推理・探偵ものに応募すると決めたものの、なかなかいいアイデアが浮かばない。朝からノートを広げるけれど、断片的なものしか出てこない。やっぱり、自分には向かないのかなぁ、ファンタジーを書いてるときが一番楽しいもんねぇ、あきらめようかなぁ……と頭かかえて、ふと本棚を見ると、お?というタイトルの本が目に入った。斉藤孝さんの『「できる人」はどこがちがうのか』
おーっ!! それそれ! いま知りたかったのはー!と、思わず手がのびる。そういえば、夫の本棚から持ってきて、ずっと読んでないままだった。目次を見ると、第六章に「村上春樹のスタイルづくり」という項目がある。「小説を書くのになぜ走るのか?」というタイトルに、思わずぷっと笑ってしまったけど、これが今の自分にとって、天から降ってきたような重要なメッセージになった。
村上春樹さんの場合、原稿を書くのに三カ月こもっても、集中するキモの部分は、ほんの2週間なんだとか。そこへ行き着くために、その前の2カ月半は、のってなくても、つらくても、楽しくても、とにかく毎日毎日机の前に座って、なんでもいいから書く。毎日、竪穴の深い深い底へ階段を降りては水を汲みに行くようなコツコツしたことをして、初めてクリエイティブな集中状態がやってくるんだとか。
んもう、ドバーッと涙噴き出しそうになるくらい、感動した。そして、この方法をシステム化されてる村上さんはすごいと思った。それを分析する斉藤孝さんも、これまたすごい。
斉藤さんは書いている。読書を通して得られるのは、文章から伝わる著者の身体感覚や文体から伝わる生のリズムやテンポが、読者の身体にも響いてくるんだと。
そうかぁ!と、遅まきながら実感する。この前、本屋さんで見つけた本も、今までに惚れ込んだ本も、みんなリズムが体の奥にまで響いてきて、それが心地よくて、読んでいて気持ちよかったんだ…。リズムかぁ、と一人うんうん頷いた。
村上さんは、長編を書くために、早起きし、ちゃんとしたものを食べ、走る。健全な体から、集中力、持続力が生まれる。粘り強い思考や、文体を自在に伸び縮みできる呼吸法も得られる。
読んでて、うれしくなってきた。アイデアが産まれず、もんもんとノートに向かう状態は、とても苦しい。まったく先が見えず、逃げ出したくなる。でも、その状態を続けるからこそ、高い集中状態が訪れるんだと思うと…、頑張れそうな気がする。いや、頑張れる。
たった1冊の本で、しかも1章読んだだけで、こんなに勇気づけられたのは初めてだ。
残りの5章も、ちゃんと読もう。
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