『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 序章 》 〈 第十六話 〉 決戦前夜

2019年02月01日 14時20分01秒 | 小説

 


   《 キャラクター&キャスト 》

東京光玉の聖者 ( 黒須 光明 ) 高橋  秀〇

聖者補佐 ( 土門 剣三郎 ) 渡〇  謙
聖者補佐 ( 土門 ミツエ ) 松坂  慶〇
     ( 土門  拳三 ) 妻夫木  〇
     ( 土門 かすみ ) 成瀬  璃〇

マーフィー・ラッセル / ヘイデン・クリステ〇セン
エミリー・マーティン / ベッ〇―
ミランダ・マーティン / アヤカ・ウィルソ〇
豆芝 : 犬四郎 /  加藤 〇史郎
聖者補佐 ( 川島 章二 / 二十七才 ) 草薙 〇



      《 推奨BGM 》 




    二〇XX年十二月十八日(木)16:30  
      カウントダウン ( 86:30 )


  ・・・ はぶるる ・・・ ビュルルるる~~ ・・・
・・・・耳がプロペラ~~ ・・・ 遠心分離機い~~・・・
・・ ヒュルヒュルルル ~・・ ゴヒュウ ~~ ・・・ キキキーーッ!

・・ あうう~? 止まった。 しかし、随分回ったなあ。 いやあ~参った。
   まだ、くらくらする。 ののっ、脳みそが偏った。

 あっ、そうだチカチュウ、お前まだ石を持ったままだな。

その両手の石は僕のポケットに入れて置きなさい。もう使わないだろ、きっとね。
ついでに君もポケットに入って、顔だけ出していればいいよ、チカチュウ!

なはは、かわいいな君は ・・・ チ~カ ・・・ ぷッ、ピカチュウみたいだ。
それに僕カンガルーの気分だ。 あと、ドラエモン。


   《 お~い、もし。わしを忘れておるぞぉ。》 へッ?


     うわあ、龍の円座から声ががががぁ ・・・ 
      しかも上半身を持ち上げられて ・・・

        気が変になりそうだ。


「 ああ、これは失礼を致しました。あのお、龍神様でいらっしゃいますか?
 それに、ここまでお連れ頂きましたのも、あなた様のお陰ということで?」

《 まあそうだが。あまり硬くならんでよいぞ。三日だけの付き合いじゃ。
 スミレ様からは下座の行じゃとの仰せでな。
 つまりは、おぬしの監視役ということじゃあ。

 しかし面白い組み合わせじゃのう。龍と鼠と兎か、はははは ・・・

 ところで、わしの名は ・・・ 

 そうさなあ、三 十 郎 で良いわ。椿が好きだからな。
 生まれて三十九万年、もう直ぐ四十郎だがな。まあ、宜しく頼むぞ。》 


    さ、三十郎様? しかもパクリ?  ・・・ 
    これ、映画「 椿 三十郎 」 の名場面です。 

   流石は神様、パクる部分が違いま? 
   ああ、とんだ失礼を ・・・ に、睨んでおられる ・・・・・


「 は、はい、あ、御挨拶が遅れまして、私、関口信造と申します。
 こちらこそ宜しくお願いを申し上げます。
 しかし、このままのお姿で三日で御座いますか?
 私はとても恐れ多くてなりませんが。」

《 ん~、気持ちは分かるが、おぬしはおぬしで、
 常に神に対してのお詫びと感謝の想いを強く持つということが大事じゃ。
 その行をせよということなのだよ。
 それに、スミレ様もいちいちおぬしに構ってはおられないのでな。》

「 はは、胆に命じまする。
 はあ、ど、どうりで円座が妙に暖かい訳です。
 それに、単に『 とぐろ 』 を巻いておられるだけで御座いますね。
 しかしながら我々のこの姿、
 鏡で見たらさぞかし奇妙に写るのでしょうね。」

                 チュウチュウ。

《 奇妙で滑稽なことがお好きなのが、スミレ様じゃあ!
 このトリオの絶妙なバランスは凡人には理解できんじゃろうな。》

「 そうおっしゃいますれば、そうで御座いますね。
 あっ、ところでここは土門家の居間に戻ったのですが、
 誰もおりませんねえ。
 ああ、豆芝の犬四郎が部屋に入って来ました。
 お~い、犬四郎。みんなは何処に行ったんだ?」


「 そ、そとだよ。あとはよくわからないよ。」 クウ~ン??


  プッ、相当不思議そうだ。無理もない、この姿を見ればね。
  それに知る訳がないよなあ。

  きっと、あの聖者が示したことを信じて、
  親戚、友人、知人や御近所の人を救う為に駆けずり回っているのだろう。

《 わしも、おぬしの考えた通りじゃと思う。
 暫くすれば帰って来るだろうから待っておれば良い。》

「 はい、畏まりました。」  チカチュウ!


