『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 最終章 》 〈 第六話 〉 史上最凶最悪の邪龍

2019年02月07日 11時17分00秒 | 小説



  《 キャラクター&キャスト 》

総  帥 サタン (ルシフェル/クラウド) アントニオ・バンデラ〇
  大将 ハガード  / ブルー〇・ウィリス
  少将 フェリウス / オーランド・ブルー〇
  大佐 レイカス  / ラッセル・クロ〇

( 七大悪魔 ) 

司令長官 アンドラスタ / ジョージ・クルー〇―
将 軍 グリオス    / アンソニー・ホプキン〇
将 軍 オルゴラン   / トミー・リー・ジョーン〇
将 軍 バクスト    / ウイル・スミ〇
将 軍 ドルン     / ウェズリー・スナイプ〇
将 軍 シアニード   / アンジョリーナ・ジョリ〇

将 軍 フレッタ    / アン・ハサウ〇イ

     「 プリティ ・デビルス 」

       側近 A / キャメロン・ディア〇
       側近 B / ルーシー・リュ〇
       側近 C / ドリュー・バリモ〇


マーフィー・ラッセル (二十五才) ヘイデン・クリステ〇セン
土門 かすみ (二十一才)ーーー  成瀬 璃〇
( 豆芝 ) 犬四郎 ーーーーーー  加藤 清〇郎


さて、将軍ドルンにより月から強制送還されたマーフィーですが、
拘束されつつも、全く怯ひるまず悪魔共と戦っています。

彼の武器は、神への愛と情熱、不屈の精神、冷静な洞察力!
それに対抗する悪魔共の武器は、

神と彼に通用するのでしょうか?

       その結末や如何に ・・・?



            ( 推奨 BGM ) 

        ヨハン ・ セバスチャン ・ バッハ 作曲
       ハープシコード協奏曲第1番 ニ短調 BWV1052  

 



 
( 執筆当時の作者時間 二〇〇九年十一月五日 (木)午前二時 )


     現在日時、十二月二十一日(日) 18:20
             カウントダウン 12:40





            ここは地球。


      北米大陸を縦断するロッキー山脈、その一角。







   この地で今繰り広げられていることを解説する前に、
  月で拳三とマーフィーが離れ離れになった、
 その後から現在に至るまでの過程を、

録画された叡智晶の動画を元に、
掻い摘んでご説明致しましょう。

地球に強制送還されたマーフィーは、
 ロッキーに集結したサタン機、グリオス機、
  オルゴラン機、バクスト機、シアニード機に囲まれました。


「 サタン機 」 


 真っ白のイメージでお願い致します。クチバシはレモン色です。  

          


    

