瓦礫の島の「穴埋立地」

模型の製作日記や映像の私的感想を掲載しています。ネタバレもありますので未見の作品は注意して御読み下さい。

「風立ちぬ」を観て。

2013年08月27日 | 模型
宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」を観て。
今月始めに映画は観に行ったのですが、
公開中はネタバレしないように感想は
あえて書きませんでした。
そろそろ、映画館での上映も終了のようですね。
未見の方はご閲覧を控えてくださいね。



さて、この映画は「月刊モデルグラフィックス」と言う
模型雑誌に09年4月号から10年1月号まで連載された
漫画エッセイが原作になっています。
そして、この「風立ちぬ」は設計技師・堀越二郎を
主人公としてはいますが、
その自伝でも無く、題名にもなっている小説家、
堀辰雄の風立ちぬのアニメ映画でもない。
その二つの要素と宮崎駿の自身の憧れと空想をミックスした
オマージュ的な青春ドラマと言えます。
まさに、宮崎駿監督の妄想が生み出した映画といえます。

中でも、イタリアの設計技師カプローニが
劇中の堀越じろうが憧れる存在として夢に出てくるが、
その存在は宮崎駿監督の憧れと言っても良いのではないかと思う。
実際に、スタジオ・ジブリのジブリは
カプロニ・ギブリから命名されているらしいのは
飛行機ファンならニヤリとする話です。

さて、物語の感想は既に御覧になっている方も多い事と
声優さんに関しての感想は各方面で
語られていると思いますのでココでは
割愛させて頂くとして私的には、
劇中に登場した飛行機について考察しようと思います。
記憶違いも有ると思いますが、
私的な覚え書きのような読み物として流してください。

まずは、子供の頃のじろうが夢に見た飛行機。
実際に飛行ができそうで、できないような不思議な機体。
2気筒のラジコン飛行機のようなエンジンと
鳥のような安定翼を主翼に持つ白い機体。
予告編で見た時は、ナニコレ?子供だましと馬鹿にしていたが
劇中の浮遊観は、さすがに宮崎駿監督と言わざるをえない見事な演出でした。
2気筒なのは、宮崎&高畑さんたちのアトリエ「二馬力」に由来しているのかも?

次に、カプロニ社の大型輸送機。
これまた、イタリアらしい世界の珍駄機と言われるレシプロ機で
数々の宮崎駿監督作品に登場した
大型機のモデルになったと思われます。
ルパン三世・しの翼アルバトロスや、ナウシカのトルメキア大型機のようです。
それに、対を成すように、劇中でヨーロッパ視察に出向いた
ドイツ製ユンカース社の輸送機(G38?)は、
果てまた未来少年コナンのギガントのような
全金属製の巨人機と言われるレシプロ機です。
かたや、木製のイタリアらしい飛行機と
全金属製の兵器としてのドイツ航空機が対比されて
その後の日本が何方に向かっていくのかを象徴するように描かれているように思えます。

そして、我が日本の飛行機と言えば、中島三式戦などの複葉機が主流の時代。
堀越氏が初めて設計に関わった?「隼型試作機」は、
吊り下げ型単葉機と言われて翼と胴体が主柱で接続されているので
強度の問題があり劇中でも動力降下試験(エンジンを回して降下)で空中分解していますね。
まだまだ、日本の飛行機が世界に遅れをとっていた時代。
そんな中で、日本の航空機会社の三菱重工業(三菱発動機)の
設計技師・堀越二郎氏が名機零戦を設計する前の話。

まぁ…そんな感じで、飛行機好きにはオモシロイ映画なのですが
一般の人には、ナニコレ?な難しい単語も出てきますので記憶の中から解説してみます。
例えば、「上反角、ねじり下げ」、主翼をわずかに根元から先端まで角度をつけて
乱気流を抑える作用があります。
これは、鯖の味噌煮定食と、軽井沢の別荘地で紙飛行機を部屋まで飛ばす時に
表現されたエピソードで、堀越二郎が世界で初めて取り入れた技術で
今日でも航空機で使われたいます。
また、設計室で議論していた当時の最先端技術の「沈頭鋲(ちんとうびょう)」は、
空気抵抗を減らす為にリベットの頭が平坦に接続されるもので、
現代の日常では皿ビスと言われるモノに近いです。身の回りの家電品は
全て枕頭鋲になっていますね。
ヒンジ付き、点検給油口も今では普通に乗用車に付いてますし、
九試の図面では機体の全幅を抑えながら
翼面積を稼ぎ主脚の軽量化、プロペラの大型化に
貢献する機体設計の「逆ガル(カモメ)翼」なども論議されて採用されてました。
難しい知識ですが、物語には必要最小限に台詞として活用されていました。

飛行機好きには、堀越二郎エッセンスを3割程度で
物語は抑えられて不満の方も、いらっしゃると思いますが、
だからこそ青春映画としての風立ちぬ分が際立ち感動したのだと思います。
特に、追浜飛行場での堀越二郎が初めて設計した
低翼方持単葉機という七試単座戦闘機の水平キリモミ事故(バーニング現象)も
バッサリと劇中では語られずに、休暇の回想シーンとして
軽井沢のラブロマンスなエピソードになっているのも
逆に私は良かったのだと思います。
本来の堀越二郎史実では、七試の改良話は最大の山場なのですが。
そして、物語は、夫婦の愛のかたちとして描かれ
各務原の九試単葉戦闘機の試験飛行の成功で幕を閉じます。
初飛行試験を無事に高性能で合格した機体の
後に、九試の正式型の96式艦上戦闘機となり
片方の翼が敵と接触してもがれた状態で帰還するという
偉業を成し遂げた機体になります。

劇中の最後に、じろうの会話にこのような台詞がありました。
「征きて帰りしものはなし。一機も戻って来ませんでした。」
戦闘機は、ひとごろしの道具であると言う事と
美しくも呪われた夢だと言う事の台詞と
技術屋の人生は10年しかないと言う事が
最後の零戦の美しい夕焼けのフライト映像で心に響きました。

私的には、宮崎駿監督作品の傑作の一つだと思います。
また、作画監督に高坂希太郎さんが作画されていて、
今まで通りの宮崎駿アニメの作画に
なっているのも私には感動でした。
高坂さんは、マッドハウスの方に行ってしまわれて残念だなぁと思っていたのですが、
往年の宮崎アニメの絵柄が戻ったような
懐かしいキャラになっていますね。

さて、最後にじろうの煙草を喫煙シーンが気になる方も多いらしいので
一言、堀越二郎技師は酒も煙草もやらなかったと記憶しています。
あくまで、劇中のじろうは架空の人物と言えますね。


日中の風が秋のように涼しくなってきました。
もう、すっかり秋の気配。
夏の疲れが出やすい時期です。
体調管理に気を付けて
がんばりましょう。

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