「堺」 アイデンティティーを築く仕掛け
キャリア・デザイン Ⅱ ユネスコ活動 アイデンティティーの仕掛け Y氏への手紙
前田 秀一 プロフィール
はじめに
「西行の和歌に於ける、宗祇の連歌に於ける、雪舟の絵に於ける、利休が茶に於ける其の貫道する物は一なり。」
松尾芭蕉は、貞享4年(1687)10月から翌年4月にかけて,伊良湖崎,伊勢,伊賀上野,大和,吉野,須磨,明石へ旅し、その道中で綴った3番目の紀行『笈の小文』の冒頭に有名な風雅論を書き記しております。
和歌の道での西行の業績、連歌の道での宗祇の業績、絵画の道での雪舟の業績、茶の道での利休の業績、時代の変化とともにそれぞれに携わった道は別々だが、そのいずれも貫く「風雅の誠」は同一であり「不易」である。
一方、俳句論をまとめた書物『去来抄』では、「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」と述べ、「芸道」の生業において「不易流行」は価値を同じくし、時代の変化に沿った新しさを追い求めないと陳腐でつまらないと注意を喚起しました。
今、世の中は、久しく慣れ親しんだ「IT(パソコン)」の時代から、人知(知識量、論理思考など)を超えた「AI(人工知能)」の時代へと日常生活環境が変化しつつあり、「人間」として失敗を通して学ぶ価値創造のあり方が問われてきております(*)。 *:引用資料:日本経済新聞2023年8月7日号(Top)岩盤教育「正解主義、AI時代に通じず」
「時代の流れに左右されず、生きること、自分が自分であり続けるために何が大切なのか」、価値意識のあり方を先達の教えに学んでおります。
リスキリング
5月中旬(2023年)、主宰するHP&ブログ「堺から日本へ、世界へ! 堺の魅力の再発見・再生・創造・発信」に関心をお持ちいただいた京都芸術大学大学院芸術研究科芸術環境専攻学際デザイン研究領域の学生さんから、お話しをお聞きしたいとメールを受信しました。
関心の要点は、以下堺の歴史・文化および現代に至る広く多様な内容でした。
①堺の名称に由来、方違神社および三国丘周辺の歴史
②堺と海、川の歴史、旧市街地から仁徳陵周辺エリアに関する情報
③堺の風土
④堺で生活する人々の課題
お会いする日時、場所などご相談の中で、お申し入れいただいたご本人は東京在住の方で、ほかにそれぞれに所属企業を別々にされる研究仲間5名が居られ「リスキリング」という意識を持った社会人大学院生であることが分かりました。
私の発信に関心をお持ちいただいたことは大変光栄なことであり、退職後かれこれ20年に渡り真剣に取り組んできた市民活動の成果をご説明するによい機会と受け止め万全を期しました。
7月1日(土)午後、堺の歴史・文化の原典である堺市博物館で待ち合せ、玄関ホール脇の見晴らしの良い「休憩コーナー」をお借りして5時まで目いっぱいの交換をしました。
説明する立場にある私ではありましたが、外部からみた「堺」の見え方を教えられ、好奇心にまかせて追い続けた「堺」の魅力の素晴らしさに確信を持つことができました。
学びの世代➡社会人(企業人)世代➡自由人(退職後生活)世代という経過の中で、自由人として貴重な20数年間にわたる活動のあり方を振り帰る機会に恵まれ、改めて「キャリア・デザイン」という切り口で自分自身を再評価することが出来たことはありがたく感謝しております。
キャリア・デザイン
1.市民活動 「堺なんや衆」設立 堺の魅力の再発見・再生・発信
市民活動団体 堺なんや衆 堺の魅力の再発見・再生・発信 (stars.ne.jp)
2000年7月末(誕生月の月末)をもってDIC株式会社(本社・企画開発本部勤務)を退職し、13年間住んでいた東京から、終の棲家「堺」に帰郷しました。
当時、堺市では、「政令指定都市」への昇格を目指して俄かに「まちおこし」機運が盛り上がり、その準備段階として市民懇話会(主催:堺市)が公募(日当1,000円)され応募出席しました。
