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息子が帰ってくるらしいので(ノックス)マルコーさんと一緒に暮らすことになりました

2021-05-26 18:16:16 | 二次小説

ハーメルンとpixivにもアップしています、今回少し時間がかかってしまった。 

 

 

 マルコーさん、包むの上手ですねと言われて思わず隣を見る、自分は夢中になっていたらしい、皿の上並んだ餃子は最初の頃よりは綺麗な形になっているのが嬉しくなり、教え方が上手だからだよとマルコーは隣で小麦粉を練っている彼女に笑いかけた、今日は友人宅で餃子作っている。
 飲み屋に行くより安くつくし、酔ったらすぐに寝られるからというノックスの言葉に頷くが餃子の量は半端ではない。

 「マルコーさん、ノックスさんから聞きました」
 
 思わず手を止めて何をと尋ねると、聞いてないんですかと少し困った顔で見られた、仕方ないなあと小さな呟きにそういえばとマルコーは思い出した、頼みたいことがあると言われたのだ。


 「おおっ、美味そうだ」

 できあがった料理を前にして、嬉しそうな友人にマルコーは尋ねた、頼みたい事って何だと。

 「いや、この間、俺が言ったら、引き受けてくれたじゃねぇか」

 「何を、覚えがないんだが」
 
 もしかして自分は酔っていたかと呟きながら、まあいいかと話し始めた。

 「実はな、ネェちゃんを預かってくれ、おまえ、まだホテルだろ」

 こういうのは寝耳に水というのだろう、しかも友人は自分が断るとは思っていないようだ、一体どういうわけでと聞くと帰って来るんだよとノックスは一瞬、真顔になった、その言葉に家族かと尋ねる。
 確か奥さんは再婚して遠くで暮らしていると昔に聞いた事がある、もう、会う事もないようだ、だが、子供は尋ねてくるようだ。


 「確か息子さんだったな、子供ができたから結婚するといってたが」

 するとノックスは首を振った。

 「子供も結婚もなしになった」

 なんだか妙な言い方だし、表情からして、おかしいなとマルコーは思ってしまった。
 
 「まあ、騙されていたわけだ」

 妊娠も嘘だったというノックスは、更にショックな言葉を続けた、有り金持って逃げたんだ、それを聞いて二人は、えっと顔を見合わせた、気の毒という言葉では言い表せないというか、慰めようがない。

 「その人、本当に実の息子さんですか」

 驚くというよりは、別の意味もあるのだろう、女の言葉にノックスは正真正銘、俺の息子で女に騙されたのは二度目だと呆れたように呟いた。
 
 踏んだり蹴ったりではないかと思ったマルコーに放っておけねぇだろとオヤジとしてはと言われて納得した。

 「で、帰って来たらオヤジの家には若いネェちゃんがいるなんてこと、落ち込むだろうが」
 
 そう言われてしまうと確かに辛いだろうとむ思ってしまう、頼むぜと言われてしまっては断れないマルコーだった。

 


 目を開けて起き上がろうとすると頭がクラクラする、いや、視界が定まらないというか、ぐるぐると回っている気がする、ああ、まずい、これは自分の限界がきてしまったんだと思って体を横にして寝ようとしてはっとした。
 あれっ、自分は講義を受けていたはずではなかったかと思い出した。
 何故、ベッドで寝ているんだろうと、ここもしかして医務室、なんとなく学生時代の保健室を思い出した。

 「気分はどうだい」

 男の人の声に思わずマルコーさんと呼んでみる、疲れがたまっていたんじゃないかい、そう言われて思わずはいと答えてしまう。


 それって、きっとストレスだよ、我慢のしすぎじゃない、若くても女性なら更年期は珍しくないよ。
 医者と友人からも言われた言葉を思い出す、ああ、やっぱり若くないから、女性ホルモンが年々減少するから、メンタルも弱くなってしまうんだわ、仕事もだけど結婚失敗したのも原因ねと。