 この時点では、マーフィーは気を失ったままです。

そこで拘束具「 蜘蛛の繭 」を解かれ、

代わりに十字架に磔にされました。

蜘蛛の糸で十字架に頭以外を縛られ、
その上で両掌、両足首に金属の杭を打ち付けられたのです。

 悪魔共に情けという感情は御座いません。

   激痛で目が覚めたマーフィーは失望しましたが、
     直ぐ我に返り不敵にこう言いました。


「 おい、無駄な努力だな。
 月での攻撃をまともに受けても、僕はこうして無傷で生還した。

 だからお前等は僕を殺すことが出来ない。
 幾らでも痛め付ければいい。

正直怖いが、 これも鍛えと思えば君達に感謝出来るようになるさ、

きっとね。

 君達の邪龍は地球の生ゴミ同然だよ。
  もう腐ってきてるんじゃないか? フン。」


    言いますねぇ。


「 おいおい、黙って聞いていれば良く謳う木偶の坊だな。

   私は悪魔王サタンだ。

   お望み通り強烈なリンチはしてあげるさ。
  色々趣向を凝らしてね。
 君もきっと気に入ってくれるだろう。

  さて、世界一周旅行と洒落込もうではないか。
   その後は、神の光輪に入る事無く、
   南極点にでも十字架ごと突き刺して差し上げよう。

  では、皆の者参ろうではないか。」


    磔状態のマーフィーは、
    邪気の球体の中に閉じ込められたまま、宙に浮いている。

   間も無く、五機の邪龍と共にテレポートしました。

 まず、アメリカの神の光玉を巡り、
その守護神と神の子達に向かって、

「 もう神の光輪は完成せず、正邪の戦いは邪の勝利が確定した。」 

等と謳い、
マーフィーの体をサタン機以外の邪龍に攻撃させ、

晒し者にしました。
 悪魔共は攻撃しながら罵声を浴びせ続けたのです。

  そのマーフィーの姿を目の当たりにした光玉内の群衆は、
  涙を流しながら必死でマーフィーの為に祈りました。

ここでも聖者から、

悪魔への憎悪の想いを持ってはいけないことを、
補佐役から末端の人々に徹底させていました。

マーフィーの家族がいる光玉では、
サタンがそこの弱みを突いて祈りを混乱させようとしましたが、
  マーフィーの家族も他の者達も動じませんでした。

   サタンを始めとして、
   他の悪魔共も顔色が優れなくなってきています。

   それもその筈、手応えが無い上に、
   却って志気を高め光玉の光度が増すので、
  その光を浴びて苦しくて仕方がないのです。

そして当然マーフィーの体は徐々に縮小していきます。

 マーフィーは体が縮む度に邪気が抜けて、
 神気が増してきていることを実感していました。
彼の魂は静かに轟々と燃え、信念は揺ぎ無いものになっています。

 悪魔共は、それでも意固地になり、
次に向かった先は中東のアフガニスタンとイラクでした。

  これには理由があります。

  何故なら、マーフィーの叔父はイラク戦争で戦死しており、
  また彼の友人はアフガニスタンでの掃討作戦中、
 タリバン武装勢力との交戦中に銃撃され死亡しているのです。

それに因りマーフィーは、
 イスラーム教とアメリカ政府と軍に対する
  不信感が少なからず有るからです。

 タリバンもアルカイダも、
元はと言えばアメリカが育てたようなものです。

マーフィーは、それを熟知しているが為に
払拭しきれない悪想念がまだある、
とのサタンの部下の調査に因り、
 そこを突こうというサタンの思惑は、
   果たして功を奏するのでしょうか?

サタンは、

イラクの光玉付近上空に浮遊させたマーフィーにこう言います。

「 マーフィーよ、お前の叔父を殺したイラク兵の家族は、
  あの中にいる。この映像を見るのだ。」


    するとマーフィーの目の前に、
    光玉内の模様を写したスクリーンが現れた。


「 あの中にいるのであれば、魂が美しい選ばれた神の子だ。
 その資格があるということだ。恨みなどもう無い。

僕の大好きな叔父は、今は邪龍に取り込まれていると思う。
それも僕ががんばれば、

もしかしたら救って頂けるかもしれない。

 ただ、今は一人のことより、
  全人類の家族を救うことに集中しなくてはいけないんだ。

   もうこのままでいいから、月に連れて行ってくれ。
   拳三と一緒に修行がしたいんだ。

  以前はあなたも偉大な天使だったのでしょう。
 御願いします。月へ戻して下さい! 」


馬鹿言うな! てめえの言う事なんぞ聞く耳持たねえよ。
  全くさっきから歯応えは無いやら暗いやら ・・・

   日本へ行って侍の修行したんだろが、
   だったら少しは気合入れて抵抗してみやがれってんだ。

    畜生ぉ~~!!


    バクストが苛立っている。

  ??? 何だろう、オルゴランの邪龍から光る物体が二つ、
  マーフィーの元へ近付いて来ました。

   驚いたのはマーフィーだ。

   それとは別に ・・・ むっ、この只ならぬ神気は??

