前回――といっても1ヶ月前くらいの記事の続き。今年度静サツが作成した楽譜の紹介です。
本日紹介するのは、fhánaの「Divine Intervention」です。
2014年春アニメ「ウィッチクラフトワークス」のオープニングテーマでした。
実のところ、私はウィッチクラフトワークスは見ていません。
どうしてこれをつくることになったかというと、原因は2014年秋アニメの「天空(そら)のメソッド」にあります。
そのエンディングテーマ「星屑のインターリュード」を歌っていたのが、今作のアーティストであるfhánaです。ふわふわとした流れるような独特の旋律に、しっかりと固められたベースラインを特徴とする曲で、当初はこちらを作るつもりでした。
しかし、意気揚々と作り始めたものの、ベースラインは曲調に似合わずかなり複雑で、音の重なりも多すぎて、吹奏楽化を断念してしまいました。
そうしてfhánaの楽曲をいくつかたどって出会ったのが、「Divine Intervention」です。
「Divine Intervention」はfhánaにしては珍しいロック調の曲です。それでいてメロディラインの美しさは――Vocalのtowanaさんの声質が素晴らしいのもありますが――相変わらずです。これなら吹けるだろうと思って編曲に取り組みました。
ニコニコ動画とYoutube両方に投稿しています。
ニコニコ動画
Youtube
※同一動画です。どちらも本人による投稿です。
パートは
・Flute
・Clarinet
・AltoSaxophone 1st./2nd.
・TenorSaxophone
・Trumpet 1st./2nd./3rd.
・Horn
・Trombone 1st./2nd./3rd.
・Euphonium
・Tuba
・Drumset
・Tambourine
となっています。特殊な編成ですが、これについては後ほど説明します。
それでは恒例の裏話をしていきます。
○編成について
編成が特殊になっているのは「海色」と全く同じ理由です。めんどくさいのでここではカット。
「海色」と異なり、弦によるバックの流れるようなサブメロディーはほぼ全てフルートとクラリネットに委ねています。サックス系では音域が低くなり、また音質的にも合わないと判断したためです。そのため、全体のハーモニクスを重視した海色とは対照的に、メロディー内のハーモニクスを重視しています(サビを『厚く』しました)。これについては次の項で説明します。
○サビの厚み
前述の通りサビではバックに高音系の木管が、その他にベースにチューバ、和音伴奏にトロンボーンが入っています。
で、残りは何をしているかと言うと――全員メロディーに参加します。
といっても、それでは大きくなりすぎるので、メロディーを和音にすることで分散しています。
具体的には本来のサビの音をアルトサックス、トランペット1st、ユーフォニウムが担当。残りはハモりとなります。ホルンとユーフォニウムはサビ途中からの参加なので、聞いているとだんだん音が豊かになるのがわかると思います。
まあ、実際に吹く段になったら苦労しそうな場所の一つですが。
○ベース
fhánaさんきついっす。
fhánaは元々SupercellやHoneyworksのような同人的なクリエイター集団でした。ボーカルは曲の度に招聘するスタイルだったのですが、現在のボーカルtowanaさんと組んで以来一体となって活動しています。
こうしたクリエイター集団では基本的にコンポーザー(作曲者)が曲を作り、それを他のメンバーが演奏するというスタイルが基本ですが、fhánaの場合ベーシストがコンポーザーサイドにいるためか、どの曲もベースが深いものになっています。
が、今回の編曲では、ベースは音域や楽器数的にチューバでしか吹けないため、変幻自在なベースにかまっている余裕はありません。なので、ベースは割りと適当です。……あ、でも、「H」(リハーサルマーク)とか目立ってるよ! 4小節だけだけど……
○調は犠牲になったのだ……
「Divine Intervention」で大きな問題となったのがキー(調)です。
原曲はE major(E dur)なのですが、ピアノの楽譜表記ではシャープが4つつきます。これだけでも読みにくいのですが、吹奏楽は多くが移調楽譜なのでさらにシャープの数は増えます。トランペットなど(B管)ではシャープが2個追加でシャープ6個。アルトサックス(Es管)にいたってはシャープが7つになってしまいます。読みにくいのは元より、吹奏楽では指遣いの関係からシャープは避けられる傾向にあります。