《 では、待つ間に伝えておこう。
                 
よいか、この関東の聖者は黒須光明(くろすみつあき)と申す者でな、
既に「神の光玉」の上空に居る。「神の光玉」の中心部は皇居である。
そして、この家の場所は東京の八雲である。
ここは光玉内であるから移動することもない。

何処か近くの大きな公園その他の広場などが 「祈りの聖域」 となり、
そこに付近の者は参集して祈るということになっておる。

 ここからだと 駒沢公園 が「祈りの聖域」 に指定されておる。

ただ東京の神の光玉は、世界の要の領域になるのでな、
特別に範囲を広くして、30キロ圏 となっておる。》


「 そうで御座いますか。ところで三十郎様。
 気になるのは「神の光玉」内に於いての事で御座います。

 つまり、あの掟の三ヵ条の中に、
 相応しくない者は追放されるという件ですが、
 この光玉内で仕事場や住居を持つ者の中にも、
 相応しくない者など何百万人も居ると思うのですが、
 いったいどうやって三十キロ圏外に追放するというのでしょう?」 

                          チュウ?
                    
《 それはな、「 流星火矢(りゅうせいびや) 」 を使うのじゃ。
 この神裁きの三日間では、
 光玉内での善魂悪魂を選り分けるのは神々でも厄介でな。

そりゃあ、魂の光具合で区別は付くが、
物理的に悪魂人間だけ外へ出て行けというのは、土台無理な話だ。

 そこで、主神様は流星火矢使用の決裁を成された。
 その火矢の特性は、人の肉体に外傷を付けない事にある。

一瞬で脳幹の神経を貫き絶命させる。痛みすら感じずに死ねる。
それは傍(かたわら)に居る者を含めての配慮であり、神の慈愛じゃ。

 但し魂が肉体を離脱し後は光玉から追放され、憑依した霊と共に
 三日間激痛を味わうことになる。

それから動物や昆虫はペットを含めて、
聖域である光玉から外に追い出すことになっている。

 地震の時と同じように電磁波その他の粒子を使ってじゃ。
 ただ、檻や室内にいるものはしょうがないがな。》


「 はああ、お、驚きました。
 そのような細やかな御配慮が成されていたのですね。
 考えただけでも恐ろしいですが、
 その流星火矢はいつ放たれるのでしょう?」


《 それは、明日の午前七時丁度にだ。
                                           
 七時に光玉の門が閉ざされたその直後、
 光玉上空から火矢を番えた弓を持つ
 数千の裁きの天使達 が一斉に火矢を放つ。

一度に十の矢を番(つが)えて射る事が可能だ。

その火矢が一斉に放たれる様は、
まるで流星群のように見えることから、流星火矢と名付けられたのじゃ。
まあ火と言っても肉眼では光のシャワーにしか見えんだろうがな。

 明日からの三日間、
 空は厚い雲で覆われ太陽を拝む事は出来ないから、 
 火矢の光は鮮やかに見えるであろう。》

「 えっ、肉眼でも見えるのですか?」 チ~カ?

《 見える。そればかりか 祈りの光の帯もじゃ。
 おぬしが霊眼を以って見えるものが、常人にも多少は見えるようになる。

人間は他人と比べ愕然とし、誰にも頭が上がらなくなるであろう。
つまりは魂の光を実感させ、
己が神の子であることを自覚させることが目的なのじゃ。

 又、唯物主義の人間に、
 神の存在を分からせる為の強硬手段という意味もある。

それと火矢を使うのは随時じゃ。
その為、裁きの天使達は人間には分からぬよう、
常に光玉内を監視するという役目を帯びているのじゃ。》

「 そ、それは、なんと恐ろしい事でしょう。
 つまり、それらは主神様が封印を解かれた力なのですね。」 チュ~ウ!

《 その通りだ。まだまだ人と神を鍛える為の仕組みが幾重にもある。
 それらは段階的に執行されてゆく。
 そこで人と神は徹底的に鍛え育てられる。

 でなければ、これから迎えようとする神と人とが一体となった、
 神十字文明を成就することは適わないのだからな。》

「 そうで御座いますか。
 そこ迄の大いなる神の愛の中で生かされて来た人類なのに、
 神を蔑ろにし恨み呪う者さえいる始末。

 そのとてつもない罪穢を、
 明日からの三日間でどれだけ真剣にお詫び出来るのか?  
 私達には、祈りつつ最期まで見届ける以外にないのですね。」

《 まあ、そういうことだ。
 今のおぬしには、直接人間に関わる事は許されてはいない。
 そして、わしと、その鼠もじゃ。》  チュウチュウ!

