
お腹が満たされたところで、久留里駅に戻ります。


小さな木造駅舎の中は、旧型気動車の写真が数多く貼られていました。『思い出&メッセージボード』が埋められていることからもわかる通り、沿線の人たちが久留里線を大事にしている様子がうかがえます。鉄道は地元の人が使って初めてその価値があります。

駅構内に入ると、列車も来ていないのにホームに人がうろちょろ。

真昼間ということもあって、構内踏切での撮影会はピークに達していました。普段は無人の構内踏切ですが、この日は角にスカイブルーの服を着た警備員(?)が立ち、往来を監視していました。中には警備員につかまって注意される人も…………

[種別:普通 久留里線 936D 久留里13:45→木更津14:26]
《木更津14:26着》
キハ37+キハ38(多分)の組み合わせで木更津に着いた936Dは、そのまま車庫に向かって引き揚げます。
いよいよ、キハ30の2連がお出ましです。

何も言わなければ国鉄の風景にしか見えません。

ドアが開くなり、さっそく車内外にカメラ持ちの人の姿が増えます。

切妻同士なので接続部もこの通りすっきり。さらに国鉄らしさが……


キハ30-62とキハ30-100。3両の中では最古参の62と、キハ30ラストナンバーの100が手を組みました。

駅舎自体も割と古びているので、電光掲示板だけが時代錯誤のような気がしてきます。
予想通り、先頭にはカメラ族がわんさか。

人が多いので、なかなかシャッターチャンスがつかめません。これはまだましな方ですが、側面に人がかぶってます。

2分ほど粘った結果、やっと障害なしに撮れました。
外観の撮影をした後は、車内を見ていきます。


この表示も12月1日まで。製造プレートが剥がされていました。


上がキハ30-62、下がキハ30-100の車内。発車前なのに、ラッシュ並の混雑を示しています。
それでも、先程の二往復目の行き(929D)に乗った時より空いてる、と思った自分が怖い……

窓の外には、放置プレイ中のキハ37がいます。

首都圏ではよく見るこの路線図。路線ではなく、運転する系統で分かれているのが特徴です。
キハ30の車内で見かけたのは、千葉地区のみをピックアップした珍しいもの。

なんともレトロな押しボタン。

それでは、キハ30に乗って、三往復目に出発進行!
[種別:普通 久留里線 937D 木更津14:50→上総亀山15:57]
《木更津14:50発》

一往復目は曇りに雨、二往復目もそこまで天気が良くありませんでしたが、三往復目は雲一つない秋晴れ。車窓を楽しむにはもってこいです。

南国(北海道と比べれば本州は大体のエリアが南国)千葉といえど、晩秋ともなれば15時あたりから太陽の位置が低くなってきます。
《東清川15:01着》

木更津から三つ目の東清川。


晩秋の日差しを受けて黄金色に輝く畑は、旅情満点。まさしくキハ30にふさわしい景色です。できれば外から撮りたいものですが……
《横田15:07着》

おなじみ、横田での待ち合わせ=撮影タイム。夕暮れに輝く旧型気動車たちに向けて、多くの人がカメラを向けます。

一往復目の時とは異なり、日陰になる構内踏切側はあまり人気がありません。
《横田15:10発》

馬来田~下郡間は、久留里線で最も旅情のある区間です。線路脇に民家の姿はほとんどなく、代わりに黄金色の田んぼが脇を固めます。ローカル線の見本となる光景です。

このあたりから、太陽が怪しくなってきました。待って! まだ日が暮れるには早いって! せめて上総亀山に着くまでは!
《下郡15:21発》

下郡付近では列車のほぼ真横から日が当たり、進行方向右側の車窓は『光色』ともいえる、ほとばしる輝きに満ちていました。
《久留里15:35着》

「秋の日はつるべ落とし」という言葉を体現するがごとく、太陽はわずか一時間の間にだいぶ落ち、既に薄暗い影を作っていました。

おそらく日の当たる時間では最後の交換となる、940Dとの列車交換。

丁度キハ30に夕日が当たっていて、人気はこちらに集中していました。

車両自体の希少性からいうと、100両製造されたキハ30よりも5両しか作られなかったキハ37や8両しか作られなかったキハ38の方が貴重なのですが、ご覧の通り940Dのキハ37は見向きもされません。キハ30が国鉄色なのが大きいのでしょう。
最近は一編成だけ国鉄色に戻されて人気が出るケースもありますが、その色をまとっていなくても車両は同じなのに、なぜかそれしか注目されないケース(しなの鉄道の169系(S52編成が湘南色)とか北陸の475系(A16編成[廃車]とA19編成)とか)が多々見られます。同じ車両なんだから、そっちも注目してあげて……
《久留里15:39発》