 「講義が終わっても机に突っ伏したままで、スカー君もおかしいと思ったらしい」

 思い出した、まさかと思うが、ここまで運んでくれたのはスカーさんと聞くとそうだよと言われて落ち込んだ。

 「持病とかあるのかね」
 
 すると、ストレスだろうとノックスの声がした。
 
 「あれだ、ストレス、自律神経失調症ってやつだ、女の場合、歳は関係ない、更年期だな」

 言葉がぐさぐさと心臓に突き刺さる、オッサンは本当に遠慮がない、思わずノックスさーんと呼びかける。

 「これでもガラスのハートなんです、もう少し優しく」

 「まあ、全然知らない場所で生活してるんだ、色々あるだろう、ネェちゃんは、よくやってるぜ、これでいいか」

 とってつけたような言い方だけど、やっているというのは褒めて、いや、慰めてもくれているんだろう、うん、全然知らない場所で生活するって楽しい事もあるけど、大変なんだと、この日、改めて実感した。
 
 「今夜はマルコーと一緒にホテルに泊まれ」

 「お任せします、ううっ、気持ち悪っ」

 「おおっ、寝とけ、世話は医者のマルコーがやってくれる、安心して任せろ」

 お世話をかけますマルコーさんと心の中で繰り返していつの間にか眠っていたらしい。 
 

 
 
 
 その日、ノックスはロイ・マスタングに頼みがあると呼び出された。
 話を切り出した途端、自分は軍酢になる木はないと答えが即答で返ってきた、予想通りの返事だとマスタングはがっくりとなった。
 それにしても、何故、この医者、オッサンは自分に対して遠慮なくずけずけと文句が言えるのだろうと思った、やはり医者という職業のせいだろうか。

 「まあ、ここで断ったら人でなしといわれそうだからな、代わりの医者が来るまでは引き受けるぜ」
 
 「本当か、ノックス先生」
 
 「だが、一日中、こっちにいると自宅の療養所にも支障がでる、年寄りの病人とかいるんだ、だから協力してもらうぜ、友人に」

 最近、入ってきた若手の医者がブリッグズに移動することになった、引き抜きといえば聞こえがいいが、オリヴィエ・アームストロングのごり押しというやつだ。
 若い医者はセントラルの給料よりも破格で引っこ抜かれた、代わりの医者の打診をしているが、すぐに来ると言う訳にはいかず、白羽の矢がノックスに当たったのだが、
だが、自分の仕事を放っておいてと言う訳にはいかない。


 

 それで私にも協力しろと、マルコーは友人の話を聞いている間、質問も反論もしなかった、無駄だとわかっていたからだ。

 「錬金術講座は、もう少し続けるみたいな事を上は言ってる、おまえ、すぐに帰らないとまずいか、駄目なら若い医者を派遣して」
 
 「おい、そこまでしなくても」

 半ば呆れたというか脱力した友人の顔を見てノックスは、条件をつけてきたぜと笑った。
 
 「古いがな、一軒家を借りてきた、そこから、おまえさんは通えばいい、自炊はできるし、勿論、家賃光熱費はだだ、大佐が出す、若い頃から、お互い軍に、こき使われたんだ、これぐらい安いもんだろと言ったら文句は言わなかったな」
 
 そんな事を言ったのか、大佐の顔が目に浮かぶようだとマルコーは思った、にっこり笑っていないことは確実だ。

 「炊事、洗濯、掃除はネェちゃんにやらせろ、体調よくなったみたいだが」

 自分の知らないところで話はどんどんと進んでいる、一人の方が気楽だと思ったが、一軒家となると持て余すだろうと思いながらマルコーは構わないかと思った。


 それから数日が過ぎた。

 「おまえさん、出てきたんじゃねぇか」

 友人の言葉にマルコーは一瞬、はっとなった、友人の視線が自分の腹に向いていてぎくりとした。
 出ているというのは、やはり、腹だなと思う、いや、自分でも少し自覚はあったのだ、ズボンのベルトが最近、すこーし、きついなと、今まではホテル住まいだったので少しでも節約しなければと思いながら、食事は簡単なものが多かったのだ、だが、生活環境が変わり、自炊となると体を動かすことも多くなり、食欲も増してきた、その反動だ。

