前日に生まれたTくんは娘と一日違いだ。
私がガンだとわかって、それを記録するために始めたこの日記の第一日目は
4年前の娘の25回目の誕生日だった。
あの時、私たちは日本とシンガポールで離れて暮らしていた。
この四年の間に起こった様々な嬉しいことや悲しいことが
私や娘の今を作っている。
娘はこの四年で同棲から結婚、妊娠、出産を経験。
私は、娘を産んだ時のドタバタ劇を最近よく思い出す。
未熟で無知な当時の私。
今のように情報も豊かではなく
子育てを楽しむどころじゃなかった。
必死
午後、だんなさんと娘のいる病院に行った。
途中ケーキ屋さんに寄って(本当はバースデーケーキを買いたかったのだが)フルーツゼリーを探した。
抹茶や珈琲ゼリーしかなくがっかり。
ま、いっかと思ってたら
スーパーでフルーツゼリーを買うと
だんなさんが言い出した。
(え、珈琲ゼリーでもいいじゃんと思ったが)
娘のことになると甘い。
病室は個室でホテルのように広くて快適。
昼間はTくんと同室。夜は離れられるのでママはゆっくり休める。
赤ちゃんは一日経つと顔が変わる。
泣いたり眠ったり、あくびしたりくしゃみしたり。
人間なんだなぁと変なこと考える。
ちょっと抱かせてもらった。
小さくて細いけど、ずっしり。
緊張した。
自分の手がガサガサで
彼の柔らかな皮膚を傷つけてしまいそうで恐る恐る抱っこした。
数十年ぶりに赤ちゃんを抱っこした。
我が子の時とは違う感情だった。
Tくんは可愛い。
でも、Tくんを抱っこしている娘が
私にはとても神々しく見えて
愛おしくて泣きそうになったのだ。
ようやく子離れできたのかもしれない。
心ここにあらずだったのか
面会表の患者名欄に娘の名前を旧姓で書くという失態。
病院を出て
だんなさんと感想を言いながら
一駅分歩いた。
いろんなことを考えているせいか
大事にしているグラタン皿を落として
木っ端微塵。
はぁ。
明日はテニスで発散だ。
またTくんの顔を見に行ってしまいそう。
明日は粗相のないようにしたい。