   ああっ! 眩い光が上空から地上を照らしている。

  あっ、あれは光玉から伸びた
「 神の光輪 」 に繋がる 「 神の光網 」 の一部が、
強烈な光を放っているのだ。

その光の根源が、光網から離れマーフィーの元へ近付いて来た。
それは、紛れも無いガブリエル様の御姿だ。

何とも神々しい輝く神気に包まれ、純白の翼が優雅に羽ばたき、
光の風を辺りに振り撒いている。

 悪魔共は油断していたので邪龍内はパニックになりました。    

  ガブリエル様がマーフィーに語り掛けます。


《 マーフィーよ、よくぞ今まで神の鍛えに応えてくれた。
 直に適性な体に成れるであろう。

 今までの労をねぎらい、
 大黒天様からご褒美を頂いたので受け取るが良い。

ははは、それは汝のイラクで戦死した叔父エリック・ラッセルと、

アフガニスタンで戦死した友人チャーリー・マクレガンだ。

二人は取り込まれた邪龍から、

特別に「神の光玉」に入ることを許された。

良いか、マーフィー、エリックにチャーリーよ、

主神様にお詫びと感謝を、そしてその証をお立てするのだ。
如何なる時と場合に於いても永遠にだ。良いな! 》


   「「「 ・ ははあぁ ・ あう ぅ ・ ああ あ ・・ 」」」


   三人共、泣きじゃくり殆ど言葉にならない様子だ。
  無理もない。このような奇跡はそうそう無いのだから。



         《 サタンと四人の悪魔よ。

        もしお詫びをしたいのであれば、
      神の光輪の元へ集い、ひれ伏して懺悔せよ。

        最期位は礼を正しては如何かな。 》



       「 ガブリエルよ、久しぶりだな。

      とは言え、積もる話をする気にはなれん。
       もう帰ってくれ。私は今機嫌が悪い。」


  「 そうだ。帰れ帰れ。お前等のやることは一々癇に障るぜ!」


    バクストも苛立っているが、苦し紛れの感は否めない。


         《 そうか、ならば帰ろう。
        その前に君達に礼を言っておこう。

        マーフィーと拳三が世話になった。
       それに世界の神の光玉の皆も鍛えられた。

         君達の御蔭だ。 ありがとう。

          功績と罪穢は別だからね。

     では、マーフィーと拳三を引き続き宜しく頼むよ。

            さようなら。》


        ああ、これぞ神の愛そのものだ。

      ガブリエル様はマーフィー達に微笑むと、
 光玉内の群衆にも微笑み手を振りながら去ってゆかれました。


   この模様を見た世界の同志の皆様は感涙に咽び、
       興奮の坩堝と化しています。

       その後、救われた二人の魂は栄光の
       「神の光玉」 に入って行きました。



「 ちっく しょう、ふざけんな。 
  礼なんかいらねえよ ・・・ バカヤロウ。」


    やけくそだ。


「 バクスト、もういい。 ロッキーへ帰るぞ。」   


    サタンは戦意喪失のようです。
    他の悪魔も冴えない顔だ。明暗の差は増すばかりです。


「 バクスト、総帥がそう言うんだ。言う通りにしようぜ。」


「 分かったよ。 なあ、オルゴラン ・・・ 

俺、さっきから震えが止まらないんだ。  
涙も勝手に出やがって、みっともねえよ。

こんなの最低だぜ ・・・ ううぅ ・・ 俺は最低だ ・・ 」


「 そう言うな。俺も同じだ。悪魔の最期はこんなものだ。
 堕天した報いだよ。そして俺達の地獄は果て無く続くだろうよ。

 もう取り返しが付かない。 二度とな ・・ ぅぅ ・・ 」


「 おいおい、いい大人がメソメソだらしないねえ。
 ふん、あたしは最期まで泣いたりはしないよ。

 絶対、絶対だ! 怖くも無い!

 火に焼かれても泣かないよ。叫び声も上げない!
 あたしは最期までサタン様のお側でお使いするんだ ・・・ 

 最期まで ・・ぁぁ・・ 」


   シアニードは振るえを押さえながら、精一杯強がった。
    青く強張った顔で ・・・

    もう一人おります ・・・ 堕天使グリオス。
   彼は ・・・ 無言で宙を見つめています。

 ただ、見つめているのは遠い記憶かもしれない。
 彼は現実逃避をしているようだ。 

 目が何か楽しそうだ。


   遥かなる記憶かぁ ・・・ いつの事だろう?

