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「ジョゼと虎と魚たち」感想

【ネタバレ】

◎「ジョゼと虎と魚たち」

「やさしさも、涙も、憧れも、ぜんぶ。」
「この冬、一番の思い出を一緒に。」

2020年12月25日(金)公開、監督:タムラコータロー、脚本:桑村さや香、原作:田辺聖子(1984年に発表、1985年に書籍化。)、98分。

鈴川恒夫(cv中川大志)、ジョゼ(山村クミ子)(cv清原果耶)、二ノ宮舞(cv宮本侑芽)、松浦隼人(cv興津和幸)、岸本花菜(cv Lynn)、山村チヅ(cv松寺千恵美)など。

「趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。
幼いころから車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになったところを、大学生の恒夫に助けられる。
海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れをいつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。
そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅは、あるバイトを持ち掛ける。
それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。
しかしひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。
そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。
その触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ恒夫と共に飛び出すことを決めるが……。」(公式HPから。)




○総合評価は、上中下で中くらい。基本がコメディではないのに、全体として展開が安直な部分がポツポツとあったので、評価が低めです(キャラの感情の流れは分かるように描かれていますが、見ている側の感情の流れが少しばかり途切れる感じです。)。
なお、世評では傑作という声も多いようです。

ジョゼが障害者であるという設定はあまり前面には出ず、恋愛を前面に出した感じで、2人が乗り越える壁が障害者であることによりドラマチックになっていますが、障害者ではなくても描けたのでは、という感じもあります(そういう感じだという例えみたいなもので、実際に描けるのかは知りません。)。
「障害者の苦労入門」といった感じになっていて少し物足りなさも感じますが、入門も知らない人も多いのかも、と思えばそれはそれでアリと思えます。そもそも、「障害者の苦労入門」よりも恋愛を描きたかったのでしょうから、それはそれでアリです。

○ジョゼが恒夫に健常者には分からない旨を言いましたが(「健常者」という言葉をジョゼが使った。)、車椅子のみの不便なら健常者にもある程度の体験は出来ますが、それでも障害者の苦労は健常者には分からないというのはそのとおりでしょう(なお、障害者ほどではないにせよ健常者ゆえの苦労はあり、その苦労も障害者には分からないでしょう。)。

恒夫は怪我でそれが分かるようになりますが、それを想像さえしていなかったようなことを言っていたのは驚きですが、自分の事しか考えていないところを表しているのでしょう。
恒夫は悪いやつではありませんし、どちらかというと、いいやつ寄りです。実現したい夢があるから、努力によってその夢が実現しそうだから、夢ばかり追いかけていて他に目がいかないというのは大学生としては少数派かも知れませんが、それゆえ自分の事しか考えていないわけです。
そこは責めるような点ではないでしょう。

・障害者のことは、TVや新聞等で見聞きするか、街中で見かけるかしないと理解のしようがありませんし、どのような苦労があるかを知らないままになりかねません。

私が見た例では、電車だと、電動車椅子だと駅員に板みたいなものを渡してもらわないと乗降できませんし、手押しの車椅子なら多少の段差ならいくらか勢いをつけて自力で乗降できます(少し押して手伝ったことがあったかの記憶は定かではありあませんが、(気づいた時には)誰かが手伝っているところは見たことがありますし、誰も手伝わずに乗降が困難になっているところは見たことはありません。)。小型の車椅子なら、昇りエスカレーターに器用に後ろ向きになって自力で乗ることも出来ます。これを見たときは、上半身がかなり筋肉質だったこともあって、車椅子のスポーツ選手かもと思いました。

・本作ではジョゼと恒夫が2人で街中に出たときにジョゼのトイレをどうするのかが描かれませんでした(車椅子も使えるトイレは多くはない。)。たぶん、綺麗な恋愛ものにしたかったのかなと理解しました。トイレの少なさが不便なことは一般に知られているでしょうから、わざわざ描かないことは制作者の意図としてはアリだと思いました。

○ジョゼとチヅ(祖母)の2人暮らし、チヅは車椅子のジョゼを過度過ぎるくらい過度に外に出さないようにしていて、ジョゼが出たいと言うと怒ります。
昼間に2人で外に出て、誰かが押したからジョゼは坂道で止められずに、下にいた恒夫とぶつかって恒夫と知り合ったわけです。

食パンをくわえて走って通学途中に曲がり角でぶつかるという使い古された萌アニメ展開よりもご都合主義な出会いです。

チヅは、前にもちょっと目を離したすきに押された、だから外は危ない、外に出したくない旨を言いました。少なくとも2回、ジョゼは坂道を車椅子で、自力でとめることができずに落ちて行ったわけですが、これはチヅが押したのではないでしょうか(原作でどう描かれているのかいないのかは知りませんが、原作と同じとは限りません。)。

チヅ以外にジョゼを追ってきた人がいなかったはずですからチヅやジョゼが誰かと話していたらジョゼが押されたというわけではないと考える方が妥当ですし(誰かがジョゼを押したのならチヅが気づきそうですから、誰かがチヅを押してジョゼを落としたということは考えられますが。)、警察に届けた様子もないですし、届けたとしてもその後に連絡を取った様子もないですし、恒夫にジョゼの世話をするバイトを頼んでからはパチンコに行ったりと好きなことをしていますから、ジョゼの世話でやりたいことも出来ずにかなりのストレスがたまっていたはずです。
仮に1回目は誰かが押したのだとしても、恒夫との出会いの際は、これは使えると思ってチヅが押したのではないでしょうか。

・なお、大阪が舞台であることが関係しているのかは分かりませんが、原作がかなり古いことから、当時は、誰かが車椅子を押して坂道から落とすのが珍しくなかったというのであれば、そういうことでかまいません。スマホを使っているので現在を舞台にしていると考えることが妥当ですが、大阪では現在でも珍しくないというなら、そういうことでかまいません。その場合は、描かれていないだけで警察には届けたということなのでしょう。

・制作者の設定として、チヅの言葉どおり、誰かが押したということであれば、もちろんそれで構いません。その設定に、上記の疑問はありますが、致命的な矛盾があるわけではありません。しかもフィクションです。

○恒夫を好きだけど言い出せずにいる舞が、恒夫がジョゼに惹かれていることに気づいてジョゼに冷たく当たってしまったり、恒夫の回復を意図せずしてジョゼと2人で喜んだり、ジョゼと舞の関係はラブコメ的には楽しかったです。

○新宿ピカデリーにて。
2020年11月。


2020年12月。













【shin】


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