★暫定 ♦Bears extant & extinct : Size Ranking★ 2023 edition
(ウルスス・アルクトス・カミエンシス (更新世中期のヒグマ古亜種)
2022年に作成した歴代ネコ科のトップ40サイズランキングに続いて、クマ科についても、同趣旨の暫定ランキングを公開してみます。
『史上の5大クマ科動物 'The most Colossal Bears of All time'』のタイトルで作品を発表した当時と比べて、クマ科絶滅タクソンの分類が刷新されたり、未記載だった標本群の形質やサイズが明るみになるといった、新知見の蓄積があります。
ここでサイズというのは原則、平均体重(絶滅種については推定平均体重)のことです。
絶滅タクソンについては学術的資料にみられる推定体重や、それが望めない場合でも、他のクマ科種との比較が分かる資料に、現生種/亜種はフィールドリサーチに基づく個体群の体重報告に、それぞれ準拠しています。もっとも、主題の性質上、判断材料に乏しいことは否めず、結局は私の解釈に基づいて作られたランキングです。参考までにとどめてください。
全てのイラスト All images by ©the Saber Panther (Jagroar) (All rights reserved)
歴代のクマ科種(亜種)・推定平均体重の大きい順
(♰=絶滅種(亜種))
①ミナミアメリカ・ジャイアントショートフェイスベア Arctotherium angustidens ♰
<更新世前期 南米 メガネグマ亜科>
●推定体重範囲 412~1749kg (Soibelzon et al., 2009, 2011→ブエノスアイレスで見つかった特大標本(上腕骨)が、同種の他の標本群と比べて、著しく大きい)
②キタアメリカ・ジャイアントショートフェイスベア Arctodus simus ♰
<更新世中・後期 北米 メガネグマ亜科>
●推定体重 770kg (Christiansen & Harris, 1999→サンプルは6標本)。Figueirido et al.(2010)算出による、既知の最大標本の推定は957kg(同じくFigueirido et al.(2010)によれば、他にも推定体重900kg級と考えられる標本が、複数あるという)
●推定体重 770kg (Christiansen & Harris, 1999→サンプルは6標本)。Figueirido et al.(2010)算出による、既知の最大標本の推定は957kg(同じくFigueirido et al.(2010)によれば、他にも推定体重900kg級と考えられる標本が、複数あるという)
③ガムスルツェン・ホラアナグマ Ursus ingressus ♰
<更新世中・後期 欧州 クマ亜科>
●推定体重不明ではあるが、ホラアナグマ系統で最大種(後述のスぺレウス種よりも少し大きい)で、頭骨サイズがクマ科史上最大級
④インダルクトス・オレゴネンシス(インダルクトス属の最大種)Indarctos oregonensis ♰
<中新世後期 北米 パンダ亜科>
●推定体重不明。Jiangzuo et al.(2023) によれば、キタアメリカ・ジャイアントショートフェイスベアよりは小さいが、フラカン属最大種よりも少し大きい
⑤更新世中期ヒグマ(カミエンシス)Ursus arctos kamiensis ♰
<更新世中期 ユーラシア クマ亜科>
●推定体重不明。現生コディアックヒグマよりも大きく、ヒグマの史上最大古亜種。Kurten(1968)によれば、ホラアナグマと遜色ないサイズ(ただし、頭骨はホラアナグマよりも小さい)
⑥フラカン・コフィー(フラカン属の最大種)Huracan coffeyi ♰
<中新世ー鮮新世 北米 パンダ亜科>
●推定体重不明。Jiangzuo et al.(2023)によれば、アグリオテリウム属最大種よりも少し大きく、インダルクトス属最大種よりは小さく、キタアメリカ・ジャイアントショートフェイスベアよりは明瞭に小さい
<完新世 北極圏 クマ亜科>
●雄成獣の体重範囲 350~700kg(Hemstock et al., 1999)
<更新世後期 欧州 クマ亜科>
●推定体重範囲 350~600kg(Christiansen & Harris, 1999)。現生コディアックヒグマと同等の大きさとされる
⑧コディアックヒグマ Ursus arctos middendorffi
<完新世 北米 クマ亜科>
●雄成獣の体重範囲 272~635kg(Alaska Department of Fish and Game : Division of Wildlife Conservation, 2008)
⑩アグリオテリウム・アフリカヌム(アグリオテリウム属の最大種)Agriotherium africanum ♰
<中新世-鮮新世 アフリカ パンダ亜科>