      あなたは ・・・ どう思われます。













              ここに来て、邪神軍沈黙 ・・・

              総帥サタンの思考停止 ・・・


            静寂に包まれたロッキー山脈 ・・・

          彼等の命運や如何に ・・・
















 間も無く全機テレポートをし、ロッキー山脈へ戻った。

月の別働隊は既に戻っていた。
そして悪魔の邪龍八機が揃った。

 この時のマーフィーの身長は百メートルを割っていた。

   次に始まるのは、
    恐らく最期の悪魔の祭典、最期の儀式 ・・・









  









                    ( 推奨BGM )  

                フレデリック・ショパン作曲  

           十二の練習曲 作品二十五 第七番 嬰ホ短調 

              マウリツィオ・ポリーニ (ピアノ)



   





















  この地には、深い悲しみと絶望の波動が渦巻いていた。


 この何とも言えない虚脱感は、

全機の邪龍の体全体から滲み出ている。

 それぞれの堕天使も同様である。


    皆、目が虚ろで誰一人黙して語らなかった。




















          どれ程の時間が経過したのだろう ・・・


         静かだ   余りにも ・・・



      雪山も   息を潜めている


   灰色の雲を   ただ見つめる


 気が付くと粉雪が音も無く降りてきた ・・・ 風は無い  


まるで彼等の心情を表すかのようだ   


   
サタンは その粉雪が舞う様を死んだ目で追っている

まるで生きる屍 先程から瞬き一つしない ・・・


? 唇が動き始めた 何か歌っているのか・・・ 聞こえない




 彼は暫くすると側近にスコッチを頼んだ 

そして皆も飲めとも言った

 部下達はすすり泣いている


  サタンは ショットグラスの琥珀の揺らぎを見つめながら

    何を想うのか?


      彼の大きな漆黒の瞳から一筋の涙が零れた


      頬を伝い落ちた涙の雫が ゆるり琥珀と混ざる

 



    グラスを上に挙げ ただ ジッ と見つめた



「 ・・・ 寒いな  それに  ただ   むなしぃ ・・・ 」




     頬杖をついて また黙った 


      それから 体の振るえは止まらなくなった



















日本時刻、午後七時十分
カウントダウン ( 十一時間五十分 )







  邪神軍が沈黙して ・・・ 彼等の時は未だ動かず。

   総帥の思考が復活するまでは、誰も動けないのだろう。


  それでも全次元の時が止まる事は無い。

 容赦無く時は進み断罪の瞬間は近付く!


時を刻む音霊は無いだろうが、邪神軍の兵士達には、

一秒一秒を刻む 「 秒針 」 が胸 に突き刺さっているに違いない。

 更に 「 分針 」 は腹をえぐり、「 時針 」 は首 を刈るのだ!

  そのような妄想に駆られ、正気ではいられないだろう。


      哀れだ ・・・ 憐れだ。



  人生を諦め断罪を待つ他無い邪神軍の面々の顔色は最悪です。

    この先どうなるのか? 

    あなたも想像空想美想してみて下さい。
   妄想など無粋ですよ。

神の子人を含めた正邪の神々の黙示録。

 あなたの描くクライマックス。
  自由な発想で魂という小宇宙に描いてみて下さい。

  音楽、風景、心の葛藤、そして極限の愛、等など ・・・







                      ( 推奨BGM )

                ポール・デ・セネヴィル 作曲
                 「 マリアージュダモール 」

              ジョージ・ダビッドソン(ピアノ)
               
                 注:ショパンではありません。




 



       さて、邪神軍の皆様は、え~~まだ駄目ですか?

         まるで邪龍が動く気配無し。


         思考回路がショートした模様。



      一体彼等は何をしているのか ・・・ ?