懇話会の席上では、「堺」と言えば旧環濠市街地の意識が過剰で、その領域に住む住民(特に、旧家に関わりのある人々)の自慢話が飛び交い、その話題に終始する始末でした。
永年東京に住み外から我がまち「堺」を見つめ、学校教育現場における「O-157食中毒事件」や汚染ワースト・リバー「大和川」の報道が連日流れ不衛生な地方都市としてのイメージに恥ずかしさを偲んでいた私にとっては、「堺の住民」として自慢話に終始する人々のモラルに失望を感じました。
挙句の果て、3ヶ月後、プロジェクトの終了に際し報告書の作成の段に至って事態の収拾がならず、行政担当(主催事務局)は、「成果報告書」が纏まらないことを理由にこのプロジェクトは打ち切りとなり解散する破目になりました。
参加者の中の有志(堺市および周辺都市住民)が集まって「知っているつもりでも知らないことの多い堺の歴史と文化の再発見、再生、創造、情報発信」を目指して市民活動に取り組みました。
平成26年(2014)7月26日、「堺市市制記念日」の席で、成果を上げた市民活動団体として表彰を受けました。しかし、表彰理由としての堺市の評価は、文化活動に対する評価ではなく、福祉向上(高齢者の「生きがいづくり」)の評価であったことに失望しました。
堺市において、文化活動に関する価値意識のあり方に疑問を持ち、改めて思い知らされました。
参加者の中には「表彰」されたことに満足し、NPO法人活動としての継続の意見が出ましたが、私は目指す方向が違うことを理由に退会しました。
2.「堺」 アイデンティティーを築く仕掛け 活動のステップ・アップ
SDGs 堺から日本へ世界へ! 堺の魅力の再発見・再生・創造・発信 (goo.ne.jp)
ブログ コンテンツ目次 (goo.ne.jp)
心の中に生きている本-自分探し (goo.ne.jp)
「堺から日本へ、世界へ!」の視点に立ち、「堺」の歴史および文化の再発見・再生・創造に取り組み魅力情報の発信を目指し、多様な活動ステージへステップ・アップしました。
◆「茶の湯」の文化 キーワード:再発見 再生 発信 堺なんや衆 堺衆文化の会
世界の茶の文化セミナー 大阪府立大学 一期一会 堺発信「茶(CHA)の心と文化」企画提案 (stars.ne.jp)
①堺発信「茶(CHA)の心と文化」
②日本と中国 茶文化の比較
③古今伝授をめぐって
④お茶のおもてなし「一期一会」席
十六世紀 茶の湯におけるキリシタン受容の構図(stars.ne.jp)
①表-1三好政権下『天王寺屋會記』に記された武将の記録
②表-2織田・豊臣政権下『天王寺屋會記』に記された武将の記録
③表-3五畿内におけるキリシタンの受容
『山上宗二記』 茶湯者の覚悟十體「濃茶呑ヤウ」(stars.ne.jp)
①表-1天文年間後期 同じ茶会で御茶(茶)と薄茶をもてなした場合の茶の種類
②表-2天正年間後期 『茶会記』に見るコイ茶(スイ茶)もてなしの事例(抜粋)
③表-3天正年間後期 同一茶会でのコイ茶とウス茶もてなしの事例
◆「すずめ踊り」伝説の発見・普及活動 キーワード:再発見 創造 発信 堺すずめ踊り協賛会
伝説の発見と堺の魅力の創造 「堺すずめ踊り」 人が輝き、地域を元気に!(stars.ne.jp)
①仙台城主・伊達政宗公と堺の茶人・今井宗薫交流経緯
②仙台城主・伊達政宗公から堺の茶人・今井宗薫宛ての書状(解読)
③千利休切腹直前の動向pdf版
「すずめ踊り」堺の石工活躍の背景 堺まつり 仙台青葉まつり(stars.ne.jp)
第7回ゆめづくりまちづくり賞「奨励賞」受賞(安藤忠雄審査委員長) 記念植樹(stars.ne.jp)
堺☆仙台 絆の物語
仙臺すずめ踊り復活 河北新報 2023年9月14日
“すずめ踊り” 黒田家四百年の伝承
今を生きる友好“象”徴の物語
″すずめ踊り″を絆とした地域コミュニティづくり
コロナ禍の前に、育って来た個々の祭連(活動単位、14グループ)の自主性を活かした活動へ切り替え、「堺すずめ踊り協賛会」は2020年2月をもって解散しました。