「 ところで、もう一つ御質問を宜しいでしょうか?」

《 構わんぞ。どうせ暇じゃからな。》

「 ありがとうございます。

 え~、主神様の封印されていた力は、
 邪神にも与えるということで御座いますが、
 実際はどのような形になるので御座いましょう?」 チュウ?

《 世にも恐ろしい事になる。な~に実に簡単明瞭。
 人間の望んだ物が形になるだけのこと、
 それが正義の味方か悪魔か化け物か?

 人間の望むイメージが物質化する。

恐怖の体験、痛快な出来事、
栄光の日々に戦争の悲劇、それに伴う喜怒哀楽。
それら人間の過去の、
あらゆる感情や転生中の潜在的記憶も影響してくる。

 つまり堕落し神から離れた人間の悪い部分を炙り出し、
 再認識させた上で払拭フキハラウという、
 主神様の最終手段なのじゃ。
    
言っておくが、それは邪神軍だけでなく正神軍にも影響するのだ。

光玉内でも力でなんとか邪神軍をねじ伏せよう等と、
良からぬ邪念が過(よぎ)ることが推測出来るからのう。》

「 こっ、これは声も出ません。
 精神的に付いて行けない者も出て来るでしょうね。」

《 ふっ、なんだ、怖気づいたか? 侍が聞いて呆れるぞ!
これでは、池の中の鮒じゃ。ふなふな、鮒侍じゃ、ぶはははははーー!

いや~、龍の空飛ぶ円座花火は実に痛快じゃったのう。
 思い出すだけで笑えるわい! 

 が~はははは。

おぬしが大山様とのやり取りで、
途中からスミレ様がおぬしの口を借りて、うまい芝居を打たれて、
大山様を褒め称えられた時は、
流石は主神様の御嬢様だと感心しきりじゃったわい。

 しかし、あのスリルときたら ・・・ 
  小筒花火を銜えて ・・・ぷぷっ。》


「 あの~笑い事では御座いません。

 確かに私も感心は致しましたが、
 ああいう目に会ったのは二度目なんですよ。

 もう~~、幸い気絶は致しませんでしたが。」


《 なんじゃ二度目じゃったのか。
 聞いたか、ねずみぃ。だあ~はっははは・・・》    

   チュチュ~ウ。

「 あ、あの、もう一つ御質問が ・・・

 あの、こちらの鼠様はもしかして、
 神の化身だったりするのではないかと・・・?」

   エッ、チ~カ?

《 決まっておるじゃろう! 何だと思ったのじゃ、戯け!
 いつ気付くか見ておったが ・・・

寝惚けた事を言っておると、亀から追い抜かれるぞ。
兎は足が速いと自惚れ油断し過ぎるのが欠点じゃ。

 おお、そうじゃ、おぬしは鮒侍じゃなくて、
 居眠りこいて鼻風船を膨らます鼻風船侍じゃ。
 ふはふは、ふはは?・・・いや~、ちと長いなあ。

これでは減点の対象になるぞ、いかんなあ ・・・鼻侍?
風船兎。捻りがないぞ、ぬうう ・・・》


「 あああ~~、何と言う失態を~~。
 鼠様、もーしわけ御座いませんでした。
 ところでこちらの鼠様のお名前は何と申されるので ・・・」 

   チカチュウ!

《 あん? チカチュウで良かろう。この者も気に入っているようだしな。》

   チカチュウ!

「 しかし、それでは余りにふざけていると・・・」

《 あ、そうそう。別に内緒にする必要もないから言っておこう。
  良いなチカチュウ殿。 ぐふふふゥ ~~ 》 ・・・チチチ、チ~カ。

《 なあ、おぬし、あの神議り場におったであろう。
 それで、大黒天様からお叱りを受けた
 下級神がいたことも間近で見ていた ・・・

  恥ずかしながら、その下級神の中に我等がいたのじゃ ・・・

 わしの名はアメリカの氏神、
 マサチューセッツ州の スプリングフィールド じゃあ。

そして、こちらの鼠様はエジプトの偉大なる湖神 ナセル 殿じゃあ。

 だから、胸を張って名乗れなかったのじゃ。
 全く情けないわ。おまけに、しょぼい兎の面倒を見る羽目になるとは ・・・

  ああ、いかん。愚痴と不平不満はいかん。  
  スミレ様、申し訳ございませんでした。お許しを~。》



     《 キャラクター&キャスト 》

氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぎの妖怪 : 信造 : 作者  / 伊藤  敦〇



   二〇 X X 年十二月十八日(木) 17:10
      カウントダウン ( 85:50 )



「 ああ、じ、事情は良く分かりました。
 でもあの時、下級神の皆様は地獄界に行って一千万の魂を集めるという、
 恐ろしいお役目を頂かれたのでは?」 チ~?

