流行り物に正直で家庭的な長姉は
新御三家の中では野口五郎が好きだったので
誕生日に「武蔵野詩人」というタイトルの
シングル盤を私からプレゼントしました
流行り物オンチで勉学ひとすじの次姉は
万葉学者犬養孝先生のラジオ番組での語りがツボで
欠かさずに彼のラジオ講座を聴いていました
流行り物に正直で家庭的な長姉は
新御三家の中では野口五郎が好きだったので
誕生日に「武蔵野詩人」というタイトルの
シングル盤を私からプレゼントしました
流行り物オンチで勉学ひとすじの次姉は
万葉学者犬養孝先生のラジオ番組での語りがツボで
欠かさずに彼のラジオ講座を聴いていました
おしゃれでマイペースな長兄は
オードリーヘップバーンの大きなポスターを
部屋の壁に貼っていました
勤勉でどこか不器用な次兄は
ラジオから流れてくる天地真理の歌声に
聞き入っていました
おっちょこちょいでぼんやりの三男(私です)は
研ナオコの出るテレビを見て喜んでいました
大学生の時 生家からひとつ先の駅近くに
小さな絵本屋さんができました
一時期はよく通ったものです
店主に絵本の話を聞くのが楽しみでした
ある日小さな店内にはネギの匂いが漂っていました
(店主さん 昼食はざる蕎麦でしたか)
おかしみを噛みしめながら 店主の絵本話を聞いていました
私はセンダックの絵本を買って帰りました
地方から来た大学時代のその友人は
安アパートで苦学生活を送り
学生生活の後も数年間 同じアパートに住み続けました
ある日その近所で会った私たちは 駅前のドトールへ
一緒に歩きました
裏道の角を曲がった時でした
「俺さー この角を曲がるといつも頭の中にある曲が
流れてくるんだよね」と友人
「へー 何の曲?」
「中村晃子の虹色の湖…」
理由は本人にもわからないそうです
父の場所には座椅子とタバコと灰皿が
いつもありましたが いつの頃からか
茶色い液体の入った瓶が加わりました
父が育てている「紅茶キノコ」でした
家族の誰も飲みませんでした
多分父も飲まなかったと思います
紅茶キノコは知らない間に
父の場所からいなくなっていました