以前から一緒に行きたいねと話していたことが実現できただけで夢のようだった。
病気を乗り越えて(まだ経過観察段階だけど)自分が行きたいところに行きたい人と出かけられる幸せを噛みしめる。
つい10日前、親しい友人を亡くし、悲しみに常に自分が包まれていたこともあって
今回の尾瀬旅行はゆっくりそのことを自分の胸に仕舞い込むいい機会でもあった。
バスが尾瀬戸倉に着いたあと、鳩待峠行きの午前5時発の始発バスに乗り、鳩待峠から山の鼻まで歩いた。
雨で濡れた木道や石に足を取られ必死に歩いた。
山の鼻から至仏山に登ることを決めた。
至仏山は日本百名山の一つで
標高が2,228m。初心者でも楽しめるとあったのでなんとかなるかなと登り始めたが
30分も経たないうちに
「これはやばいかもしれない」という不安でいっぱいになった。
大きな岩がゴロゴロし、空模様も不安定。小雨が降ったり、霧で白い世界になったりして泣きそうだった。果てしなく続く岩、岩、岩。
全身を使い、よじ登ったり滑ったりぶつけたりしながら必死で登った。
もうすぐ山頂か?と思ってもそこからまだまだ先があり、本当に帰れるのだろうかと泣きそうだった。それでも登るしかなかった。
何組にも追い抜かされ、予定していた時間の2倍かかって山頂へ。
山頂にトイレは無く、下りのことを考えると登頂した達成感に浸ることもできず、おにぎり一個をようやく食べ、友人が持ってきた白湯で少し元気を取り戻し、下り始めた。
登りと違う下りのルートは、途中、小至仏山頂を通らねばならず、下りなのに登るという絶望感でいっぱいになりながら一歩一歩進んだ。
雨で濡れた木道は厄介でストックも滑るし
恐る恐る歩き進む。歩いても歩いても着かない不安。
初心者には向いてない山なんじゃないかな。
どんどん後ろから追い抜かされながら
当初の予定よりはるかに遅れて鳩待峠に辿り着いた。息も絶え絶え、生きて帰れてよかったと、2人で心から安堵した。
山を甘く見ていたわけではないけれど
初心者の自分にはとてつもなくキツくて難関の山だった。
鳩待峠のロッジで食べた山菜そばの味は格別だった。
予定を変更して急遽泊めてもらえることになった宿「玉泉」さん。
そこの若い女将さんは、くたびれ果てた私たちに寄り添い心のこもった対応をしてくれた。
人として、相手の立場に立って物事を考え寄り添えること、彼女はそれがさりげなくできるすごい人だった。女将さんを見習いたい。気持ちを配れる人間になりたいと思った。
温泉に浸かり、夜は同期といろんな話に花が咲いた。心の中に溜まったものを吐き出すことができた。
翌日は「荷物預けて行きませんか?」というお言葉に甘え、リュックを軽くして
尾瀬ヶ原を散策。
余裕を持ったスケジュールで
尾瀬の景色を楽しんだ。
とてもいいお天気で心癒された。
ときおり吹く風は心地よく、静かでほんとうに楽しい時間だった。
二日間でおおよそ50,000歩。
自分、よくぞここまで頑張ったな。
自画自賛。
そしてよくぞあの山に登ったな。
優しい女将さんに別れを告げ
尾瀬をあとにした。
全身筋肉痛だけど
予想を超えた経験ができた。
これも同期Kちゃんのおかげだ。
誘ってくれてありがとう。
そしてずっと支えてきてくれて感謝感謝。
これからもずっとよろしく。