《 まあ、そうなんじゃがのう。

わしら二人はスミレ様の特命を受け、急遽おぬしと合流した次第じゃ。
訳は申されなんだが、わしらは足手纏いになったのかもしれんのう。

・・・んん? いや、そうじゃそうじゃ。
その暗い発想がいかんのじゃ。

 どんな、しょぼいと思われるみ役でも、
 一つ返事で謹んで御受けし、全身全霊で遂行するが神の使命なれば、
 愚痴を言うなど言語道断とお叱りを受けるは必定。

そうじゃスミレ様はわしらの欠点を見抜き、
わざとしょぼいおぬしの元で修行をするよう仕組まれたのじゃあ。

 おお、なんと有り難い大愛なるみ意じゃ ・・・のう、鼠殿。
 おぬしも地獄での魂集めに気が向いていたところに、
 肩透かしを食らったようじゃと嘆いておっただろう。

良いか、わしらは他の神々とは一線を画し、
この兎と共に明日からの三日間、
戦いの最前線を渡り歩き、
神々の偉大なる御業と天意を我等が魂に刻み付けるのじゃ!》 

  チュウチュウ! しょぼ~い、おっしゃる通りです。ガクッ。

「 私も胆に銘じまする。
 と、ところでナセル様はなんとお呼びすればよいので ・・・?」

《 じゃから、チカチュウで良いと申しておるに分からん奴じゃ。
 それで、わしは三十郎。良いな!》 チュウ!

「 畏まりました ・・・ ところで、チカチュウ様は
 普通にお話することは禁じられているのですか?」 チ?

《 ばはははは。この鼠殿はのう、余りにおしゃべりが過ぎたのが原因で、
 過去に幾度となく失態があっての。

 きっと、それでスミレ様はおぬしに対して、
 通常の言霊はなるべく使わんようにと仰せになったのじゃろうて ・・・ 》

  あは~~、それはそれは・・・

     わんわん、わんわん。

  犬四郎が玄関に走って行った。誰か帰って来たのだろう。

 外は随分暗くなって来ている。現在時刻、午後五時を回ったところです。 ただ、私達のこの姿を彼等の守護霊が見たら、悲鳴を上げて卒倒するかも?

《 構わんじゃろう。この位で驚いていたら、
 これからの地獄の光景には耐えられんぞ。
 それと流星火矢と他の事柄は内緒にしておくのじゃ、分かったな。》

「 はい、畏まりました。」




      ( 推奨BGM )

   ペーター・チャイコフスキー作曲
   舟歌 「四季 作品37b第6曲:六月」 (リピート)
  ピアニスト 不明





   むむっ? どやどやと、何人かが部屋に入って来た。

  犬四郎は大喜びであるが、守護霊の皆さんは私達を見た途端、
  悲鳴を挙げたと思ったら直ぐ頭や体の後ろに隠れた。

   守護霊は一人に一人付くという決まりはなく、
   志願した者はなれるようですので、
   ここの住人にはかなりの人数の守護霊が付いています。

  それを他所に帰ってきた住人は、興奮して話続けている。


「 おいっ、みんな急げ。そこの棚に空のペットボトルがあるだろ。
 後、ライトと電池とメモ帳とペンを有りっ丈いるぞ。
 それと、地図がこの付近から ・・・
 川崎と横浜だったな、そのコピーを有りっ丈。

 後は、犬四郎の水とご飯を四日分位はないとな ・・・
 えーと、水の貯蔵タンクはと ・・・ 
 あっ、これくらいあれば足りるだろ。」

  拳三が言った。マーフィーは地図のコピー。エミリー姉妹は犬の世話。
  かすみは、水をタンクからペットボトルに移し替えている。
  水道は止まっているのだろうか?

メモ帳は恐らく、聖者から受け取った指示を書き留める為のものだろう、
間違って伝えては話しにはならない。成る程抜かりは無いようだ。

  ただ、剣三郎とミツエがいない。

    別行動か?・・・ 


「 三十郎様、チカチュウ様、守護霊に事情を聞いてみましょうか?」

《 うむ、そうするがよい。まずは挨拶からじゃ。》 チュウ! 