( サタン )      

あれっ、いない! 何処?
側近と共に完全防寒でクラウド山(実在)の頂上に
その姿が ・・・ 自分探しか?


( アンドラスタ )

シャワーを浴び、着替えて鏡の前でポーズ。
溜息を一つ吐くと、ソファに座りバーボンを飲みながら

物思いに耽る。  な? 誰か来た。


( グリオス )

色情狂だけに、やることは一つ。 狂っているのです。


( ドルン )

オーストラリアにテレポートし、山を標的に大砲を撃っては、
エアーズロックに当たったとか、

外れたとかに一喜一憂しています。

実弾シューティングゲームですか? まあ楽しそうです。


( オルゴラン )

あらら、バクストと共に側近を交え、バレーボールの試合を? 
楽しそうだ。 先の事など考えたくないのでしょう。


( バクスト )

部下達は宴会を開き、どんちゃん騒ぎをしている。


( シアニード )

シャワーを浴び、着替えて鏡の前でポーズ。 か、完全防寒!
それで側近三人を引き連れサタンの元へ ・・・
アポ取らなくて大丈夫ですかね、お姉さん?


( フレッタ )

シャワーを浴び、着替えて鏡の前でポーズした後、
側近、自称 「プリティ ・デビルス」 達は、
ティーを飲みケーキを食べながら愚痴をこぼす。

側近 A 「 ねえねえ、フレッタ様ったら、
     お一人だけアンドラスタ様の所へ行かれてしまうなんて
     ズルイですわ!」

側近 B 「 何時もあの方は自分勝手で付いて行けませんわ。

     ぷんぷん。」

側近 C 「 あたしは生まれつきそうなのっておっしゃって

     酷いですのよ。」

側近 A 「 あっ、そうそう。
      アンドラスタ様の軍のリッグ中佐って

     素敵だと思わない?」

側近 B 「 あら、あたくしは断然バグソー中将ですわ。

     オホホホ ・・・」

側近 C 「 えっ、まあ、それはぁ~良い御趣味ですこと、

     おほほ ・・・」


        がが、ガールズトーク? はあ ・・・


       でも、この後どうするのでしょう?

  あっ、叡智晶に記録がありました。 恐れ入ります三十郎様。

          なになに ・・・


    『 日本時間、午後十時半まで自由行動。
    各将軍は同時刻サタン機に集合。遅刻厳禁。』



     こんな通達が邪龍各機に出ておりました。












          日本時間、午後十時三十分。



     ここはサタン機内の一室 ・・・ 遅刻者は無し。
   大きな円卓にそれぞれ座っている。


円卓の奥、左側には、等身大と思われる邪神アポフィスの立像が、
向かって右手にはイングリッドの立像が鎮座している。


左右の邪神夫婦中央奥の壁には、
 赤地に白い円の中に、
  赤青二体の8の字に絡み合っているような龍が描かれ、
   その中央に、黒いサソリが見る者を睨んでいる。

   しかも蠍のハサミは二体の龍を挟み込み、
  更に、龍の交差部分にサソリの尾の毒針が突き刺さっている。
 言葉だけでは表現し難いものですが、
何とも皮肉めいた絵柄だ。


