の台所からは、お母さん方の笑い声が聞こえました。

こんど炊き出しに行ったときに、もっと詳しくお話を聞いてみようと思っています。
危機的状況になったときのお寺の、そして住職の役割を。なにができるかではなく、何を為さねばならないか、を。
被災見舞いに行って、逆に元気をいただいてきた2日間でした。

お忙しい中、ご指導いただきましたD源院・O老師、そして同安居のK林寺・T山さん、ありがとうございました。
下旬にお邪魔いたします。
微力ですが、お手伝いさせていただきます。

今日はここまで。 

 

■さんぜのまなざし goo別院 1104

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。