the Saber Panther (サーベル・パンサー)

トラディショナル&オリジナルの絵画芸術、化石哺乳類復元画、英語等について気ままに書いている、手書き絵師&リサーチブログ

『バトル・ビヨンド・エポック』其の十 ◀超時空邂逅!! ・ 獣脚類恐竜 と '獣脚類の代理者' ▶(再度画質改善版)

2022年04月09日 | 中 / 新 生代インタラクション 特集(期間限定シリーズⅢ)

Battle Beyond Epochs  Part

超時空邂逅獣脚類 '獣脚類の代理者'

  Transcendental Crossover : 'The Theropod Vicar' meets a THEROPOD

/ 新 生代 Meso / Ceno Zoic INTERACTION

 

 

今回のバトル・ビヨンド・エポックでは、「獣脚類の代理者」と「真正の大型獣脚類恐竜」の超時空邂逅の瞬間を描出している。バリナスクス・アルヴェロイはゼナストラポテリウム属種(アストラポテリウム科の大型種でクロサイほどの大きさ)を、ダスプレトサウルス・トロススはコロノサウルス属種(角竜類の中型種)をそれぞれ猛追し捕えんとしていた折、時空に不可解な歪みが生じお互いが鉢合わせする事態となり、刹那、攻撃対象を目前の敵へと切り替えた!(フィクションです)





:Species:
左下段から時計回りに
 
(中新世中期・南米北部パンマゾニア およそ1100万年前)
ゼナストラポテリウム属種 Xenastrapotherium christi
 
バリナスクス属最大種 Barinasuchus arveloi


(白亜紀後期・北米バッドランド(アルバータ) およそ7700万年前)
ダスプレトサウルス属種 Daspletosaurus torosus

コロノサウルス属種 Coronosaurus brinkmanni
 

この「モンスター・コリジョン」に先立ち、主にバリナスクスの紹介、および、実際に大型の陸ワニと大型の非鳥類型獣脚類が、新生代の南米において共生できた可能性もあったということについて、簡単に略述しておこうと思う。


ーーーーーー


南方ワニ亜目(Notosuchia)・セベクス分岐群(Sebecosuchia)は主に南米に分布した陸生ワニ型類のグループで、恐竜時代のジュラ紀中期に起源をもち、新生代に入ってからも存続、南米では新第三紀に至るまで繁栄を続けた。今作の主役の一角、バリナスクス・アルヴェロイはその中でも最大種だが、バリナスクス属は早くも始新世にはパタゴニアに分布していたことが分かっており、サイズ的にも、中新世中期のアルヴェロイ種よりわずかに小さい程度であった。
 
バリナスクス属種の化石は乏しく、始新世種も中新世種も吻部の一部が見つかっているのみだが、セベクス分岐群の近縁種に基づく復元で、頭骨全長950~1100㎜と推定されている(Molnar et al., 2016)。
ティラノサウルス科の中~大型種、ダスプレトサウルス・トロスス(頭骨全長1040㎜。今作のもう一方の主役)やゴルゴサウルス・リブラトゥ(同990㎜)の頭骨と遜色ない大きさだっということだ。
 
もっとも、セベクス分岐群の種類は相対的に頭部が大きい(胴、尾ともに相対的に現生ワニより短い)ため、全長は6.3~7.5m、推定体重1.6~1.7t(Serreno et al., 2001のワニ型類の推定体重の算出法に基づく)程度の見積もりであり、全長8~9m、推定体重2.3t(Paul, 1988)のダスプレトサウルス・トロススに比べると全体的に小ぶりとなる。が、大差はない。
 
 
陸棲ワニ型類の中でも、セベクス分岐群は側腹圧縮型の頭骨形状や、同じく側腹圧縮型で鋸歯状の歯(このような歯形をziphodont teethという)が非鳥類型獣脚類に近似するとされる。同じく獣脚類のように、現生の半水棲ワニよりも代謝率が高く(Seymour et al., 2012)、内温性であった可能性も指摘されている。
 
そもそもワニ型類の祖先系統は内温動物であったと考えられていて(ワニと鳥類(つまりは獣脚類、つまりは恐竜)は分岐遺伝学的に近い間柄)、高い代謝率は共有祖先性質だとみてよいかもしれない。セベクス分岐群など肉食の陸棲ワニ型類は、この特徴を引き継いでいた可能性があり、十分に活動的な捕食動物だったかもしれないのだ。
 
 
バリナスクス属種はもちろん獣脚類ではないが、生態系における大型の獣脚類恐竜のアナローグ(似通った機能形態、サイズ、捕食生態)とみなされている(Molnar et al., 2016の言葉を借りるなら、a vicar of non-avian theropod dinosaurs(非鳥類型獣脚類恐竜の代理者))。

大型非鳥類型獣脚類に似た大きさと形態の陸ワニが、南米では中新世中期に及ぶまで存続していた事実は、驚くべきことではないだろうか。Molnar et al.(2016)などは、今後もセベクス分岐群の大型種の化石発見が続くとみている。
 
 
古第三紀から新第三期にかけて、南米は南蹄目、アストラポテリウム目など草食のエンデミック哺乳類、多様な爬虫類の宝庫で、真獣下綱の肉食獣群はまだ移入しておらず、中生代から引き続き主竜類※(そして後獣下綱の肉食獣)が食物連鎖上位を占めていた。
 
(※主竜類 Archosaurs=鳥類(鳥類は獣脚類恐竜の一系統)、恐竜、翼竜類、ワニ類(ワニ型類)から成る爬虫綱の中の一大クレード)
 
K-Pg境界大絶滅のあと、南米では草食動物の食物網は比較的早期に哺乳類に置き換わったが、陸生捕食動物の置き換わりは他大陸よりも緩やかに進み、新第三期終盤まで大型の主竜類がその座を占め続けたというわけだ。
 
実際、ダスプレトサウルスやゴルゴサウルスを中新世の南米北部の汎アマゾン帯に復活させたと仮定して、気候、生態系、獲物基盤など諸点を考慮しても、存続し得たであろうと考える学派もある(Molnar et al., 2016。どの学者もこの見解に賛同しているわけではない)。
 
実際には、大型の陸ワニがK-Pg境界大絶滅を免れて繁栄を続けたのに反し、南米の非鳥類型獣脚類はそうならなかった。両者の明暗を分けた(諸)要因には、何が挙げられるだろうか?

 
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:Which do you believe would have survived?:
ここで「モンスター・コリジョン」に、つまりは直接的な生存競争、の方に焦点を戻すが、新生代の歴史上最大で、最も強大な陸生補食動物(少なくともその一角)と考えられるバリナスクス・アルヴェロイにとっても、ダスプレトサウルス級の大きさの獣脚類恐竜は脅威的な相手だ。体重、ボディーダイメンジョン、機動力、おそらく持久力のいずれにおいても、バリナスクスは分が悪いであろう。
 
頭骨長が同程度の場合、ワニ型類のほうが獣脚類よりも顎力が上回る傾向があるが、ティラノサウルス科の種類はその点、例外的といえよう。T. rex を一回り小型にした感じのダスプレトサウルスの顎力は、バリナスクスと同等だったかもしれない。
 

ダスプレトサウルスを前にしては、さしものバリナスクスでも劣勢に映る。が、四足歩行と二足歩行の違いなど、考慮すべき要素は他にもあり、結論を出すのは早いというもの。
 

獣脚類の代理者と真正の大型非鳥類型獣脚類。K-Pg境界の大絶滅を生き抜いたのは前者の方だが、直接対決でサヴァイブするのは、どちらか?
 
 
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