◎「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」
総合評価4点(5点満点)
2018年8月18日に日本公開(字幕)、フランス映画(2016年)、セバスチャン・ローデンバック監督・脚本、グリム兄弟 原作、76分。
少女(cvアナイス・ドゥムースティエ)、王子(cvジェレミー・エルカイム)、悪魔(cvフィリップ・ローデンバック)、庭師(cvサッシャ・ブルド)、父(cvオリビエ・ブロシュ)、母(cvフランソワーズ・ルブラン)など。

○ 物語もそうですが、絵の方がより話題で、名作との評価も多いようです。
確かに。
ただ、ちょっと絵を省略し過ぎな気も(作画技法の「クリプトキノグラフィー」はそういうものだと言われれば、その通りなのですが。)。
人は動いているし、登場キャラは少ないので十分判別できますし、細かく書き込んでいないのに心情も十分わかりますが、人が小さく描かれたときは人と判別しにくいですし、背景に描かれたものが何かを判別しにくいところがそこそこありました。
(上のポスターで言うと、少女の左は馬に乗った人だと分かりますが、その上のものが、緑ならすぐに木と分かりますが、青色っぽい灰色っぽい色なこともあって、ちょっと考えてしまいました。)
その判別のしにくさにより、物語が頭に少し入ってきにくくなりました。
あるいは、字幕ではなく吹替えなら、絵にもう少し集中できたので、大丈夫だったかも知れません。
なお、「かぐや姫の物語」(高畑勲監督、2013年11月23日公開)もかなり省略した絵でしたが、良かったです。
○ 少女は精霊に守られたので悪魔が触れませんでしたが、どうしたら精霊に守られるのでしょうね?。
守られなかったら悪魔に殺されていました。
結局は、少女は選ばれた者だ、選ばれた者は特別だ、ということでもあったわけですが。
選ばれた者でないと選べない、ということでもあったわけですが。
○ 何が幸せかと言うと、それは人によって異なります。ある人にとっては普通でも、ある人にとっては幸せだったり、ある人にとっては不幸でも、ある人にとっては幸せだったり。また、ある人にとって幸せだったことが、10年後も変わらず幸せとも限りません。
自分で選んで、自分で責任を取っていくしかないのでしょう。
少女は選びました。
王子は、少女と子供を愛していて一緒にいたいから、王位を捨てました。
これは、日本においては男女が逆なことがほとんどです(と、簡単に言いましたが、少なくとも現代日本では、女性が意に反して選択させられている場合が多いので、王子とは異なりますが。)。
王族も有名人も一般人も、どちらでも自由に選べて、当たり前のこととして何も言われない社会になると良いですね。
○ 公式HPから
「19世紀初頭にグリム兄弟によって書かれたドイツの民話集「グリム童話」は、160以上の言語に翻訳され聖書に並ぶといわれるほど世界中で読み継がれてきた。だが、オリジナル版には多くの残酷な場面や性的な事柄が含まれており、“本当は恐ろしい“童話として、日本でも大人向けに長年注目を集めてきた。
本作は「グリム童話」に初版から収録されている民話「手なしむすめ」を、新たによみがえらせた傑作アニメーションだ。ヒロインの少女は悪魔の企みで両腕を奪われ、数奇な運命に翻弄されながらも、不思議な精霊の力にも守られて、自分だけの幸せを見出していく。
ヒロインの生命力にあふれ、しなやかな生き方を、現代的な視点で描くのはフランスのセバスチャン・ローデンバック監督だ。故・高畑勲監督の実験精神に敬意を表する監督は、本作で驚嘆の作画技法「クリプトキノグラフィー」を用い、長編でありながら全ての作画をたったひとりで手がけた。まるで線そのものが命を持ち、呼吸するかのような美しい映像に、思わず息を呑む。そして、王子との結婚の先に少女を待ち受ける思いがけない物語の展開は、原作とは異なる監督ならではのラストへと観客を誘っていくだろう。」
【shin】