   は、畏まりました。

「 守護霊の皆様ぁ~。お取り込みのところ恐縮ですが、
 こちらへいらして頂けないでしょうか?」

  恐る恐る、皆の守護霊が集合した。

 まずは私から三十郎様とチカチュウ様の御紹介をさせて頂き、
 次に守護霊から、それぞれ挨拶をして頂きました。

  それから事の経緯を説明させて頂きました。
  言わずもがな、皆、神妙なお顔で聞いておられました。

   私もかなり複雑な心境でありますが、
   彼等の方は余裕が全く無い様子なので、
   手短に質問を投げ掛けました。

「 剣三郎さんとミツエさんは、どうされたか教えて頂けますか?」

   すると拳三の守護霊、栄来様が答えて下さいました。

「 はい彼等は聖者 黒須様の御指名により補佐のみ役を頂き既に、
 この近隣の祈りの聖域として選ばれた駒沢公園に向かいました。
 私等は単に水を人数分と、
 筆記用具その他を持ち帰る為だけに戻った次第に御座います。」

「 何と夫婦共にとは ・・・
 それでは夫婦といえど持ち場は離れなければなりませんね。」

「 おっしゃる通りです。しかし、御心配には及びません。
 彼等の絆は半端なものではありません。喜んでみ役をお受けしたのです。
 その時程、我等先祖が歓喜したことはありません。

ただ子供達はそれぞれ辛い立場で、特に自尊心の強い拳三は、
自分が補佐役に選ばれなかったことが、かなり堪えておりまして ・・・」

「 しかし、彼はまだ若いではありませんか。
 あのような覇気が無くなるほどのことでしょうか?」

   若干、気の抜けたような拳三を見ながら私が言うと ・・・

「・・・ それが、同じ自警団のメンバーに
 二才上の川島章二という男がおりますが、
 これが補佐役に選ばれまして ・・・ 

 勿論それに相応しい魂と人格の持ち主ではありますが、
 内の子孫とマーフィーと比べても格下にしか見えないのに何故かと、
 我等守護霊も思案に暮れているので御座います。」 チュウ。

《 まあ、汝等の気持ちは分かる。
 不満に思っている者は居らぬようだから訳を話そう。

良いか、拳三、マーフィー、かすみの三人には
特別なみ役が与えられておるのじゃ。
まだ、その時が来ていないだけの事。恐らくは二日目以降となるだろう。

 詳細は言えぬが注意点として、拳三は侍の血が強く出ており、
 正義感が暴走し血気に逸(はや)る嫌いがあるという事。

それを汝等守護霊が抑えていたから、暴力沙汰にならずに済んだのだ。
マーフィーは若干温厚だが、拳三と同調する事が多々あるから、
これらに気を付けねばならん。

 かすみの役目は、
 強い正義感が暴走しないように間に入って緩和させる事にある。

これから二人の正義感を刺激するような、邪神軍の攻撃が一層激しくなる。
だから憎しみや怒りの想念での反撃や先制攻撃をさせてはならん。

あくまでも徹底した慈愛の心を強く引き出すのじゃ。
皆、それを胆に命ぜよ。》 チュウ。

「「 はい、畏まりました。」」

  皆さん納得した返事でありますが、エミリーとミランダの守護霊の、
  アルクルとメイフィは随分気まずそうだ。

  無理も無い、彼等の一家から聖者の補佐役は出ない上に、
  新型インフルエンザの犠牲者を三人も出しているのだから ・・・

  すると、三十郎様がその辺を察してか、二人に話掛けられました。

《 おい、アルクルにメイフィ。汝等は自分のお家の霊的水準が、
 土門家にかなり劣っている事が負い目のようだが、
 そのマイナス思考が良くないのじゃ。卑屈になるでない。

人と比べるのも悪くは無いが、そのお家の良い所から学び行じて、
更に上を目指すのが基本の信仰の考え方でなくてはならん。

 それに三人が亡くなったことで一族の曇りがアガナわれ、
 かなり汝等の負担も軽減したであろう。

だからこそ土門家との縁も深まり、
子孫共々高水準な修行をすることが許されたのじゃ。

 加えてこれからの三日間で、更に大きく救われ、
 一族全体が栄えてゆける機会が与えられたのだから、
 一心不乱に精進することじゃ、良いな。》 チュウチュウ!

「 ははあ、有り難いお言葉を賜り恐縮に存じます。
 我等と子孫共々、断固遂行の想いで精進致しまする。」

   感極まったアルクルが応えた。

《 うむ、良いか、汝等二人はミツエの側に居て彼女のみ役を補佐するよう、
 エミリーとミランダに働き掛けるのじゃ。

 ミランダはまだ若いがミツエを助けようと、必死でがんばる筈じゃ。
 更にエミリーと助け合い、
 多くの迷える人々に強く神の愛を伝えられる魂であり、
 将来有望な神の使徒に相応しい者に昇華出来ると、わしは信じておる。
 主神様も確信を持たれての、この度のお仕組みなのじゃ。

そして、他の三人は剣三郎の側に付いて、
しっかり補佐するよう働きかける事。
皆、その事を胆に銘じるのじゃ。》 チ~カ!