そのため、編曲の調は半音下げたE♭ major(Es dur)としています。原曲重視の静サツですが、ここは泣く泣く諦めました。もっとも、そのおかげで楽譜はかなり読みやすくなっています。
○跳躍するメロディー
もう一つ問題になったのが、メロディーを何に担当させるのかです。
fhánaの美しい旋律。その源にあるのがtowanaさんの声ですが、驚くべきはその音域の広さ。「Divine Intervention」だけで見ても、一番下がG3※、一番上がG5(いわゆるHi G)と、2オクターブもの開きがあります。
(※G3……ト音記号の一番下のハがC4。G3はこのすぐ下のG、G5は2つ上のGのこと)
構成の都合上、メロディーは基本的にトランペットの担当なのですが、トランペットはC4より下が出しにくい音域になります。ここはアルトサックスやトロンボーンで解決しています。
一方で、上の音はアルトサックスではわりと限界の音域です。かといって他の木管はバックに回してしまっているので、トランペット(1st)でなんとか支えてもらう形をとっています。いずれにしても1つのパートでは支えきるのは無理でした。
尚、「ソライロピクチャー」ではHi Aを出していました(※1音ではなく、サビ全てに含まれています)。towanaさんすげえ。
○投稿の遅れ
この曲は冬休み中に作成しました。というか、帰省中に書くことを決め、正月明けから作業開始。飛行場でもノートパソコンで書いていたほどです。おおよそ2週間で完成しました。
ところが、この曲の動画が出来たのは、8月末のことでした。
もちろん海色と同じくこの曲の落選が決まるまでは作るわけにもいきませんでしたが、それとは別の理由もありました。楽譜動画に出来なかったからです。
当初はいつものように楽譜を動画にしていたのですが、Musescoreの再生の問題で、楽譜用ファイルを再生して録画→音源を加えるといういつものやり方ができませんでした。
それに代わり、今回は演奏中のパートが光るような仕組みにしたのですが、これに結構手間取りました。演奏中のパートを確認しながら、GIMPでせっせと画面を作る――こうしてパート表示画面だけで40枚弱。さらにクロマキーに挑戦したりなんだかんだで、3日ほどかかってしまいました。
また、Musescore2で移行ついでに、楽譜を手直ししていたという理由もあります。
ということで、紹介記事は以上です。製作からここまでに、足掛け9ヶ月もかけてしまいました。
次回何を作るかは未定ですが、予定は未定なのでその内何かを作ると思います(作るとは言ってない)。
本日紹介するのは、fhánaの「Divine Intervention」です。
2014年春アニメ「ウィッチクラフトワークス」のオープニングテーマでした。
実のところ、私はウィッチクラフトワークスは見ていません。
どうしてこれをつくることになったかというと、原因は2014年秋アニメの「天空(そら)のメソッド」にあります。
そのエンディングテーマ「星屑のインターリュード」を歌っていたのが、今作のアーティストであるfhánaです。ふわふわとした流れるような独特の旋律に、しっかりと固められたベースラインを特徴とする曲で、当初はこちらを作るつもりでした。
しかし、意気揚々と作り始めたものの、ベースラインは曲調に似合わずかなり複雑で、音の重なりも多すぎて、吹奏楽化を断念してしまいました。
そうしてfhánaの楽曲をいくつかたどって出会ったのが、「Divine Intervention」です。
「Divine Intervention」はfhánaにしては珍しいロック調の曲です。それでいてメロディラインの美しさは――Vocalのtowanaさんの声質が素晴らしいのもありますが――相変わらずです。これなら吹けるだろうと思って編曲に取り組みました。
ニコニコ動画とYoutube両方に投稿しています。
ニコニコ動画
Youtube
※同一動画です。どちらも本人による投稿です。
パートは
・Flute
・Clarinet
・AltoSaxophone 1st./2nd.
・TenorSaxophone
・Trumpet 1st./2nd./3rd.
・Horn
・Trombone 1st./2nd./3rd.
