ちなみに中編の記事 ↓
http://blog.goo.ne.jp/satoko1964jp/e/df499de9bba6f97748668cc548165d54
※M2:社会学者・宮台真司と評論家・宮崎哲弥の二人を指す。
のちに実際の収録がポッドキャスティングに流れるかもしれませんが、去年、あまりに長くてUPするのに疲れましたので、今年はオンエア分の、更に一部分だけを文字起こししてみたいと思います!
ナビゲーターは渡辺真理さん。M2の言いたい放題を一部をお楽しみくださいませ。
(※ちなみに、私は文中に出てくる「ALWAYS 続・三丁目の夕日」、「オリヲン座への招待状」をまだ観ておりません!
本編への突っ込み、ネタバレはご遠慮願います!)
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《宮崎哲弥さんの問いからの続きです》
宮台 :う~ん、あのね。かけがえのなさっていう感覚に結びつくはかなさなんだよ。
ハリウッド映画の、例えば「スライディング・ドア」とか…。これは本当に切ない
宮崎 :わかった!なるほど。要するにね、こうなんだ。
関係が損なわれることによって、その関係性のかけがえのなさを強調されるのがハリウッド。だから切ないわけでしょう?
でも日本の「死にオチ」で終わるものってのはそこで関係が終わってしまって完全にそっから先の想像は個に閉ざされてしまうわけだ
宮台 :だから僕は「死にオチ」ってね、広い意味でちょっと“おたく系・アキバ系”のにおいがするわけね。だから現実の関係性ではなくて妄想の世界で、自分にとってのセカイの享受可能性。だからアキバ系とその「死にオチ」になるヤツの妄想系は形はよく似てると思うよね。
「スライディング・ドア」的なハリウッドの映画の楽しみ方っていうのはそうじゃないんだもん。現実を生きる時のまなざしを提供してる。
ただ、いわゆるノスタルジー映画についていうとね、「昭和30年代はこういう時代でした」って描くことについてはね、ちょっと違うよ、と。
俺は昭和30年代当時を知ってるけれども「そういう時代ではなかった!」と言いたい気持ちがあるのね。ちょっと変なスローガン言いますよ。
「昔は近いものが勝つ!」
ところが今の時代は遠いものが勝つんですよ。例えばね、「続・三丁目の夕日」を観ると、昭和30年代が舞台なのにさぁ、遠いものが勝ってるわけ。これは茶川(吉岡秀隆)っていうですね、貧乏人の小説家志望の男の想い人の…
渡辺 :小雪さんが演じてらっしゃいます
宮台 :踊り子が…まあ遠いところにいるんだよね。それでもう何年も経ってる。で、小雪さんのもとにはさ、いわゆる「たにまち」
(祝儀を贈ったり、生活を裏で支える貴重な存在。現在は角界に限らず、スポーツ、文化などの熱心な後援者に対して使われることが多い)
だよね。足しげく通って「後妻にどう?」っていってる…。で、昭和30年代のリアリティで言えばね、そこで遠い茶川が勝つことは絶対ないんだよ。
やっぱり近いヤツが勝つに決まってるわけで、もうそれを観ただけで僕はがっくり!
おまえ全然わかってねえな~昭和30年代をよ、と。
もうひとつあるよ。親子関係もそうね。茶川のところにさぁ、家出少年(須賀健太)が転がり込んでるわけだよ、前作からね。で、実の親と茶川がその子を取り合うわけ。おかしいと思うよ、たかがね、その小説家に対するさ~憧れと、実の親と積み重ねてきた時間の綱引きをした結果、茶川が勝つんだよ!(呆)
…おまえ、そうかよ、本当に!!って。実際、時間ってものの積み重ねが何を意味してるかわかってんのか、こら、ガキ!!と思うわけ。(中略)
宮台 :ぼく昭和34年生まれだからね、そういうものを知ってるものとしては全然!昭和30年代じゃないものが描かれてる。“今”を昭和30年代に持ち込んじゃってるのね。逆のケースを言うとね、「オリヲン座からの招待状」っていう
渡辺 :宮沢りえさんの
宮台 :これはね、簡単に言うと“時間が勝つ。一緒にいることが勝つ”って話なんですよ。オリヲン座っていう映画館がですね…館主のもとから一通の手紙が来て
「映画館を閉めます。最後の興業をやりますので来てください」っていうふうな手紙をもらった、まあ若夫婦っていうか中年夫婦がね、離婚をする間際になってるんだけど、故郷を訪ねて、自分達がオリヲン座で子供の頃…【以下、宮台流・フツーのネタバレなのでカット!】
…それで、本当に長い・長い・長い時間が経って、ふとしたことで結ばれるっていうことが起こるわけね。これは時間の積み重ねの中で規範を乗り越えたんですよ。
これがやっぱ昭和30年代のリアリティであるわけです。
昭和30年代ってやっぱり時間が勝つんですよ。で、今の映画は死んだ人間が勝つんです。あるいは遠くにいる人間が勝つわけ。大抵のノスタルジー映画がこれを「昭和30年代」とかに持ち込んでるわけ
渡辺 :昭和30年代の、その時の感じ方っていうのをそのまま持ち込んだら、じゃあ商品としてヒットってのはどうなんでしょうね?