  霊の元つ国の、日章旗の真逆な色合い。

   そして赤龍は火の神 を、青龍は水の神 を表し、
   それらすらサソリの邪神軍は凌駕するという、
   正神軍を侮辱した絵柄であります。

最も無礼なのは恐れ多くも、二体の龍の交差部分は主神を表し、
そこに毒針を突き刺しているということなのです。

  これが邪神軍の旗印なのだろう。

   「 弱い犬ほど良く吼える 」 でしょうねェ。

     堕天使達は、当然、皆神妙な面持ちです。
     それに口が利けなくなったようだ。

    暫くの沈黙の後、サタンが重い口を開いた。



「 皆、聞いてくれ。今まで私に良く着いてきてくれた。
 礼を言う。 ありがとう ・・・ そして申し訳ない。

 どんなに詫びても許されるものでもないが、
 ここまで堕ちてしまっては主神様が我々を許すことはない。

 私の責任だ。皆を火の海に道連れにしてしまうとは ・・・ 
 本当に申し訳ない。
 ただ、皆に許してくれとは言わない。

皆には、悪魔王サタンではなく、かつて大天使長ルシフェルだった誇りを最期まで見届けて欲しいのだ。

 それでなくては皆を堕天させた責任は果たせないと思っている。
 どうかな、皆の意見を聞かせてくれ。」


流石です総帥!! ただ謝る必要など微塵もございません。

 我等は一蓮托生。始めからその想いでおりました。
 私は今でもその想いは変りません。

 最期の最期までルシフェル様の背中を追い続けます!!!


   シアニードが擁護した。


「 彼女の言う通りですよ。我等は十分楽しんだし満足している。
 ただ、その報いを受けるだけですよ。

 間違っていることをお座なりにして来たのは、皆同じだ。
 だから、今更誰も異論などありませんよ。

 一つ言えるのは、あなたが我等の総帥であることで、
 罪の重さが格段に違うということです。

 それは、我等が総帥に詫びなければならない事であると、
 私は想いますよ。

 俺達なんて気楽なもんだったよなあ、バクスト。」


「 オルゴランの言う通りだぜ総帥。

 俺は偉大な大天使長ルシフェル様に憧れ、
 ここまで着いて来れたことを誇りに思ってるんですよ。

 例え堕天した今でも尊敬の念は変りはしません。
 ただ、この先は御一緒出来ないことが残念でなりませんがね。」


「 総帥、私は月で己に誓いを立てた通り、
 主神にお詫びの証をお立てしたいのです。

 それしか、今の我等に出来ることは御座いません。

 アポフィス様とは連絡が取れませんし、
 我等だけでも揃ってお詫びを致しましょう。

 御願いです。総帥!


「 わたくしはアンドラスタ様の意見に賛同致します。

 どうか総帥。」

「 フレッタが言うんなら俺は構わないぜ。

 他に妙案は無いしなぁ。」


「 へえ~、グリオスが折れるとはなぁ。

 ははは、最期に頭を下げるとは思ってもみなかったが、
 無様に最期まで抵抗すること自体、恥の上塗りになるだけか?

 俺様は東京湾と月で思い知らされたからなぁ。
 まあ、潔く降参するのが得策と言う訳だ。

 邪道の先には分厚い障壁が立ちはだかる。
 その障壁を造ったのは正神だ!

 そこで止むなく正道に振り向く ・・・
 その先には主神の光が見い出せるんでしょうかねぇ、総帥。」


ははは、思い出せ! 天使だった頃の記憶を ・・・

 『 全てを善へ導く神仕組み 』 ・・・ 

 神に向かえば愛と光は降り注がれる!

今まで、下ばかり見ていたから

神の無限の愛と光は見えなかった。

 まあ、強がって主神に背を向け、
 二度と振り向かないと己に誓ったから当然だがな。

 とはいえ、背中には光が当たっている ・・・ 
 神の愛とはそういうものだ!

 それ故、アンドラスタの言う通り、今はお詫びしかない!

最期にくだらんプライドを捨てるということだ。
捨てればスッキリするだろんだろうなぁ。 ははは ・・・

 では、行こうか富士へ ・・・

ただその前に、この邪龍形態をまとめておこう。
それぞれの単体では見苦しい。」


「 つまり、予定通り アレ を復活させるとおっしゃるので?」 


    何です?


「 その通りだドルンよ。 皆もそれを楽しみにしていた。
 アレ すら正神軍は問題なく屈服させるということを、
 神の子の魂に植え付ける。

 その方が主神は御経綸を進め易いであろう。
 主は偉大なり! そういうことだ。 よいかな諸君!!」  


     ちょっと、何なんです?


     「「「 おおぅ!!! 」」」




            ( 推奨BGM ) 

      ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
     交響曲 第九番 ニ短調 作品百二十五 (第一楽章)

          カラヤン&ベルリンフィル




  


   サタン以外の悪魔達は、それぞれの邪龍に戻っていった。

 間も無く、八機の邪龍は不気味に光始めた。

すると、サタン機以外の邪龍が、

普通の龍体に変化していきました。


通常の形態に戻したということか?