●推定体重範囲 317~540kg(Sorkin, 2008、Oldfield et al., 2012)
⑪デニンジャーグマ(ホラアナグマの直系祖先) Ursus deningeri ♰
<更新世前期 ユーラシア クマ亜科>
●推定体重不明。頭骨サイズから判断して、現生ヒグマの中型~大型亜種と同等
⑪インダルクトス・アッティクス(インダルクトス属で二番目に大きい種)Indarctos atticus ♰
<中新世後期 ユーラシア パンダ亜科>
●推定体重 350kg(Agusti et al., 2002)
⑬ミナミアメリカ・レッサーショートフェイスベア(アルクトテリウム属で二番目に大きい種) Arctotherium tarijense ♰
<更新世中期 南米 メガネグマ亜科>
●推定体重 135~400kg(Soibelzon et al., 2009)
⑬ハイイログマ(北米内陸部のヒグマ亜種。グリズリー)Ursus arctos horribilis
<完新世 北米 クマ亜科>
●雄成獣の体重範囲 139~389kg(Blanchard, 1986)
⑮エトラスカグマ(ヒグマの直系祖先) Ursus etruscus ♰
<鮮新世-更新世 ユーラシア クマ亜科>
●推定体重不明。現生欧州ヒグマと同等の大きさとされる
⑯フロリダホラアナグマ(古代のメガネグマ) Tremarctos floridanus ♰
<更新世中・後期 北米 メガネグマ亜科>
●推定体重不明。Harrington(2015)によれば、現生のアメリカクロクマの大型個体と同等の大きさ。
ホラアナグマの俗称が定着しているが、本種はメガネグマ属の絶滅種であり、クマ亜科の真正ホラアナグマとは無関係
⑰プリオナルクトス属種(メガネグマ亜科の基底タクソン) Plionarctos edensis ♰
<中新世後期-鮮新世 北米 メガネグマ亜科>
●雄成獣の推定体重 165.5kg(Legendre and Roth, 1988→ 1標本のみ)
⑱キタアメリカ・レッサーショートフェイスベア(中型のアルクトドゥス属種) Arctodus pristinus ♰
<更新世前期 北米 メガネグマ亜科>
●推定体重 133kg(Van Valkenburgh et al., 2016)
⑲アジアクロクマ (ツキノワグマ) Ursus thibetanus
<完新世 アジア、日本 クマ亜科>
●雄成獣の体重範囲 60~200kg(Macdonald, 2001)
⑳メガネグマ Tremarctos ornatus
<完新世 南米 メガネグマ亜科>
●雄成獣の平均体重 115kg(Bruijnzeel et al., 2011)
⑳ナマケグマ Melursus ursionus
<完新世 アジア クマ亜科>
●雄成獣の平均体重 114kg(Joshi et al., 1999)
㉒ジャイアントパンダ Ailoropoda melanoleuca
<完新世 アジア パンダ亜科>
●平均体重100~115kg
㉓ハーフドッグ(ヘミキオン属種) Hemicyon sansaniensis ♰
<中新世前~後期 ユーラシア、北米 ヘミキオン亜科>
●推定体重不明。欧州のサンサニエンシス種は体長1.5m。
ヘミキオン亜科(通称「ハーフドッグ」、もしくは「ドッグベア」)はクマ科の中で唯一の指行性(digitigrade)スタンスの分類群で、全体に細身な、走行特化型の食肉類。イヌ亜目の基底分類群の一つ、アンフィキオン科(通称「ベアドッグ」)は、クマ科とは無関係なれど似たような形質であるため、混同に注意(通称も似ていてややこしい)
㉔マレーグマ(現生種で最小のクマ) Helarctos malayanus
<完新世 アジア クマ亜科>
●体重範囲25~65kg
㉕アケボノクマ(ウルサヴス属種) Ursavus tedfordi ♰
<中新世前~後期 ユーラシア、北米 クマ亜科?(下位分類が不明瞭)>
●推定体重は不明だが、同属最大種はオオカミ大、最小種はイエネコ大と表現される。
ウルサヴス属は後続のクマ科分類群の共通祖先とみなされ、英語文献でDawn Bearと称されており、それに倣って、アケボノクマの和名を当ててみた
㉖バルーシア属種(既知の最小のクマ) Ballusia elmensis ♰
<中新世前期 ユーラシア クマ亜科?(下位分類が不明瞭)>
●推定体重は不明だが、同属最大種はオオヤマネコ大、最小種はイエネコ大と表現される。
元々ウルサヴス属やヘミキオン属に分類されていた一部標本群が、本属に帰属し直された経緯がある。
バルーシアを最古のクマと紹介する文献もみられるが、それは間違いで、ヘミキオン亜科(ハーフドッグ)にはもっと古い、漸新世に産した種類(セファロガレ属など)がある
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