宮台 :それはむずかしいかもしれない。でもそれは商品でもあるからね。
ヒットした商品を作ってお金を稼ぎたい人はそれ(“今”をノスタルジーに持ち込む事)をやればいいんじゃない?
しかし社会や実存をわきまえた“表現をしたい人”はやっぱそれ(“今”をノスタルジーに持ち込まない方法)をしていただきたいよね
宮崎 :表現だと思ってるんじゃないの~?
渡辺 :まあ作り手としては
宮台 :だとすればその作り手は…まあ愚昧(ぐまい)も愚昧!
宮崎 :俺は商品だと思って作ってるんだったらまだいいと思うよ。俺は表現だと思って作ってると思うけど
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──という感じで、新春M2スペシャルはおしまいです。
私はこれ、“長い時間と近い距離が勝つ”って構図、すっごく「そうだな~!」と思いました。
いろんなモノ・コト・ヒトに置き換えて、どれもそうだ!と心底思いましたね…。
自分に関して、そうじゃない場合って殆どないんじゃないかな~
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最後に『2008年の展望・近未来予想、その他』としてお2人が言っていたのは
・出版界は衰退し、同人誌の勢力がますます拡大する
・選挙の年なので、洗脳に気をつけましょう(中編より)
・宇多田ヒカルは結婚で落ちたが、離婚で復活した etc.
でした。出来れば宮台さんが“共感”した映画をぜひ知りたかったんですが、名前が出てきませんでしたね…。ちょっと残念です。
あとあのぉ…──なんだか読み返してみると、さっぱり音楽(J-POP)の話題に触れていないんですよね (^_^;)
とりあえず2人の感想は「2007年は音楽の話題、特になし」だったんですよ。
強いて言えば『初音ミク』の話題がありましたが、私はそれ、知らないし、今のところ興味がないので……すみません、カットさせていただきました m(__)m
では!
皆様、長々とお付き合いしていただいて本当にありがとうございました。
来年も機会があれば、ぜひまた記事にしたいと思います。
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私もアレ好きでした。
もしもあの時って、誰もが思うことでしょうけれど、あんな風に両方経験出来ないから運命なのでしょうね。
今が遠いものが勝つとも思えないのですが・・・。
時間をかけることの大切さに今頃になって気づいたりして、30年代失格?
「オリヲン座からの招待状」はWOWOW待ちです^^;
今度機会があったら絶対観ます!
今、遠いものが勝つってきっとそういうコミュニケーションツールを持ってる人に当てはまるんでしょうかね。
それとも世代の違いで、さっぱり理解不能な何かに引き寄せられるのでしょうか。
私は時間を積み重ねた方が、例えば愛情の濃密さより勝つ気がします。
情熱よりやすらぎかな?──なんて思ったりなんかして
そうだよなぁ~って
昭和30年代がなぜか流行っているのは
団塊の世代あたりに
長い楽しい時間を過ごしたような気がする
近い過去なのでしょうね
きっと
想い出の共有の長さとか、いろいろ。
具体的に名前をあげることは出来ないけれど、そういう心理状態も世代を分けるのかなぁ…と思ったりしました。
出版界は衰退し、同人誌の勢力がますます拡大する
>本当になりそうで・・・するどいな。って思いました。(笑)
実際私も話題に出た映画で、観てるのは1本だけでした(^_^;)
出版の衰退はここ十数年続いてますよね。
先日は有名版元も倒産したし、なんといってもアマゾンで10円くらいでほとんどの本が買えるんですもん。
刷るだけ紙の無駄って気がしますよ。
実際4割は軽く返本で断裁されてるんですけどね…。
でも、私にはS30年代ははるか過去の話のように思えて、リアリティー以前の問題もあるのかな。
実はあの映画には興味がなくて、まずCGをがっつり使ってる時点で、昔も何もないじゃないか、と。あの中には昭和はないんじゃないですかね…。
私も死にオチ映画がニガテです。
人が死んで悲しいのは当たり前。
可愛さ目論見で動物や子供を起用するのと一緒です。
あと西岸良平ファン(漫画「三丁目の夕日」の原作者)としては
映画「続・三丁目の夕日」は「三丁目の夕日」という衣をまとった
全く違った映画に見えました。
映像からは西岸良平テイストはあまり感じらず、
記事にあるとおり現代人の思想が組み込まれた感がして
少し残念でした。
ま、フツーの映画としては楽しめましたけどね(冒頭5分程)。
私はどちらかと言うと「恋空」世代より宮台さんの世代にかなり近いので、近いものが勝つというのは悲しさも含まってしまいます。
本当は遠いものに対する憧れを優先したいジレンマがあったりして…。
CGは、なんか考えただけで興ざめですね(^_^;)
それは別の意味で寂しいな。
>変幻自在のKICK FIGHTERさん。
漫画はちらっとみたことがあります。
そんなにテイスト違いますか。
ということは作り手によってその人の「理想」ががっつり組み込まれたわけですね。
なんだかんだ言って、民放オンエアの時に観る予定ですが、あんまり素直に感動できない気がしてきました。