事務所を出て、駐車場に向かう途中、ふと見たら、川向こうに大きな煙突が立っていた。
前職も同じビルの中にあったから、かれこれ、十年以上、毎日のように通る道。
多分、ずっと視界には入っていたのだと思うが、そこにそれがあった記憶はない。
天気もよかったせいで、夕方とは言え、その景色がすごく綺麗に見えた。
カメラを持ってなかったのが残念に思うくらいに。
景色が綺麗に見えたと書くと、気分が晴れやかであったと誤解されそうだが、
むしろ、冴えない毎日が続いている。
今まで、気づかずに通り過ぎた景色は、どれほどあったろうか。
気付くべきだったのか。
気付かなくてよかったのか。
気付かずべくして、気付かなかったのか。
いずれにしても、過ぎた日が変わる事はないが、
高くそびえ立つ、今日の煙突の景色は、ひときわ綺麗に見えた。