Battle Beyond Epochs Part Ⅻ
Rexy and Gigan : Twin Peaks of Theropods
T-レックス & ギガノト・⚡獣脚類恐竜の両頭⚡
(⬆ 超大判オリジナルサイズ画像(高画質)※) All images by ©the Saber Panther(All rights reserved)
イラスト&文責 Images and text by ©the Saber Panther サーベル・パンサー(All rights reserved)
Species
Left《白亜紀後期・マーストリヒティアン時代 北米ララミディア大陸 およそ6600万年前》
ティラノサウルス属種(巨大標本 'Scotty')Tyrannosaurus rex
トリケラトプス属種 Triceratops horridus
Right《白亜紀後期・セノマニアン時代前期 南米パタゴニア北部 およそ9600万年前》
ギガノトサウルス属種(巨大標本 'MUCPv-95')Giganotosaurus carolinii
アンデサウルス属種 Andesaurus delgadoi
今回のバトル・ビヨンド・エポックでは、言わずと知れた獣脚類恐竜の最強の両頭、T. rexとギガノトサウルス、およびそれぞれのコンテンポラリーである草食恐竜の、時空超越・インテラクションを描出しています。
T. rexとギガノトサウルスの双方が、獲物に奇襲を仕掛け、躍りかからんとしていたその刹那、互いの眼前に突如出現したのは、自らと互角の体格と力量を有する獣脚類の姿であった(!)
この驚天動地の出来事にひるむ間もないまま、両雄は攻撃の照準を互いへと切り替えた!
この驚天動地の出来事にひるむ間もないまま、両雄は攻撃の照準を互いへと切り替えた!
T. rexとギガノトサウルス アヴェテロポーダ系獣脚類恐竜の両頭
長らく史上最大の獣脚類恐竜とみなされてきたティラノサウルス・レックス(以下、T. rex)のステータスを、1995年に発見されたギガノトサウルス・キャロリーニィの存在が脅かすに至ったのは、周知のとおり。頭骨長、全長や体高で既知の最大のT. rex標本を上回るギガノトサウルスは、最大の獣脚類の新たな候補として、かまびすかしく喧伝されたのでした。後年、従来の「スー(FMNH PR2081)」標本をも上回る大きさのT. rexの最大標本、「スコッティ(RSM P2523.8)」が記載されました。スーやスコッティなど大型標本において、推定体重ではT. rexの方がギガノトサウルスを上回るという説は、今では広く浸透しています。簡単にいえば、T. rexは骨盤幅(ひいてはトルソ幅)や長骨幅に優るなど、ギガノトサウルスよりも全体的に重厚な骨格をしているからです。
これまでに、アロメトリック、ヴォリュメトリック算出法を用いた複数の学術的サイズ分析(例えば Reolid et al., 2021)において、T. rexの大型標本の方が体重で上回ることが示されています。
学術的に発表されたT. rexの推定体重の中で最大は、FMNH PR2081標本の9500kg(Hutchinson et al., 2011) 。ギガノトサウルスの場合は、EofaunaのMolina-Perez & Larramendi(2019)算出の、8500kg(MUCPv-CH-1標本)が最大値となります。
学術的に発表されたT. rexの推定体重の中で最大は、FMNH PR2081標本の9500kg(Hutchinson et al., 2011) 。ギガノトサウルスの場合は、EofaunaのMolina-Perez & Larramendi(2019)算出の、8500kg(MUCPv-CH-1標本)が最大値となります。
もっとも、ギガノトサウルスについては、未だ二体分の標本(MUCPv-Ch1とMUCPv-95)しか見つかっていない事実を考慮する必要があります。複数標本が知られるT. rexと、種レベルでの比較はできず、あくまで個体レベルでの比較ができるにとどまるということ。 最初のT. rex標本が見つかって以降、スーやスコッティ級の巨大標本が出るまで1世紀近くも要していることを思えば、将来、もっと大型のギガノトサウルス標本が発見される可能性は、十分にありそうです。
