ぼくがむかし住んでいた団地に、花之助という猫がいた。オスのきじ猫で、えらく人懐っこかった。
ぼくが帰ってくると、どこからともなく鳴き声が聞こえてくる。お出迎えだ。
「ミャー」と声を上げて、ゆっくり近づいてくる。ぼくの足元まで来ると、突然尻尾を立て、何度もぼくの足に体を擦りつけ、ぐるぐる回っている。
ぼくはしゃがみこんで、花之助の背中をなで、あごの下をくすぐってやった。花之助は「グルグル」とのどを鳴らしている。しばらくそうやって遊んだ後で、ぼくは家に向かった。
ところが、ぼくが家に戻ろうとすると、花之助がぼくについてくる。ぼくが階段を上ると、さっと先回りして、階段の踊り場で待っている。で、ぼくが方向転換して、階段を下りると、花之助はまた先回りして階段の下で待っている。
何度か鬼ごっこをやった後、花之助のすきを突いて、ぼくはさっと家の中に入った。花之助はドアの向こうで、しばらく「ミャーミャー」鳴いていた。きっと寂しかったのだろう。
2,
花之助もそうだったが、猫というのは寂しがり屋だ。
以前、親戚が2日ばかり家を開けるので、仕事が終わってからでいいから、行って猫に餌をあげてほしいと頼まれたことがある。その猫はぼくには懐いてなかった。
しかし、よほど人恋しかったのだろう。ぼくが親戚の家に入ると、その猫はぼくに寄り添ってきて甘えだした。今まで見せたことのない行為だった。
餌を食べた後も、ぼくのそばから離れようとはしなかった。ぼくが帰ろうとすると、「ミャーミャー」鳴き、ぼくの前に立ちはだかった。きっと、ぼくを行かせまいとしていたのだろう。しかたないので、親戚が帰って来るまでいっしょにいてやることにした。
その間、彼はぼくのそばから離れなかった。しかし、親戚の人が帰ってくると、もはやぼくは用なしだった。ぼくを見るとコソコソと逃げて行った。
3,
猫はマッサージが好きである。
何年か前、太宰府の都府楼跡に行った時に一匹の猫と出会った。ぼくを見ると近づいてきたのだ。いつものように、ぼくは猫をなでてやった。
普通はこれで終わりなのだが、その時はどういうわけか、猫にマッサージをしてやりたくなった。猫の肩をもむわけはいかないので、頭をマッサージすることにした。
しばらく頭を揉んでいると、猫は恍惚状態になった。おそらく頭が凝っていたのだろう。実に気持ちよさそうな顔をしていた。
しかし、猫は頭が凝るようなことがあるのだろうか。どう見ても、頭を使っているようには見えない。
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