母は台所をやりながら たまーに
鼻歌を歌いました
♪これこれ杉の子起きなさい〜♪
ここだけを何度か繰り返して歌うのでした
台所の壁の隅っこに兄弟の誰かが
鉛筆で描いた落書き
密かに気に入っていました
結局誰が描いたのか知らないまま
家は取り壊されてしまいました
いちごの空き容器で飼っていたヤドカリは
何度か脱走をしました
仏壇と壁のすき間にいる所を発見されるのが
常でした
不思議なのは脱走途中にある階段を
あの子はどうやって登っていったのだろう…
梅雨の時期に実をつけるその木を
ユスラウメと家族は言っていました
雨の日に友だちと収穫した思い出を
ミニトマトを食べて思い出しています
味が似ていたのです