その点を考慮しつつ、かつ体高、全長では依然としてギガノトサウルスが上回るとされることから、アヴェテロポーダ系獣脚類の中で、「二大種」として両者を同列に扱うことが、望ましいようにも思います。ただ、厳密にどちらの方が「大型」であるにしても、大顎と牙の頑強さや咬筋力で上回るT. rexの方が、殺傷力では優っていた可能性が高いでしょう。
アヴェテロポーダ類、メガロサウロイド類を合わせた獣脚類全体の最大種は、この両者ではなく、スピノサウルス属最大種ですが(スピノサウルスも後に当ブログに登場させます!)、スピノサウルスは半水棲の魚食が専らな種類であって、顎のロバストさと咬筋力、後脚の強さや機動力など、アヴェテロポーダ類二大種には明瞭に劣るものです。獣脚類最強説で取り上げるには、スピノサウルスは少々不適切な種類かもしれません。
映画ジュラシックワールド最新作での描写との違い
現在上映中の某映画でもT. rexとギガノトサウルスが登場しますが、劇中でギガノトサウルスはT. rexを凌駕する「史上最大の陸棲肉食動物」である点が強調され、全体的サイズもT. rexより一回り大きく設定されています。ネタバレ(注意)になりますが、T. rexをもってしても、テリジノサウルスと二頭がかりで立ち向かい、やっとギガノトサウルスと対等に渡り合える、という描写がされています。
ギガノトサウルスはいわば、この映画の最強のアンタゴニストとして登場するのです。
しかし、上述のように、実際の両者のサイズ差はそこまで大きくはなく、むしろスーやスコッティ級のT. rex標本は、推定体重ではギガノトサウルスを上回るとされます。私の復元画では、最大標本同士(スコッティ標本と 'MUCPv-95' 標本)の顔合わせという設定であり、映画におけるようなサイズ差はないばかりか、T. rexのほうが若干、重厚な体つきになるよう描いています。
また、映画での造形にみられる、巨大獣脚類の形態、突起オルガン、体表皮テクスチャーなどの「怪獣的な誇張」は極力排除しており、鳥類的な要素を強調しています(第一に骨格に忠実たれ、というのは言わずもがなですが)。模様の造形も、独自のものです。恐竜の外観を「どこまで恐ろしげに見せるか」ということについて、それぞれに考え方があることと思いますが、これは新生代動物の復元に関わってきた私の復元バージョンであり、そのつもりでご覧になってください。
Which species do you think could have dominated?
今作についても、後に英語ギャラリーサイトで投票を行う予定(今回は二つの設問)ですが、T. rexとギガノトサウルスの間で直接優劣を問うことは、しないつもりです。
上述のように、T. rexは(大顎による)殺傷力や全体的パワーでギガノトサウルスを凌駕することが考えられ、体重でも上となれば、T. rexの得票数が多くなることが予想されるのです。
また、T. rex対ギガノトサウルスという、恐竜関連のいわば「古典的」問いについて、屋上屋を架すことを避けたい気持ちもあります。
また、T. rex対ギガノトサウルスという、恐竜関連のいわば「古典的」問いについて、屋上屋を架すことを避けたい気持ちもあります。
ということで、一つ目の問いは、今後の「大型個体の追加発見の可能性をも考慮に入れた」(笑)上で、T. rexとギガノトサウルスのどちらがアヴェテロポーダ系獣脚類の最大種にふさわしいか、ということ。
二つ目は、このイラストに登場するコンテンポラリー4種の中で、どの種が最も「ドミネートする」と思うか、を問うことにします。
dominate などと言うと曖昧に響くかもしれませんが、この語を厳密に定義してはいません。両獣脚類は補食動物ですから、相手を襲撃し殺傷させることになりましょうし、草食動物の側でいえば、相手を反撃で殺傷したり追い払ったりする、というようなことです。
すなわちこれは、多少強引かもわかりませんが、「T. rexとギガノトサウルス二頭の対決ではなく、アンデサウルス、トリケラトプスをも交えた、バトルロワイヤル的・インテラクション」なのです。
現生アフリカゾウよりも大きく、対巨大獣脚類防御、反撃力を見事に具現したトリケラトプス属種、そして竜脚類(カミナリ竜)のアンデサウルス属種を加えた、四つ巴の様相を呈しています。
アンデサウルス・デルガドイはティタノサウルス類の基底種の一つで、全長18m、推定体重7~14トン(Paul, 2010, Holtz, 2012)。
タイプ標本'MUCPv 132'は不完全で骨格の一部しか知られていないため、全体像は杳としているわけですが、Holtz(2007)によれば、本種の推定多重は「ゾウ二頭分」(少し曖昧な表現ですね)。