ここからは運転席の後ろにかぶりついて、先頭の景色を堪能することにします。この区間で前面にかぶりつくのは今日初めてです。この先にトンネルがある関係で、まだ日が低かった一往復目はカーテン締切。二往復目は、乗った時点で場所を取られていたからです。
以下、道中の風景をお楽しみください。

久留里~平山間で下り勾配に差し掛かるキハ30。

晩秋の日差しの中を進みます。

線路わきの撮影家が集います。残念ながら、堀割(V字に掘って谷の部分に線路を通した区間)の斜面に入り込んでいる人も見受けられました。乗っている側は冷や冷やさせられます。

山中を進むのも、この区間ならでは。

煉瓦のトンネルをくぐります。

色づいた木々がキハ30を出迎えます。

道路を潜り抜けて、再びトンネルへ。

そろそろ終点が近づいてきました。

人家が見えてくるようになれば、上総亀山はもうそこです。
《上総亀山15:57着》

日が暮れる前に、文字通り滑り込みで上総亀山に到着。本日3回目です。ちなみに、木更津~上総亀山は650円なので、2往復した時点でホリデーパス(2300円)の元を取っています。

既に駅より西側は宵の闇に包まれています。空の青と夕日の橙のちょうど真ん中に、キハ30の国鉄色がありました。

夕焼けの染まるキハ30を撮ろうと、まるで蟻のように群がります。


側面2枚。
15分の停車の中で乗客が入れ替わることはほとんどなく、キハ30は942Dとして木更津へと引き返します。
[種別:普通 久留里線 942D 上総亀山16:12→木更津17:23]
《上総亀山16:12発》
行きもそれなりに混んでいましたが、帰りはもっとすごい混雑になりました。行きの時点で上総亀山まで立ち客が出ていたのが、その乗客をそのままにハイキングから戻ってきたグループがぞろぞろと乗車してきました。また、沿線でカメラを握っていた人たちも夕暮れで引き揚げ始め、上総松丘や平山のような山間の駅でさえ数十人単位で乗り込んできました。

《久留里16:31着》
久留里線の交換駅では、タブレット時代の名残で、上り列車が先に到着するようになっています。その合間を使って、下り列車の来る前に編成を撮っておきます。既に太陽は地平線に近づいていました。

ほどなく939Dが到着。夜が近づく中、それでも撮影は止みません。警備員の方、本当にお疲れ様でした。

キハ30だから許されるローアングル。女子高生とかに同じことをしたら、即刻逮捕ものです。
一つだけ言っておくと、擬人化には興味ないです。

キハ30と久留里駅の組み合わせも、見るのはこれで最後です。北海道に戻ったら、車両の置き換えまで二度と来れません。北海道から気軽に行けるのなら話は別ですが……
《久留里16:34発》
《横田16:59着》

5時の鐘が鳴る前に空は真っ暗になってしまいました。西の方にわずかに光が残る程度です。

通常なら3分から4分のところ、942Dは7分の大停車。構内踏切を渡って、反対側からも撮影します。

17時4分に対向列車941Dが到着。ほのかなグラデーションを描く空の下、キハ30とキハ37が肩を並べます。
《横田17:06発》
《木更津17:23着》

木更津に着いた時には、完全に真っ暗になっていました。まだ5時半にもなってないのに。

人がいたときには存在が見えなくなっていたロングシートが一瞬姿を現します。943Dとして上総亀山へと向かうときには、また埋まっているでしょうけど。

夜になっても、キハ30に向けられるカメラの数は減りません。減るどころか、増えているような気さえします。

暗闇の機関庫。もう一両のキハ30、キハ30-98が休んでいます。これが平日ならばキハ30がさらに増結され、キハ30×3というとんでもない編成が出来上がってたことでしょう。(※その後実現しました)

名残惜しいですが、予定の都合上、これで久留里線の旧型気動車とはお別れです。
さようなら、キハ30。さようなら、キハ37。さようなら、キハ38。

最後にキハ30が発車するのを見送ってから、私は209系の千葉行きで東京方面に戻ったのでした。

お わ り
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