Local-Liner ~静サツ雑記帳

静岡運転所札幌派出所=静サツへようこそ。
札幌圏の鉄道を軸に、気ままに書き連ねていく日記です。

ご当地入場券を車で集めるということ

2017年11月13日 | 日記
 おばんでございます。
 本日はこの前も書いた「ご当地入場券」のお話です。



 ご当地入場券はJR北海道と沿線自治体が協力し、各町ごとに異なるデザインの入場券を販売するものです。関係自治体の数は101。その全てに設定があり、全部で101枚あります。
 それぞれの入場券は現地でしか買えないため、購入にはそこまで向かう必要があります。そのための移動であったり、現地での観光によって、JRや関係自治体を盛り上げようという趣旨の企画(※1)です。

 同時に記念のファイルも発売。コレクション要素もあることから売り上げは上々。夏休み終了時点での売り上げはおよそ2040万円(※2)にも上り成果は上々……

 ――とは言い難い状況も生まれております。

 記念ファイルの売り方も結構問題だった(※3)んですが、それ以上の火種が投げ入れられたのは、11/9付けの十勝毎日新聞の記事でした。


「JR北海道の「わがまちご当地入場券」全101駅分ゲット! 音更町の穂積さん」yahoo版より
(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171109-00010000-kachimai-hok)


 音更に在住の方が全101駅分のご当地入場券をすべてコンプリートした、という記事なのですが、この方はすべて車で回っての収集。つまり、基本JRを使わずして全駅分を買ったというのです。
 これによってTwitterで「なんのためのご当地入場券だ」「車で行くとか舐めてる」と非難が殺到する事態、炎上ともいっていいほどに荒れています。

 しかし、考えてみると、本当にそうですかね



 こちらが発売駅の分布ですが、「自家用車なしで集める」のは明らかハードルが高いことが分かります。
 北は稚内から南は海を越えて奥津軽いまべつまで、東は根室から西は木古内まで、全道に分布しており、行くだけでも一筋縄ではいきません。

 ご存知の通りJR北海道のダイヤは札幌近郊を除けばすかすかといっても過言ではなく、1時間に1本あれば多い部類に入ります。函館本線・滝川~旭川、室蘭本線・伊達紋別~函館本線・函館などのように特急を入れてようやく本数が多いといえる区間も少なくありません。特急に乗ればそれだけお金もかかります。
 入場券は改札の外での販売ですから、降りたらすぐ乗れるという代物ではありません。必然的にその時間はロスとなり、1日で回れる駅は限られます
 前回の旅(→参照)でも1日に3駅が限界でした。

 さらに営業時間の問題が拍車をかけます。
 地域の有人駅での販売が原則ですが、都市の駅を除けば(朝~)昼のみ営業という駅が少なくありません。したがって夕方に着いてもご当地入場券は買えないのです。
 特に本数が少ない区間は深刻です。こうした区間では朝夕の通学時間帯に列車が集中するのですが、夕方は人の流れが分散します。すなわち、ただでさえ少ない列車が夕方に列車本数が集中するのです。ご当地入場券の販売時間帯にくる列車が1日1本とかいう駅もざらにあります。

 というか販売場所が駅から離れてる場所も多い(※4)ので、そもそも列車のみでの購入は念頭に置いていないと思います。無人駅しかなかったり、有人駅でも営業が短い自治体ではなにかしらの施設に委託(例えば蘭越町では昆布駅至近の観光案内所に委託)してますが、その裁量は自治体にゆだねられています。駅前にそうした施設がない場合、結果的に駅から遠くなっても人が置ける場所になるのは無理ないと考えていいでしょう。
 なにせ、今回の入場券では委託料がほとんど支払われない(※5)のですから

 では、車で集めるのが正義かといわれると、そうではないのも事実。
 JR北海道の苦難の原因の一つは、間違いなく利用者離れです。道内の利用のうち約8割は自家用車によるものという国交省の資料(※6)があります。道外からの観光利用や鉄道が通らない自治体を含むデータなので一概に言えるわけではありませんが、鉄道が通る自治体でも自家用車利用が多数を占めているであろうことは容易に推測できます。これでもJR北海道はパーク&ライドには積極的な鉄道会社の一つなのですが……
 したがって、入場券を現地販売にすることで、現地までの利用にJRを利用してもらおうという思惑も見えるでしょう。
 車で買いに行かれるよりも、鉄道で買ってもらう方がJRの収益になるのは明らかです。

 しかしご当地入場券はもう一つの面があります。普段鉄道を利用しない人にも買ってもらえることです。
 鉄道オタクにはピンとこないかもしれませんが、何も用事がないのに乗車券だけを買ったり乗ったりすることはありません。まして乗車券とて使わない乗車券は切符収集以外の目的で買うことはほとんどありえないことですが、入場券なら1枚170円。気軽に払える金額です。デザインが多彩となればなおのこと。
 鉄道要素が比較的薄いからこそ、地方部でも数千枚単位で売れているのだと思います。

 私個人も集めており、現在38枚となりましたが、ほぼすべて(※7)鉄道を使って集めています。
 時間の都合で片道バスだったり両方バスだったりしますが、自家用車は使っていません(※8)。
 ほとんど撮影のついでであり、ご当地入場券のためだけに出かけることはありませんでしたが、かたくなにJR利用にこだわっているのは、少しでもJRの助けになることを願った、いわばJRに対する敬意みたいなものです。
 ですので、「JRを使って集めるべきである」というのはむしろ共感できます。

 ですが、車を使ったからといってJRに貢献してないというのは間違いです
 車で行くのは車で行った方が明らかに楽……というか、JRで行くと損するような営業時間だったり販売場所だったりダイヤの問題があります。
 本当に売る気があるのなら16時発の特急に16時1分着の普通列車を接続させろ(※9)。
 JRのみで買えるのならそれはそれで価値があるですし、車だけで集めるよりかは素晴らしい行いでしょうが、決して楽なものでもなければ偉ぶれるわけではないのです。

 余談ですが、ご当地入場券は自治体に向けての踏み絵だったのではないかと考えています。
 つまり協力しない自治体をあぶり出し、廃線協議の土台にする気だったのでは、というお話です。
 最終的には全自治体が協力しましたが、もししてないところが出たらどうなっていたのやら……

 そして、買う側からすると土日に販売しない自治体とかはやる気があるのかって話ですが……

※1…https://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20170713/Trafficnews_75926.htmlなど複数参照。
※2…「12万枚突破 JR北海道「わがまちご当地入場券」の懸念」ITメディア、2017年9月15日付 http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1709/15/news024.html
※3…なぜか限定商法を始めたり追加特典つけたりする不思議。入場券は今のところ当面販売を続ける見込みで枚数制限はない。
※4…鹿部(駅からバスで30分)、浜中(駅からバスで1時間)など
※5…※2の記事参照。記事が正しければ(1080-1000)/1080=7%が委託料となる。最も売れていると思われる札幌で現在8000枚程度の売れ行き。
※6…「JR北海道の現状等について」2017年6月7日 http://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/bunyabetsu/tiikikoukyoukoutsuu/67shinpojiumu/290607/02tetsudoukyoku.pdf
※7…11/12、ついに比布で行き帰り両方でバスを使ってしまう事件が発生。
※8…一応免許持ちだが、駐車場がないので借りるとめんどくさい。一人だと高くつく、などの理由からレンタカーは利用していない。
※9…旭川16:00発のライラック27号に16:01着の快速なよろ8号がギリギリ接続しない事象。時間の都合も重なり、和寒での購入を諦めることなった遠因に。


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