【GEORGE with “Rickenbacker 360-12”(in 1964)】
ビートルズが採用した12弦ギターにはエレキ・アコギの各分野で
いろいろとありますが、今回は1964年にジョージ・ハリスンが最初に
使用した“Rickenbacker 360-12 ”を中心に取り上げたいと思います。
同ギターのディテールについてはこの記事で既にご紹介いたしました。
ご参照ください。
1964年 2月、ビートルズはアメリカをまさに「侵略」しようとして
いました。彼らが滞在していた時に、リッケンバッカー社は当時では
珍しかったエレクトリックの12弦ギターをジョージに贈ったのです。
“360-12”は同社としては初の12弦ギターであり、ジョージに贈ら
れたそれは2本目に生産されたものでした。
「なぜ12弦ギターなのか」ですが、1本のギターでありながらも
複数人で同一のギターを演奏しているかのような「音の厚み」を得ら
れることが大きな理由でした。現在と異なり、音に対する特殊効果を
付加するテクノロジーが発展途上の段階であったため、プレイヤーや
レコーディング・スタッフは「最小の物理的資源でいかに最大の音響
的効果を出すか」ということに、当時日夜腐心していたのです。
そのような状況下で、リッケンバッカー社は“360-12”を世に送り
出しました。この“360-12”は、既によく知られているように様々な
革新的な「仕様」を有していたのです。
まず、12弦ギターの「弾きにくさ」を解消したことです。12弦
ギターはその構造上、どうしてもヘッド部が長くなり、プレイヤーが
ギターを抱えた際に、ヘッド部が下がってしまうことが問題でした。
同社はこの問題を「ヘッド部を6弦ギターと同じ長さにする」ことで
解決したのです。具体的には、12個のペグをヘッド部に「3次元」に
配置する手段を採りました。これは正・副の弦とそのコースが一目で
識別できるために、チューニング時間が大幅に短縮される副次的効果
をも生み出しました。しかし、そうなると細いネックが6弦ギターの
倍の弦の張力に耐えられません。リッケンバッカー社は、この問題を
どのように解決したのでしょうか。それは、細いネックの中に2本の
トランスロッドを組み込んだことです。
次に、ネックを6弦ギターと同じ太さにしました。これによって、
プレイヤーが6弦ギターから“360-12”に持ち替えた場合でも違和感
無くプレイができるようになったのです。
リッケンバッカー社は12弦ギターの普及にあたり、「広告塔」が
必要でした。1963年末、既にビートルズはその潜在的能力が評価され
る状況であり、またジョンとジョージが同社のギターを使用していた
という事実から、彼らに白羽の矢が当たったわけです。このことは、
結果的に同社やビートルズに幸運をもたらしました。
最後に、12弦ギターを採用した前後のビートルズの音楽的状況に
触れておきましょう。1963年後半でビートルズは既にイギリス国内で
№1グループのポジションを確立していました。またコンサート会場
では、日増しに熱狂的なファンに支えられるようになるいっぽうで、
レコーディングの現場では、「一発録り」から「オーバー・ダブ」へ
それを容易にするレコーディング・トラック数も「2トラック」から
「4トラック」へと拡張されました。その中でビートルズは、4人と
いう小編成のグループの中で「いかにサウンドに変化をもたせるか」
また「いかにサウンドを厚くさせるか」常に探求していました。その
タイミングで“360-12”を贈呈されたわけです。
1964年の夏にリリースされたアルバム“A HARD DAY'S NIGHT”は、
“360-12”のオン・パレード。同名の映画は、そのサウンドと映像と
ともに、“360-12”のプロパガンダ・フイルムとなったのです。
その後・・・。“A HARD DAY'S NIGHT”を観たロジャー・マッギン
がリッケン・バッカーの12弦ギターに興味を抱き、後の「バーズ」
の多くの曲で12弦ギターを使用したことは、よく知られています。
かなり大袈裟かもしれませんが、もしもビートルズが12弦ギターを
採用していなかったら・・・、レッド・ツェッペリンの「天国の階段」
イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」における、あの素晴らしい
リフやイントロは生まれていなっかたのかもしれませんね。
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