一方、EofaunaのMolina-Perez & Larramendiは 'Dinosaur Facts and Figures: The Sauropods and Other Sauropodomorphs'(2020)の中で、本種のサイズ「全長22m、推定体重20トン」と記しています。
一方、EofaunaのMolina-Perez & Larramendiは 'Dinosaur Facts and Figures: The Sauropods and Other Sauropodomorphs'(2020)の中で、本種のサイズ「全長22m、推定体重20トン」と記しています。
今作では、Paul(2010)の上限体重14トン程度の、「特大個体」という設定にします(それでもティタノサウルス類最大級のアルゲンティノサウルスなどと比べれば、遥かに見劣りすることになりますが)。
体重8t級の巨大獣脚類をもってしても、簡単に与し得るような相手でないことはもちろん、尾や脚の打撃、体当たりなどの反撃によって、捕食者の側が致命傷を負うことも考えられましょう。
アヴェテロポーダ系二大獣脚類恐竜とトリケラトプス最大種、そして成体の竜脚類。この未曽有のバトルロワイヤル的・インテラクションで、最も「ドミナント」たり得るのは、どの種だと思いますか?
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B.B.E. 投票結果
B.B.E. 投票結果
言わずと知れた獣脚類恐竜の最強の両頭、ティラノサウルスとギガノトサウルス、およびそれぞれのコンテンポラリーである草食恐竜の、時空超越・インテラクションを描出した、
この絵画イラストに登場するコンテンポラリー4種のうち、「ドミネートする」可能性が高いと考えられる恐竜への投票を、今回も私のギャラリーサイトのページで実施しました。(12月8日時点)
Dominate などと言うと曖昧に響くかもしれませんが、両獣脚類は補食動物ですから、相手を襲撃し殺傷させることになりましょうし、草食動物の側でいえば、相手を反撃で殺傷したり追い払ったり
する、というようなことです。
する、というようなことです。
すなわちこれは、多少強引ですが、「T. rexとギガノトサウルス二頭の対決ではなく、アンデサウルス、トリケラトプスをも交えた、バトルロワイヤル的・インテラクション」(!)だというわけです。
現状、竜脚類のアンデサウルスがリードする結果となっています。
私は巨大獣脚類に票が集まると思っていたから、これは少し意外ですかね。
今回、アンデサウルスは体重16トン超の特大個体という設定ではありますが、巨大獣脚類に対し、体重で少なくとも三倍は上回っていないと、撃退することは難しいと思っているので。
しかしながら、デルガドイ種のサイズに関しては、EofaunaのMolina-Perez & Larramendi(2020)試算になる「全長22m、推定体重20トン」という見積もりもあります。
いずれにせよ、巨大獣脚類にとっても、簡単に与し得るような相手ではないかもしれません。
しかしながら、デルガドイ種のサイズに関しては、EofaunaのMolina-Perez & Larramendi(2020)試算になる「全長22m、推定体重20トン」という見積もりもあります。
いずれにせよ、巨大獣脚類にとっても、簡単に与し得るような相手ではないかもしれません。
「ティラノサウルスとギガノトサウルス間の決戦」という観点からすると、やはり(?)前者の方が支持されているようです。
両雄の決戦ということについては、本記事の方で私も見解を述べました。
が、ギガノトについても、その切り裂きに優れた歯を具えた噛みつきは侮れないし、最近、「MUCPv-95」標本の推定体重が上方修正されたりといった動きもあるので、
T. rex が圧倒するとも到底思えないし、実力は拮抗しているでしょう!
この中で個人的には最も好きなトライクが票を得ているのは、結構嬉しいかな。もう少し票が伸びると思うので待ってみましょう。
🌟しばらく更新やリプライが滞っていましたことを、お詫びします。次回の記事は等閑にしていた化石哺乳類の企画が続きます。チェックのほど、よろしくお願いします。
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