【創作びより】

笑えるところ


今日こそ、10枚童話を1本仕上げようと、原稿を書き出す。
昨日6枚目まで書いたのを、1日あけて読み返すと、クックックッと3カ所ほど笑えた。ガッハッハではない、クックック。
でも、これはいい兆候じゃないかと思った。『童話で笑いを!』が、わたしのサブスローガンだから(メインスローガンはまだ考えてないけど)、自分で原稿を読んでて笑えたということは、関西人のわたしがクックックッと笑えたということは、関東の人なんて、ギャーッハッハ!となるんじゃないだろうか…。そんな妄想にも似た考えに支えられ、原稿を書き進めていく。
2時半、ようやく最後まで書き上げた。12枚と4行。慎重に削っていく。途中を削りにくい原稿だったんで、ラストをザクッと削って、10枚キッチリにした。3時すぎ、長女が帰ってくる。おー、グッドタイミング。
「おかえりぃ」と、いつもの何百倍もあっまーい声で出迎える。「ちょっと、原稿読んでくれないかなー」言いながら、印刷ボタンを押したけど、動かない! カラーインクが切れてたけど、白黒印刷だったら大丈夫だと思ってたのに、プリントできない! まあまあ、気をとりなおして、娘に、向かいがわにすわってもらって、PCの画面を見ながら、原稿を読み始めた。う、ぐぐ、ぐぐぐぐ、おかしくて、笑いがこみあげてくる。だめだ、読んでる途中で笑ったら、聞いてる方はしらけちゃう。しゃべってる時でも、よくある。一人思い出しながら笑ってしまうから、まわりがサーッとひいていったこと。だめだだめだ、そんなことでは、関西人の名がすたる。笑いをこらえて、ヒクヒクしながら、原稿を読む。あれ?おかしい……。こっちがこんなに笑いをこらえてるのに、長女はまったく笑ってない。それどころか、爪をかみだし、机の整理などしだした。おいおい!と思いながらも、まあ、耳では聞いてくれてるやろうと、最後まで読み上げる。
じゃーんという気持ち。舞台が終わって、幕がとじるような、まさに、いまわたしは、ちあきなおみ。晴れがましいアンコールの拍手を待っている、スターの気分だ。
が……、娘は、うんともすんとも言わない。
「あ、あの……、どうやった?」
おそるおそるたずねると、
「それで終わり?」
「うん、終わり」
「最後がちょっとぉ・・・」
ぐっ! 見破られたか…。最後、枚数が多いから、ザクッと削ったんよね。そっかそっか、それはしょうがないな。まあ、見直そう、うんうん。
「ところで……、全体的にはどうやった? 笑えた?」
「笑えるところはない」
グッ、ガッ、ゴッ、ズッ、バキューーーーーーン!! 
ショーック、銀河級ショーーーーーック!
気の弱い人やったら、心臓止まってるで、ほんま……。
しかし、母は心臓にソバージュくらい毛が生えとるんだよ、ガッハッハ。こ、これくらいでは、打ちのめされない。いや、かなり大きな打撃は受けたけど…。
ミサイルの命中した胸を押さえ、むっくり立ち上がる。
「じゃあ、童話には笑いはいらんの?」
「いらんな」
2発目、バキューーーーーン!! サブスローガンの看板が、ガラガラとくずれてゆく。そ、それは、母が童話を書く根源をくつがえすことばだと、小3の娘は知らない……。
けれど、ここで闘いは終了。ぬけがらのような体をひきずって、長女を空手に送り、下の二人を保育所へ迎えに行って、歯医者へ連れて行き、買い物をし、また長女を迎えに行った。
ミイラにでもなったような気持ちで、夕飯の仕度をする。闘いの痛手で、まだ胸がズキズキと痛む。たまに、コンタクトがヒョコヒョコするのは、涙がこみあげてるのかもしれない。
しかし、そんな母の心を知らず、長女が『チャレンジ三年生』を見ながら、クスクス笑ってる。
「これ、おっもしろいわー」
グサッ。『おもしろい』ということばだけで、ダメージを受けるほど、弱っているようだ。
「おもしろいってことばは、うちの家では禁句やねん!!」
叫びそうになったが、大人気ないので、ぐっとがまん。冷静さを取り戻し、たずねる。
「何が、そんなに、おもし、ろいの?」
「令丈ヒロ子先生のおはなしやーん、ククク」
「ど、童話に、笑いは、必要、ないん、ちゃうの!?」
冷静さをたもとうとすると、一言一言、区切ったようなぎこちない言い方になる。そんなわたしと打って変わって、長女はカラリと明るい。
「だってぇー、これ、わらっちゃうねんもーん」
「そんなに言うんやったら、令丈ヒロ子先生のこどもになれぇーっ!!」
やっぱり、わたしは大人気なかった。
立ち上がれ、さとみ! 涙をふいて、もっと大人になるんだ!!

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

最近の「Weblog」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事