「読む会」だより(23年11月用)文責IZ
(10月の議論など)
10月の読む会は17日に開かれました。久しぶりの参加者や新しい参加者の方が来られたので、簡単な自己紹介から始めました。チューターは、マルクスは第1章第3節以外には難しいところはないと言っているが、やはり一人で読もうとしても『資本論』は難しい。多くの場合、結論が先に書かれてから説明が後に続いている。分からないところが出てきたら、そこであきらめないで少し後まで読み続けるというのがコツのように思っている、と話しました。
(9月の議論)の部分では、労働手段(機械)のもつ生産力は、単なる自然力の利用ではなく、“過去の労働の再利用”だという観点が重要だろうと、チューターは強調しました。またここでは、戦後のハイパーインフレと言われるが、45年から49年までのインフレ率は約70倍であって、ハイパーと言えるかどうかという議論もある、という指摘が出ました。
(説明)の部分では、まず、婦人労働と児童労働の導入によって労働力の価値が低下するのは、機械の導入によって労働力の育成費が減るからだということか、という質問がありました。チューターはそう考えていると述べましたが、これに対して参加者から、労働者家族の全員が働くようになったからということでよいのではないか、という意見が出されました。鶏が先か卵が先か、といったような議論で、あまり対立する意見ではないように思われます。また、当時は紡績などの軽工業が主流だったことも関係しているのではないか、という意見も出ました。
続いて、現在の労働現場では、単なる精神労働というよりも“感情労働”と称される対人支援が問題となっており、そこでは独特な消耗感がある、という意見が出されました。これに対しては、複数の参加者から引きこもりの問題など同様の意見が出されました。チューターは初耳なので少し調べてみたいと述べました。
もっとも議論となったのは、「人間(労働者)が機械(労働手段)を使うのではなくて、人間が機械に使われるという事態になるのは、道具が機械になった(労働手段の革命が起こった)からではないということです。そうではなくて、そうした転倒が起こるのは、この社会においては労働過程が価値増殖過程に結び付けられている、あるいは生活手段を生み出す労働過程が、資本の価値増殖の手段として意義を持つ(流通を媒介にして)からです」というたよりでの指摘に関連して、もっぱら現在発展し始めているAIがもたらす影響についてでした。
まずは、AIによって多くの労働者の職が奪われるような現代資本主義に対して資本論はそれにどう答えようとしているのか、という質問が出されました。チューターは、現代の資本主義について資本論は直接に答えているわけではないし、できるわけのものでもない。しかし第1章商品のところで語られているように、資本論では労働が商品の姿をとるという資本主義的な生産における根本的な矛盾が指摘されており、そうした矛盾の発展として現代の資本主義を理解する手引きになるだろう、と答えました。
AIについては、多くの意見が出ました。一方の意見としては、AIといっても全ての労働がなくなるわけではないし、労働者がいなくなってしまえば剰余価値もなくなるのであってそうしたことは資本主義の本質としてあり得ない、といったものでした。他方の意見としては、今後予想以上に利用部門が広がって、労働の在り方を根本的に変えてしまうのではないか、といったものでした。また、産業革命以後の歴史を振り返ると資本主義はインフレ、デフレや戦争などを繰り返しながら共産主義の方向に向かっているのではないか、といった意見も出ました。AIが今後とも注目していくべき問題であるこということでは意見は一致したと思います。
(なお、現代の資本主義の特徴の一つである管理通貨制度についても、第3章の貨幣または商品流通や第3巻の利子生み資本のところなどが参考になりますが、言い忘れていました。)
今月の「ゼロからの資本論」を読む、のレジュメは当日配布とのことです。