「北海道新幹線が開業するとどのくらい乗客が乗るのだろうか?」という問題は、2031年の開業はおろか、2031年度以降にもまとわり続ける大きな問題です。
これは開業効果そのものだけでなく、運営するJR北海道の今後の運営、北海道地域の経済にも影響してくるからです。
本邦のTwitter上ではしばしば「北海道新幹線はできても飛行機に勝てるか?」という問題が提起されては、周りを巻き込んでの論争と呼ぶに値しない拙い論争が起きています。
そんな中で変化が起きたのは、次の2つのニュースでした。
①東北新幹線 盛岡―新青森320km/h化
「東北新幹線、盛岡以北の高速化検討 JR東が騒音対策」(日本経済新聞)リンク
一つ目は、東北新幹線のうち整備新幹線区間である盛岡―新青森間(実キロ178.4km)における320km/h運転に向けたニュースです。
東北新幹線は2013年より最速320km/hが開始されましたが、整備新幹線は全国新幹線鉄道整備法に則った260km/hでの運転となっています。
単純に計算すれば、260km/h→320km/h化で縮まる時間は約7分30秒で、それ自体は大きな変化ではありません。
しかし、東京―新函館北斗の「4時間の壁」、東京―札幌の「5時間」の壁を破るためには、この区間の高速化が重要になってきます。
整備新幹線は鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって建設され、JRが利用料を払うことで建設費を償還するというスキームで成り立っているので、実際にはJRだけの話にはとどまりません。
高速化となると構造が耐えられるか(耐えられなければその補強)、騒音対策が必要となるので、実行の可否はすぐにはでてこないでしょう。
1993 年以降に計画された整備新幹線では、いったん施工すると変更が困難なことから緩和曲線と縦曲線について、360km/hで走行可能な線形となっています。
また、待避可能な八戸駅も通過に対応しているので、GOサインが出ればすぐに進むと思われます。
②北海道新幹線 新函館北斗―札幌 1時間を目標に計画修正
新幹線・新函館北斗~札幌「1時間切り目指す」 札幌~東京を「4時間半に」 JR北海道(北海道新聞)リンク
二つ目は当事者であるJR北海道の島田社長の会見での発言です。
当初計画では1時間13分だったところを、札幌―新函館間で1時間切り、札幌―東京で4時間半を目指すというニュースです。
整備新幹線を作る側の国交省の資料「収支採算性及び投資効果に関する詳細資料」(平成24年4月)を見てみると、新函館―札幌(実キロ:約211.5km)を『各駅停車』で1時間12分とされています。
(上記資料より)
同じ整備新幹線の九州新幹線では筑後船小屋―鹿児島中央(実キロ208.9km)で1時間23分前後、北陸新幹線では長野―富山(実キロ228.14km)で1時間27分前後となっています。
北陸新幹線の当初予定数値(上記資料より)が1時間22分と見込まれていたことを考えても、大きく変化することはないと見込まれます。
両新幹線に比べて勾配が緩いことや、駅数が少なく余裕時分が小さくてよいこと、トンネル延長に伴う計画変更(札幌トンネル・渡島トンネル)で勾配がやや緩くなったことを加味すれば、各駅停車で1時間15分程度と考えるのが妥当です。
1時間13分という数値が何を示しているのかは、JR北海道の資料を待つところです。
以上を踏まえて、東京―札幌の最速時間についてみてみましょう。
現行で東京―新函館北斗の最速は「はやぶさ9号」などの4時間2分です。
2019年3月改正で青函トンネル区間が160km/hに引き上げられますが、それを踏まえても4分短縮の3時間58分となります。
これに先ほどの時間(と停車時間)を加えると東京―札幌は最速5時間11分となります。
1時間13分を各駅停車のタイムとするならば、新函館―札幌ノンストップでの所要時間は57分と予想されますが、それでも4時間55分となります。
これは国交省の想定している数値(東京―札幌5時間1分)に近い数字となっています。
この他、東北新幹線では次の2つのスピードアップが予定されています。
・上野―大宮間 120km/h→130km/h(最大-1分、実現見通し)
・宇都宮―盛岡間 320km/h→360km/h(最大-7分程度、計画段階)
・青函トンネル速度向上 140(160)km/h→210km/h(最大-3分程度、計画段階)
万事うまく進み、①②の計画と上の3つの計画全てが実行できたと仮定し、新函館―札幌をノンストップにしたときの所要時間は4時間38分となります。
実際はさらに短縮できる可能性があります。
先ほどの時間は「はやぶさ9号」を基準とした場合ですが、区間ごとで見るとこれより速い列車が存在します。大宮―仙台、仙台―盛岡、盛岡―新青森で、それぞれ1分ずつ速い列車が存在し、その場合の計算時間は4時間35分です。
丸め時分の可能性もありますが、E5系は登り3‰勾配での均衡速度が360km/hという話もあり(鉄道ファン09年10月号より。今後きちんと検証する予定)、この性能のまま360km/h運転は不可能です。必然的に各区間の速度余力は上がりますから、丸め時分程度は短縮できると見込まれます。
さらにことが進み、新函館―札幌が最高360km/h運転になったと仮定します(盛岡―新青森については据え置きと仮定)。
この場合、新函館―札幌間は、単純計算で9分減の48分で走行できます。
こうなると東京―札幌は4時間26分となり、4時間30分というJR北海道の夢は突破できます。
これらをOudiaSecond(http://oudiasecond.seesaa.net/)を用いて計算した結果がこちらです。
「正規化」は東京からの所要時間を示しています。
現在最速3時間となっている東京―新青森では2時間41分となっており、この高速化が東北においても効果が出ていることが分かります。
次回以降、具体的なダイヤについて検証していく予定です。