皆の守護霊達は、三十郎様の深い慈愛の波動に感銘を受けておられました。
そして、三日間の夢想だにしない修羅場を迎える緊張感があるにも関わらず、  沸々と湧き上がるような強い闘志に、自分で驚いておられるようでした。

   皆の気迫の強さは、魂と目の輝き、
   そして全身全霊からなるオーラの光に表れていました。

  実に頼もしい限りです。
  三十郎様もチカチュウ様も御満悦の様子です。

   そして拳三の守護霊、栄来様が御礼を述べました。

「 三十郎様、我等守護霊に対し直々のお言葉を賜り
 真にありがとうございます。

明日からの大節の三日間を迎えるに当たり、
我等は極度の不安と緊張を持っておりましたが、
それも今は全く御座いません。

 この御恩に報いる為にも、我等が先祖と子孫一丸となり、
 与えられた聖使命を全力で全う致す所存に御座いますので、
 宜しく御願い申し上げます。」

《 良くぞ申した。見事な心掛けじゃ・・・

良いか、主神様は汝等に多大な御期待を寄せておられる。
それを重荷と思わず喜びを持って、
どんな神鍛え神試しをも乗り越え任務を遂行するのじゃ、
頼んだぞ、我が子等よ!》 チカチュウ!

  守護霊の皆様は、それぞれ感極まり涙しながら、
  三十郎様とチカチュウ様に御礼を述べられました。

《 よいよい、ほら、子孫達は準備が出来たようじゃ、もう行きなさい。
 我等も、暫くは駒沢公園で様子を見て居るから安心しなさい。

それから、光玉内にのさばる馬鹿者どもが、
何かとちょっかいを出してくるだろう。

嫌がらせ、暴力に殺人、邪神の操り人形になり襲って来るだろうから、
その時は迷わず恐れず皆を落ち着かせ神に祈らせるのだ。

さすれば、神は直ぐ様その者に金縛りを掛ける。

 誰にも、暴力で対抗させてはならんぞ。
  曇りを積み、光玉から追放されてしまうからのう。

    ささ、一緒に参ろう。》 チュウ。


    「 参りましょう、皆様、いざ出陣ですぞ~! 」

    「「「 おお~う! 」」」


そんなこんなで、三十郎様から温かくも的確な御教示を頂き、
守護霊の皆様はやる気満々の様子で、それぞれの子孫に付き添われました。

 むむっ、拳三達の心が悲しみに満ちている。

    何故だろう ・・・



     ( 推奨BGM )

ジョゼフ=モーリス(モリス)・ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 

指揮・ピアノ:レナード・バーンスタイン 

フィルハーモニア管弦楽団 録音:1946年1月7日




   そうか、犬四郎は置いていかなければならないのだ。

  皆、犬四郎を見つめて涙を流している。これは辛い別れだ。
  全員が生還出来るか否かは、未知数でしかない。

  犬四郎もそれを察してか、とても不安げで落ち着きがない。
  エミリーが抱っこをしている。


「 ねえ、犬四郎。私達必ず戻るから、いい子で待ってるのよ。
 人間って身勝手だから、
 いつも何かあれば犠牲になるのは動物に自然よね。
 不用品は殺して捨てて破壊して・・・

 私達人間は、その責任を取らなければならないの。
 人間が神様から見ていい子にならないといけないのよ。

 そうでなければ何も解決しないんだわ。
 ごめんね ・・・ 私達いい子になって必ず戻るから、
 こう見えても結構丈夫だし、食は細くても働き者だしね。
 だから、あなたもがんばってね。うう ・・・ 犬四郎。」


    クウン、クン・・・ウウゥ ・・


  犬四郎は、エミリーの頬に伝う涙をペロペロと舐めた。
  涙を流しながらエミリーは、ミランダに犬四郎を渡した。


「 ごめんね犬四郎。わたしも必ず戻るから、
 どんなことがあっても外に出ちゃダメよ。
わたしの大好きな犬四郎。三日だけ我慢してね。うわ~ん、うう ・・ 」


    ウウゥ、ワンワン ・・・


  ミランダは犬四郎を静かに床に置いた。
  ただ何だろう? 犬四郎は納得していない様子だ。


 (( いやだよ、置いてけぼりはぜったい やだよ! 
     ぼくだってみんなの役に立てるよ!))


  犬四郎の思念は、そう叫んでいる! 流石は日本犬だ!
  すると拳三が腕組みをして犬四郎に話し掛けた。


「 犬四郎、お前は土門家の末っ子として育てられた。
 まだ四才だがこの家は一人で守れる筈だ。

 いいか、僕達が帰るまでお前は一家の主だ。それを忘れるなよ。
 それに、自警団のメンバーの一人であることもだ ・・・

 そうだ三日間家を守り抜いたら、
 お前専用の自警団のジャケットを作ってやるよ。」

   ワンワン、ワンワン!!