・Euphonium
・Tuba
・Drumset
・Tambourine
となっています。特殊な編成ですが、これについては後ほど説明します。
それでは恒例の裏話をしていきます。
○編成について
編成が特殊になっているのは「海色」と全く同じ理由です。めんどくさいのでここではカット。
「海色」と異なり、弦によるバックの流れるようなサブメロディーはほぼ全てフルートとクラリネットに委ねています。サックス系では音域が低くなり、また音質的にも合わないと判断したためです。そのため、全体のハーモニクスを重視した海色とは対照的に、メロディー内のハーモニクスを重視しています(サビを『厚く』しました)。これについては次の項で説明します。
○サビの厚み
前述の通りサビではバックに高音系の木管が、その他にベースにチューバ、和音伴奏にトロンボーンが入っています。
で、残りは何をしているかと言うと――全員メロディーに参加します。
といっても、それでは大きくなりすぎるので、メロディーを和音にすることで分散しています。
具体的には本来のサビの音をアルトサックス、トランペット1st、ユーフォニウムが担当。残りはハモりとなります。ホルンとユーフォニウムはサビ途中からの参加なので、聞いているとだんだん音が豊かになるのがわかると思います。
まあ、実際に吹く段になったら苦労しそうな場所の一つですが。
○ベース
fhánaさんきついっす。
fhánaは元々SupercellやHoneyworksのような同人的なクリエイター集団でした。ボーカルは曲の度に招聘するスタイルだったのですが、現在のボーカルtowanaさんと組んで以来一体となって活動しています。
こうしたクリエイター集団では基本的にコンポーザー(作曲者)が曲を作り、それを他のメンバーが演奏するというスタイルが基本ですが、fhánaの場合ベーシストがコンポーザーサイドにいるためか、どの曲もベースが深いものになっています。
が、今回の編曲では、ベースは音域や楽器数的にチューバでしか吹けないため、変幻自在なベースにかまっている余裕はありません。なので、ベースは割りと適当です。……あ、でも、「H」(リハーサルマーク)とか目立ってるよ! 4小節だけだけど……
○調は犠牲になったのだ……
「Divine Intervention」で大きな問題となったのがキー(調)です。
原曲はE major(E dur)なのですが、ピアノの楽譜表記ではシャープが4つつきます。これだけでも読みにくいのですが、吹奏楽は多くが移調楽譜なのでさらにシャープの数は増えます。トランペットなど(B管)ではシャープが2個追加でシャープ6個。アルトサックス(Es管)にいたってはシャープが7つになってしまいます。読みにくいのは元より、吹奏楽では指遣いの関係からシャープは避けられる傾向にあります。
そのため、編曲の調は半音下げたE♭ major(Es dur)としています。原曲重視の静サツですが、ここは泣く泣く諦めました。もっとも、そのおかげで楽譜はかなり読みやすくなっています。
○跳躍するメロディー
もう一つ問題になったのが、メロディーを何に担当させるのかです。
fhánaの美しい旋律。その源にあるのがtowanaさんの声ですが、驚くべきはその音域の広さ。「Divine Intervention」だけで見ても、一番下がG3※、一番上がG5(いわゆるHi G)と、2オクターブもの開きがあります。
(※G3……ト音記号の一番下のハがC4。G3はこのすぐ下のG、G5は2つ上のGのこと)
構成の都合上、メロディーは基本的にトランペットの担当なのですが、トランペットはC4より下が出しにくい音域になります。ここはアルトサックスやトロンボーンで解決しています。
一方で、上の音はアルトサックスではわりと限界の音域です。かといって他の木管はバックに回してしまっているので、トランペット(1st)でなんとか支えてもらう形をとっています。いずれにしても1つのパートでは支えきるのは無理でした。
尚、「ソライロピクチャー」ではHi Aを出していました(※1音ではなく、サビ全てに含まれています)。towanaさんすげえ。
○投稿の遅れ
この曲は冬休み中に作成しました。というか、帰省中に書くことを決め、正月明けから作業開始。飛行場でもノートパソコンで書いていたほどです。おおよそ2週間で完成しました。
ところが、この曲の動画が出来たのは、8月末のことでした。
もちろん海色と同じくこの曲の落選が決まるまでは作るわけにもいきませんでしたが、それとは別の理由もありました。楽譜動画に出来なかったからです。
当初はいつものように楽譜を動画にしていたのですが、Musescoreの再生の問題で、楽譜用ファイルを再生して録画→音源を加えるといういつものやり方ができませんでした。
それに代わり、今回は演奏中のパートが光るような仕組みにしたのですが、これに結構手間取りました。演奏中のパートを確認しながら、GIMPでせっせと画面を作る――こうしてパート表示画面だけで40枚弱。さらにクロマキーに挑戦したりなんだかんだで、3日ほどかかってしまいました。
また、Musescore2で移行ついでに、楽譜を手直ししていたという理由もあります。
ということで、紹介記事は以上です。製作からここまでに、足掛け9ヶ月もかけてしまいました。
次回何を作るかは未定ですが、予定は未定なのでその内何かを作ると思います(作るとは言ってない)。
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