 「少しぽっちゃりぐらい、いいじゃないですか、可愛いですよ」

 ノックスの言葉に隣でサンドイッチを食べていた彼女が手を休めてマルコーを見た。

 「あのなあ、ネェちゃん、それ、本気で言ってるか」

 「ぽっちゃり熊さん、いいじゃないですか、夢の国ではクマさんはモテモテです、永遠のアイドルですよ」

 「あのなぁ、おまえさんぐらいだよ、そんなこというのは」

 だから、マルコーのようなオッサンと一緒でもと感心してしまった。

 「ところで息子さんは、どうです」

 「ああ、家に来てから夜になると飲んでるぜ、愚痴に付き合わされるこっちはたまったもんじゃねぇが、そろそろ、仕事を手伝ってもらうつもりだ」

 「お医者さんですか」

 「とにかく仕事をさせる、いつまでも未練がましく、酒ばかり飲んでって訳にもいかんだろう」

 父親の顔で呟くノックスは頭が痛いといわんばかりだ。
 見合いはどうですと女がノックスを見た、身元のちゃんとした、結婚願望のある女性なら大丈夫ではと言うと。
 
 「理想が高すぎるんだ、若くて、美人でボイン、優しい女がいいとか」

 それは高すぎるというよりは高望みしすぎているのでは歳は幾つですというと、ネェちゃんと同じくらいくらい、見た目は老けてるかもなとと言われて、聞いていたマルコーの表情までが、んんっとなった。

 「洒落になりませんよ、オッサンが芸能人やアイドルに恋してるみたいですよ、現実を見た方がいいって教えないと」

 「ガキの頃から教えてるがな、全然だ、親のいうことなんて右から左の耳の穴、風が吹き抜けてるみたいなもんだ」

 困ったと呟くノックスの顔は疲れた顔で二人が同情したのも無理はない。
 
 


 「マルコーさん、ノックスさん、ちゃんと食べてますかね」

 夕飯の支度をしていた彼女の言葉に心配しているんだなとマルコーは思った。
 友人の息子が帰ってきて一週間が過ぎた、一度、挨拶に行こうと思って覗いた事があったが、飲み屋とデリバリー、弁当屋という食生活だった、見かねて簡単な料理を作って冷蔵庫に入れておいたが、あれから気になって自分は何度か様子を見に行っているのだ。
 
 「息子さんは自炊とかするんですか」
 「そこはノックスと似ているというか、そっくりだ、料理はできない」
 「じゃ、容姿とか、顔立ちはどうです、似ているんですか」

 どう答えていいのか迷ったのも無理もない、子供の頃、一度、会った事がある、少し小太りの少年だったが、ところが、大人になった彼は背は高く、中肉中背というより
は少し痩せ過ぎではないかと思ったぐらいだ、しかも、髪も髭も伸び放題だ、ふられたショックなのだろうかと思ったが、あれではスラムの住人と間違われても無理はない
と思ったぐらいだ。

 「掃除とかしてるんでしょうか、部屋の埃ぐらいじゃ死にませんが、洗濯物は」
 「週に一度、まとめて行ってるみたいだな」
 「シーツや枕とか干してるんでしょうか、今は暖かいから汗もかきますよ」

 ああ、そういうのは、あまりやっていないだろう、多分、自分も一人なら、そこまで気が回らないかもしれない、一度、掃除に行ってみましょうかという彼女に、そうだなとマルコーは頷いた。

 「そうしてくれたらありがたいが、行ってみるかい、一度会っておくのもいいかもしれない」

 

 その日は講義もないので、昼を食べると差し入れの常備菜と料理、掃除道具を持ってマルコーと彼女はノックスの家を訪れた、診療所のスペースは、一応の体裁は保っている、だが、住居スペースは清潔、片づいているとはいいがたい。
 窓を開けて部屋の埃を外に掃き出して、洗濯、掃除に取りかかって、その間にマルコーは台所で持ってきた料理の準備を始めた。

 「大物の洗濯は今日は無理ですね、明日、朝一でコインランドリーに行きます、診療所のベッドの敷布とかも、この際、まとめて洗った方がいいですよね」
 
 半日では無理だったかと思いながら診療室で患者を診ている友人をちらりと見る、医者の腕はいいのだが、夫婦生活が続かなかったのは、自分の自堕落な部分が問題だといっていたのを思い出した。
 今、自分は料理、食材の買い出しぐらいなものだ、それ以外のことは全部やってくれるのだ、彼女が不満や文句を言うことはない、凄く楽だと思ってしまう。
 
 「おお、綺麗になったじゃねぇか、すまねぇな、二人とも」
 「明日、来ますね、シーツとか洗濯します、ところで息子さんはお出かけですか」
 
 返事がすぐには返ってこない。

 「実は軍医募集の話を聞いて面接に行ったんだ」
 
 腕が確かなら受かるのではないだろうか、でも、父親が軍の建物内で働いているとなると、親子で同じ職場になる、気にする人はいる、そういうところはどうなのだろう。

 「受からなければいいんだがな」
 
 とノックスはぽつりと呟いた。 



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