「 何だ! どうした犬四郎。留守番は嫌なのか?」

   ワワン、ワン!!!

「 ははは ・・・
 そうかお前の意志も確かめずに勝手に判断して悪かったな!
 では、僕等と共に戦うんだな!」

   ワンワン、ワワンワン!!! 

「 そうか、そりゃ頼もしい限りだ!
 ただな、明日の7時を過ぎると
 東京の神の光玉から出て行かなくちゃいけない。

 だから、ずっと一緒にはいられない。
 そんな事情は分からんだろうが ・・・

 みんな、ここは犬四郎の意志を尊重してやろう。
 僕たちの勝手でこれまで狭い家の中に閉じ込めていたんだ。
 これからは彼の自由にさせてよろうよ。」

「 僕は異議無しだよ。彼にもプライドや意地はある筈だからね。」

   マーフィーは答えた。

  女性陣は心配そうだが、犬四郎を置いていく方が残酷だと捉え、
  一緒に連れていくことに同意した。

  犬四郎は、
  その場で飛び上がっては吠えてぐるぐる回って喜びを表現した。

「 ははは、流石は自警団の一員だな。
 ふふふ、いいか犬四郎! 僕達は邪神軍と戦う!

 どんなことをしても勝たなければならない。
 だから身を挺してでも、皆を守らなければならない時もある。
 不意打ちを喰らえば殺されるかもしれないしな ・・・

 その時は、ここに戻る事もない。

下手すれば、明日の七時になるまでに生きていられるか分からないからな。
 なあマーフィー、君はどうする?」

「 愚問だな、決まってるだろ!
 馬鹿共が光玉内から締め出されるのは明日の七時だ。
 それまでは、言ってみれば野放し状態。聖域内を誰が守るのか?

 それは僕と君と、後は自警団のメンバー、
 そして腕に自信がある者達だけだ。まあ、玉砕覚悟だが ・・・ 

 ただ気になるのは、
 暴力を振るえば神の光玉に入る資格を剥奪される ・・・
 という件だが ・・・ ん~、それは不味いなあ。
 本当に金縛りの技なんて使えるのかな~~?」

   さっきから、二人を睨んでいたかすみが口を開いた。

「 何言ってるのよ二人とも。駄目に決まってるじゃない。
 邪魔する人がいた時には、神様に祈れば金縛りになっちゃう筈よ。

 だからぁ、暴力じゃ人を守ったり、
 救ったり出来ないってことを神様はおっしゃりたいのよきっと。
 そんなんじゃ、立派な聖者様や
 皇族のような崇高な存在にはなれないわよ。」

   拳三は顔を顰めて言った。

「 なんだこらあ、かすみぃ、
 どうせ僕は補佐役にもなれなかった役立たずだよ。

 そうだ、金縛りの術を試してみよう。
 信じていない訳じゃないけど、
 いざという時の為の予行演習は必要だしな。」 あのねェ・・・

「 おっ、そうだな、それはいい考えだ。」 マーフィーが乗ってきた。

「 ええ~、ふざけて祈ると怒られるわよ。」 かすみは呆れた。

「 でも、一回位はいいんじゃない。」  うわ ・・・

「 エミリーまでそんなこと言って、知らないわよ。」 拳三が手を合わせた。

「 議論なんぞはいい。
 え~神様、かすみに金縛りを掛けて下さい。お願い致します。」

   いきなりはやめなって。

「 な、なんであたしなのよぉ。酷いよ兄さん。うわ~? あ、何ともない。」

「 えぐ、ごおお ・・・ かあ ・・」 拳三の時が止まった。

   馬鹿だねェ、守護霊の栄来様もビックリです。

「 あああ、ぶええ~~っ、かっ、神様申し訳ございませんでした。
 どどど、どうかお許しを~」

   時が戻り、拳三殿が生還した。お疲れでした。そして皆呆れた。

《 今のは、わしのちょっとした悪戯じゃあ、
 この位は構わんじゃろうて・・・

 神を試すとはいい度胸じゃな。それに暴力は相手を裁く事に繋がる。
 裁く権利は人間には与えておらん。神の特権なのじゃ。

 おまけに人を傷付ける事など言語道断。
 悪いと断定し相手を裁く、
 何がどう悪いのかは神でなければ判断出来ん事なのに、全く・・・
 だから許さんと申しておるに、分からん奴じゃ!》 チ~カ。

「 三十郎様、申し訳ございませんでした。
 止めろと言っても中々頑固で、お恥ずかしい次第で御座います。」 

   栄来様が冷や汗を掻きながら言いました。

《 まあ、気にするな。拳三も懲りたであろう。
 おぬし等も苦労するのう。めげずに精進しなさい。》 チュウ!

