ぼくは元々、理科系の教科は得意ではなかった。
小学生の頃は実験が嫌いでサボったこともあった。
中学生になっても同じで、成績はよくなかった。おかげで、高校受験の時、志望校を1ランク下げなければならなかった。
その状態で入った高校も当然理科系の成績は芳しくなく、生物、化学両教科はいつも欠点前後を彷徨っていた。特に、生物は夏休みの宿題であった植物採集を提出しなかったため、教師から反感を買っていた。
1974年3月、学校から帰ってきた時、電話が鳴っていた。慌てて出てみると、生物の教師からだった。
「しんた君かね。生物のFだけどね」
「はい」
「君には追試になったよ」
「えっ!?」
「3学期の成績はまあまあだったんだけどね、年間通しての成績がよくなく、夏休みの宿題も提出してなかったのでね」
「範囲はどこですか?」
「この1年で習った全てだ」
目の前が真っ暗になった。『来年も1年生』という思いが駆けめぐった。
それから1週間、必死になって、『ミトコンドリア』や『デオキシリボ核酸』といった、わけのわからない言葉と格闘したのだった。
1週間後、追試会場に行くと、20人ほどの生徒がいたが、そのほとんどか英語や数学といった主要科目で、生物で追試を受けているのは、2人しかいなかった。その人も、植物採集を提出しなかったと言っていた。
1週間のヤマが当たり、追試は高得点でクリア出来た。が、その後、再び生物教師から連絡が入った。
「追試の答合わせをやるから、来なさい」
仕方なく、ぼくは学校に行き、面白くもない生物の授業を2時間受けたのだった。
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