【PAUL McCARTNEY with “CASINO”】
ビートルズが使用していた楽器のひとつに“Epiphone CASINO ”が
あります。しかもこの楽器はジョン・ポール、そしてジョージが使用
した楽器です。センスや好みの異なるアーティストが、こぞって使用
したということは、それだけの価値があるということなのでしょうね。
わたしも1970年代中盤の日本製のモデルを所有しています。カジノ
を購入したきっかけは、「ビートルズ日本公演の写真」です。それを
見たときに衝撃が走りました。洗練されたシェイプと色調、ジョンと
ジョージが揃って使用していること・・・。「これは欲しい」と思い
ました。
さて、日本公演のインパクトが強かったために、ずっと見落として
いたことがあります。それは「ビートルズでカジノを最初に使用した
のはポールだった」という事実です。
1964年の12月下旬、ポールはクリスマス・ショーのリハーサルで、
Epiphoneの2本の新しいギターを披露しました。1本は‘Yesterday ’
の弾き語りで有名な“TEXAN FT-79 ”で、もう1本が“CASINO”すな
わち“ES-230TD”でした。このときはまだ右利きの仕様で、ポールが
ジョージとなにやら左利き仕様にする手段を検討している写真を確認
することができます。
ポールが購入した“CASINO”のヘッドはEpiphoneが後に採用した砂
時計型のものではなく、横幅の広い形でした。ポールはこのカジノの
弦を左利き用に張り替え、オクターヴの音程が合うようにブリッジの
角度をサドルの許容範囲で調整しました。さらに、彼はカジノをスト
ラップで吊って弾けるようにするために、構えた際に上側にくる側の
ホーンにストラップ・ピンを付けました。ジョンやジョージのモデル
とは異なり、ポールの旧式モデルにはストラップ・ピンが付いていな
かったようです。
価格は・・・。1964年に 164ギニー(現在の貨幣価値で約3,000$)
だった“CASINO”は、当時のEpiphoneのラインナップの中でも高価な
モデルというわけではありませんでした。「ビートルズのメンバーで
あればもっと高価なものを・・・」と思われるのですが、なぜ比較的
安価なモデルをポールは選択したのでしょうか。彼はこう語ります。
Bigsbyの付いた楽器が欲しかったんだ
しかし、もっとも有名なコメント
もしもエレクトリック・ギターを1本だけ選べ
と言われたら、これにするだろうね
という中に“CASINO”をチョイスした理由が隠されているようです。
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