「「「 ははあ、胆に銘じます。」」」

一同は、首輪を外された犬四郎を引き連れ、玄関の鍵を掛けて外に出た。
 すると栄来様が私に話しかけてきました。

「 いや~、信造様。
 一緒にテレビを見ていて突然お姿が見えなくなった時は驚きましたぞ~。
 それで、お帰りになられたら二体の神様と御一緒とは、
 しかもそのお姿で・・・」

「 それが、こうして御一緒させて頂いていても、
 いやはや恐縮でして ・・・」

  すると三十郎様は私の両耳を顎(あご)で掻き分け、
  そのまま頭にお乗りになりました。
  鼻の下のお髭(ひげ)と顎髭が、目の前でユラユラ揺れています。

《 まあまあ良いではないか、わしとおぬしの仲ではないか、
 ほれほれ、どうじゃ~・・・》

「 グヒッ、ははは、三十郎様。
 いっ、何時の間に両手を生やされたので ・・・ うぐっ、ぶひひ。」

《 ははは、愚か者めが。
 今までは円座に成り切る為、嵩張(かさば)るから出さなんだだけじゃ。
 ほれっ、くすぐったいかぁ?
 しかし、この体勢はなかなかいいのう。ほれ、お前達も容赦はせぬぞ。》 
                     
   三十郎様は、髭を伸ばして守護霊の皆様の脇腹をくすぐられた。
   皆さん悲鳴を上げて逃げ回っております。

   ただ、チカチュウ様が妙に大人しいですね。
   どうなされたのでしょう?

《 チュウチュウタコカイナ。ナンチュウカ、ホンチュウカ。
 ヤギュウチュウベエ~~。も~、わたくしも、お話ししたいですぞ!》

「 チカチュウ様、不味くないですか?」

《 あきまへん、減点ですぞ。三日ぐらい我慢なされよ。
 そのような姿でも、神の威厳が無くてどうされるので、ナセル殿?》

《 チュウ~~! この格好では威厳も何も無いですぞよ!! 》 

   あっ今、小さなほっぺがプクッて膨れた ・・・ かーわいい。

《 なんじゃあ~不満か? わしを睨んでも何も出んぞ~い!
 こおらっ、髭を掴むな。》

《 チュッチュ、ゴメンチュ~ッ・・・フンだ!》

《 ぬぬぬ・・・まあ分かれば宜しい・・・全く女って奴わ~・・・》 

   はは ・・・
   すると栄来様が、二体の神様の間に割って入って来られました。
   ・・・ くうう、いいタイミングです。
 
「 ああ、ところで皆様。

 天皇陛下が皇居の門を全門開放なされて、
 近隣住民を無制限に中に入れて、皆と一緒に祈りたいということと、
 なるべく聖者の言う事に協力するよう、
 政府に要請されたとの報道が御座いましたが、

 御存知でいらっしゃいましたか? ・・・

 それで公園や競技場、球場等が止む無く開放されたのです。
 政府も、そうすることでパニックを
 最小限に食い止められると踏んだようです。

 ただ、侵略者が攻撃を仕掛けて来るならば、
 武力を以ってこれを制圧する等と、
 愚かなことを申しておりましたが。」

   おお~凄い、流石は陛下です。

《 おお、それは予定通りじゃ。
 天皇は聖者とは別格じゃから神示も違う内容なのじゃ。

そうすれば、世界と日本国民との距離も縮まり親近感が増し、
その上、本来世界を統べるみ役が天皇であることの
潜在意識も蘇るきっかけになるじゃろう。

 しかし、人間というのは愚かだ。

モーセと対峙したラメセス2世のように、どんな奇跡を見ても、
如何ともし難い事態に陥るまで神に従おうとしないとはな。

 ほんに、あの男ときたら頑固なハゲ親父だったわい。
 あの時はナセル殿も困ってなあ。

ファラオか何か知らんが、人間の分際で威張り腐りおって・・・
これでは知的レベルの高い生物とは認められん!
下等生物は実に扱いにくい。

 まあ政府に圧力を掛けたのも、
 うまく邪神軍の裏を掻いた正神軍の力じゃがな。

  全く苦労を掛けてくれるのう・・・
  しかし、地上は臭くて堪らんなあ。

    豚人間か、鳥人間しかおらんのかな。》

      ブブウ、フゴッ、チュン、コココーコーコケッ!

        いやあ~、なるほど納得で御座います。
         しかし益々ワクワクしてきました。フゴッ!




最新の画像もっと見る

コメントを投稿