枯淡

ざっくりと素肌にカシミアセーターを着るような旅でおわりにしたい/里

足立尚彦 第七歌集 ご機嫌な日だ

2024-03-23 15:27:28 | 短歌

ご機嫌な日だ   足立尚彦

                               (株)ミューズ・コーポレーション

攻撃をにおわせている国のありこれも株価の操作と思う

三月のあたたかい日は猫日和このいっぴきの名を知らずとも

柏原和男は俳人、昭和三十八年、釜ヶ崎の路上で刺殺された(享年三十二歳)

誰ひとり読む人のなき柏原和男のために在る釜ヶ崎

みんなみんな消えてしまってさわやかだ橋の上から眺める朝陽

フルートは春のひかりに照りやすく君のあの日の息欲すらん

病床に君は笑まいていたりけり余命聞かされし我に真向かい

チューリップの茎伸びて葉はくねくねと酔っているのだ 春はあけぼの

命日はご機嫌な日だもう二度と君が死なないことを知るから

赤い屋根にはあかい秋 青い屋根にはあおい秋 少し寒いね

冬の谷底にひかりは流れおりあの恋文を希釈しながら

 

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かってに好きな歌をあげさせてもらいました。『ご機嫌な日だ』はウエディングドレスをお召しになった奥様のような歌集だなぁとその装丁とともに見惚れてしまいました。天国で喜んでいらっしゃいますよ きっと。

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