「『ほころび』の精神病理学-現代社会のこころのゆくえ」
鈴木國文著 青土社 2019年8月発行
著者は現在、日本精神病理学会の理事長であり日本病跡学会の理事を務める。
近年精神科臨床で問題となる精神疾患の分類や病態の変化にはめまぐるしいものがある。
1970年代から80年にかけて境界例が議論され、1990年代には代わって解離やPTSDや
パニック障害や引きこもりが話題となる。同時に神経症や人格の議論が低迷していく。
1990年代の後半から2000年代にはうつ病の変化や様々な依存が話題となり、さらに
統合失調症の軽症化が語られると同時に発達障害が精神科疾患の主役として前景化してくる。
本書ではこうした精神疾患の変化が社会のほころびと関連させて読み解かれ、興味深い考察が
続く。しかし、現代の社会の変化をどう捉えるかには難しい問題がある。
千歳こぶしクリニック 院長 寺岡政敏
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