これは開業効果そのものだけでなく、運営するJR北海道の今後の運営、北海道地域の経済にも影響してくるからです。
本邦のTwitter上ではしばしば「北海道新幹線はできても飛行機に勝てるか?」という問題が提起されては、周りを巻き込んでの論争と呼ぶに値しない拙い論争が起きています。
そんな中で変化が起きたのは、次の2つのニュースでした。
①東北新幹線 盛岡―新青森320km/h化
「東北新幹線、盛岡以北の高速化検討 JR東が騒音対策」(日本経済新聞)リンク
一つ目は、東北新幹線のうち整備新幹線区間である盛岡―新青森間(実キロ178.4km)における320km/h運転に向けたニュースです。
東北新幹線は2013年より最速320km/hが開始されましたが、整備新幹線は全国新幹線鉄道整備法に則った260km/hでの運転となっています。
単純に計算すれば、260km/h→320km/h化で縮まる時間は約7分30秒で、それ自体は大きな変化ではありません。
しかし、東京―新函館北斗の「4時間の壁」、東京―札幌の「5時間」の壁を破るためには、この区間の高速化が重要になってきます。
整備新幹線は鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって建設され、JRが利用料を払うことで建設費を償還するというスキームで成り立っているので、実際にはJRだけの話にはとどまりません。
高速化となると構造が耐えられるか(耐えられなければその補強)、騒音対策が必要となるので、実行の可否はすぐにはでてこないでしょう。
1993 年以降に計画された整備新幹線では、いったん施工すると変更が困難なことから緩和曲線と縦曲線について、360km/hで走行可能な線形となっています。
また、待避可能な八戸駅も通過に対応しているので、GOサインが出ればすぐに進むと思われます。
②北海道新幹線 新函館北斗―札幌 1時間を目標に計画修正
新幹線・新函館北斗~札幌「1時間切り目指す」 札幌~東京を「4時間半に」 JR北海道(北海道新聞)リンク
二つ目は当事者であるJR北海道の島田社長の会見での発言です。
当初計画では1時間13分だったところを、札幌―新函館間で1時間切り、札幌―東京で4時間半を目指すというニュースです。
整備新幹線を作る側の国交省の資料「収支採算性及び投資効果に関する詳細資料」(平成24年4月)を見てみると、新函館―札幌(実キロ:約211.5km)を『各駅停車』で1時間12分とされています。
(上記資料より)
同じ整備新幹線の九州新幹線では筑後船小屋―鹿児島中央(実キロ208.9km)で1時間23分前後、北陸新幹線では長野―富山(実キロ228.14km)で1時間27分前後となっています。
北陸新幹線の当初予定数値(上記資料より)が1時間22分と見込まれていたことを考えても、大きく変化することはないと見込まれます。
両新幹線に比べて勾配が緩いことや、駅数が少なく余裕時分が小さくてよいこと、トンネル延長に伴う計画変更(札幌トンネル・渡島トンネル)で勾配がやや緩くなったことを加味すれば、各駅停車で1時間15分程度と考えるのが妥当です。
1時間13分という数値が何を示しているのかは、JR北海道の資料を待つところです。
以上を踏まえて、東京―札幌の最速時間についてみてみましょう。
現行で東京―新函館北斗の最速は「はやぶさ9号」などの4時間2分です。
2019年3月改正で青函トンネル区間が160km/hに引き上げられますが、それを踏まえても4分短縮の3時間58分となります。
これに先ほどの時間(と停車時間)を加えると東京―札幌は最速5時間11分となります。
1時間13分を各駅停車のタイムとするならば、新函館―札幌ノンストップでの所要時間は57分と予想されますが、それでも4時間55分となります。
これは国交省の想定している数値(東京―札幌5時間1分)に近い数字となっています。
この他、東北新幹線では次の2つのスピードアップが予定されています。
・上野―大宮間 120km/h→130km/h(最大-1分、実現見通し)
・宇都宮―盛岡間 320km/h→360km/h(最大-7分程度、計画段階)
・青函トンネル速度向上 140(160)km/h→210km/h(最大-3分程度、計画段階)
万事うまく進み、①②の計画と上の3つの計画全てが実行できたと仮定し、新函館―札幌をノンストップにしたときの所要時間は4時間38分となります。
実際はさらに短縮できる可能性があります。
先ほどの時間は「はやぶさ9号」を基準とした場合ですが、区間ごとで見るとこれより速い列車が存在します。大宮―仙台、仙台―盛岡、盛岡―新青森で、それぞれ1分ずつ速い列車が存在し、その場合の計算時間は4時間35分です。
丸め時分の可能性もありますが、E5系は登り3‰勾配での均衡速度が360km/hという話もあり(鉄道ファン09年10月号より。今後きちんと検証する予定)、この性能のまま360km/h運転は不可能です。必然的に各区間の速度余力は上がりますから、丸め時分程度は短縮できると見込まれます。
さらにことが進み、新函館―札幌が最高360km/h運転になったと仮定します(盛岡―新青森については据え置きと仮定)。
この場合、新函館―札幌間は、単純計算で9分減の48分で走行できます。
こうなると東京―札幌は4時間26分となり、4時間30分というJR北海道の夢は突破できます。
これらをOudiaSecond(http://oudiasecond.seesaa.net/)を用いて計算した結果がこちらです。
「正規化」は東京からの所要時間を示しています。
現在最速3時間となっている東京―新青森では2時間41分となっており、この高速化が東北においても効果が出ていることが分かります。
次回以降、具体的なダイヤについて検証していく予定です。
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