経過およびその後対策については以下添付資料をご参照ください。
①「堺・仙台文化交流」年表(伊達政宗・今井宗薫手紙の交換経緯)
②「堺すずめ踊り」普及活動10年の歩み
③「堺すずめ踊り協賛会」活動10年のコンセプト
④「堺すずめ踊り名称使用権契約書」
◆行基事績の再評価 キーワード:再発見 再生 発信 堺行基の会
歴史を未来へ! 行基活躍の時代背景と事績 (stars.ne.jp)
現代に生きる僧・行基の伝承・伝説 (stars.ne.jp)
SDGsモデルとしての行基事績の再評価(stars.ne.jp)
①史跡「神崎船息」に関する情報
◆ユネスコ活動 キーワード:再発見 再生 創造 発信 堺ユネスコ協会
アイデンティティーの仕掛けとしての歴史・文化遺産活動 堺の歴史遺産を例として (stars.ne.jp)
世界から「堺」へ、日本へ! その出会いと歴史(stars.ne.jp)
①畿内地方における大型古墳編年表
②世界から堺へ、日本へ! その出会いの歴史年表
③日本と世界が出会うまち・堺(図)
④「禅」に育まれた堺の文化-臨済宗・曹洞宗・黄檗宗
⑤堺の誇り「伝統産業」発展経緯
⑥幕末・明治維新における日本の歴史的な背景と「出来事」
まち歩き 堺の「誇り」の再発見・実地見聞 (stars.ne.jp)
堺の誇り「伝統産業」 堺打ち刃物、注染・和晒、線香、手すき昆布、手描き鯉幟、和菓子、自転車部品、緞通
2011年以来理事および監事として役割を果たしてきました。体制の若返りを目指して2023年度定期総会(5月)をもって退会しました。
◆堺の光もの 「堺」とはへの回答 キーワード:再発見 再生 発信 堺から日本へ、世界へ!
誇りを知る 1600年の歴史と文化に出会う「堺」!(stars.ne.jp)
◆アカシア俳句会 「句報」編集人 キーワード:再発見 再生 大阪府立三国丘高等学校「三丘七期会」
おわりに
「茶は渇(かつ)を止むるに非ず、飲むにあらず、喫するなり」 (小川流煎茶流祖・小川可進1786~1855、『漱石と煎茶』54頁)
夏目漱石は、著書『草枕』に「濃く甘く、湯加減に出た、重い露を、舌の先へひとしずくずつ落として味わって見るのは閑人適意の韻律(*)である。普通の人は茶を飲むものと心得ているが、あれは間違いだ。下頭へぽたりと載せて、清いものが四方へ散れば咽喉へ下るべき液はほとんどない。只馥郁たる匂いが食道から胃のなかへ沁み渡るのみである。」と著し注目されました。
*:閑人適意の韻律=ひまな人間が気ままに行う風流
漱石は、前田案山子にもてなされた煎茶の中に相手への温かい思いやりと脱俗、清風の理念を感じ取り、決して技巧を露骨に表に出すことなく、ただ相手に美しく感じ覚えさせる煎茶の精神に大きく感化され「知、情、意」の三つの表現のあり方に意を注ぎました。
「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。・・・」と諳んじ、立ち止まって意味を深く考えず文章の流れに沿って韻律を味わえばよい。
漱石はそのように読まれる著書『草枕』が「文学」として受け取られないことをよく承知していました。 『漱石と煎茶』 俳句的小説『草枕』の背景 - 堺から日本へ! 世界へ! (goo.ne.jp)
DIC株式会社を退職後、13年間の在京生活を引き払い終の棲家「堺」へ帰郷した時、先ず、これから先の自分の「ありよう」を見出すために、母の往生に際してご縁をいただいた恵日山真光寺へ聴聞に通いました。
「あるがまま」、自分へのこだわりと他者への偏見を捨て、全てを受容してみる。汚いものも、弱いものも、他者ではなく自分の内にこそ存在するのだ、と心静かに自分を見つめてみることを学びました。
自分と向き合う中でのキャリア・デザイン、活動を共にした同志の皆様のご支援のお陰をもちまして果たすことができた充実感は、何ものにも代え難く感謝に堪えません。
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