吹く風ネット

鷺の棲む川

1,
 近くの川に数羽の鷺が棲んでいる。河口の方には更に多くの鷺が棲む。
 四十年程前その川には鷺どころか、サカナや亀さえ棲んでいなかった。鷺が川に居着くようになったのは、川がきれいになり、それに伴ってサカナや亀がもどってきてからだ。
 ぼくが社会に出た頃に、その姿をボチボチと見かけるようになった。それまで野生の大きな鳥といえばカラスくらいしかいなかったので、最初に鷺を見た時は、予想以上の大きさにびっくりしたものだった。

2,
 この地域には地名やバス停の名に鷺という文字を使っている場所が
いくつかある。『鷺などいないのにどうしてだろう』と、ずっとぼくは疑問に思っていた。
 ある日地名の由来が書いてある文献を見つけ、読んでみると、鷺がこの辺一帯に多く生息していたことがわかった。ここは彼らのふるさとだったのだ。つまり公害でふるさとを追われて、長い疎開を強いられていたわけだ。

3,
 鷺は中々写真を撮らせてくれない。ヤツらはカメラを手にしただけで、大きく羽を広げて飛んで行くんだ。ノラネコでさえカメラを向けるとおとなしく撮らせるのに、なんと鷺はケチな根性をしてるんだろう。しかも動きがゆったりしてるから、何か馬鹿にされている気さえする。

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