 それぞれ一体の全長、八キロは有りそうです。
  ただ手足は有りません。 色は赤黒。


   何をしようというのだろう。


 サタン機 は ・・・ 龍体のようだが? 違います。

確かに龍体ではありますが、
なな、何とその途中からの形態が違うのです。
それは ・・・ 蠍の尻尾に繋がっているのです。

 龍の頭は遥か上空に有りますが、
  その尾はサソリの尻尾の途中から繋がっています。

    サタン機は、龍とサソリが一体化した邪龍なのです。

     色はサソリの部分はどす黒く、龍体の部分は赤黒です。
     見るだけで血が凍り付きそうだ。

    しかもこの化け物の全長は二十キロほど有ります。

  こんな光景信じられません!




         「 さて諸君、準備は整った!

           只今より 悪魔の祭典、

     最終章 『 ヤマタノオロチ復活の儀 』 を執り行う!

     七機の邪龍の将軍、全兵士そして可愛い蛆虫共よぉ、 
       我と同化融合し、神々と神の子人に、

      悪の権化の醜さを嫌と言うほど見せ付けるのだ!

           さ~あ来い!!!


「「「 うおおおおおおおお~~~~!!!」」」 

      

      う、うわっ。


グオッ、ガウッ、ゴオッ、ギイッ、ギャッ、グアッ、
    ギャアアアアアアァ~~~~ッ !!!



  凄まじい絶叫の不協和音が辺りに木霊します。 
  エンジン全開という訳です。

  その七機の邪龍がサソリの背に、尾から合体してゆきます。


まず、アンドラスタ機がサソリの頭の上に ・・・

   次に、その右肩付近にグリオス機が ・・・
     その後ろにドルン機が ・・・
      その後ろにシアニード機が ・・・

       左肩付近にはオルゴラン機が ・・・
      その後ろにバクスト機が ・・・
     その後ろにフレッタ機が ・・・

  そして、サソリの尾から繋がった龍が、
最後尾上空から七機の邪龍を見下ろしているのです。


  な、何というおぞましい怪物なのだ。
   これがヤマタノオロチなのか?

     今までの人間のイメージとは随分違うようです。






竹内文書では約百七十億年前、

上古二十二代天皇の治世期の記述に、ヤマタノオロチとは、

「 天皇に敵対する山賊の集団で、山田の大蛇賊の事 」

 とあります。

勿論、その山賊集団を退治したのは 素戔嗚尊 様であります。
それが後世、大蛇を退治するという神話になったようです。

   真実とは面白いですね。


     ・・・ む、あれは何だ?


「 総帥、右舷後方から敵出現!
 マーフィーを奪還する模様です。如何致しましょう。」


「 何? そうか、マーフィーは忘れていたな。
 彼にはもう用が無い。拘束具を外して放っておくのだ。」


「 はは、畏まりました。」


「 しかし、何だあれは?
  炎の獅子に跨った女神か? ふ、面白いな。

   それより駿河湾にテレポートする。
    レイカス大佐、全回線を開け。」


「 はっ、全回線開きます。」


    前方のスクリーンには七人の悪魔が映し出された。


「 いいか諸君! これより駿河湾へ向かう。
  覚悟はもう決まっている筈だ。

   残念ながらアポフィス様との連絡は取れず終いだが、
    我等 邪神軍は全面降伏をする!

      主神様の御前で無様な失態は許されん。
       そのことを胆に銘ぜよ! ゆくぞぉ!!


   
 「「「 おおぅ!!! 」」」


「 フェリウス少将、駿河湾へテレポートだ!」

「 は、駿河湾へテレポート致します 

  ・・・5・4・3・2・1・GO!


フィフィフィフィ、フュフュフュフュゥ~~~

   グイン ! 


      あらららぁ、行っちゃった。




            ( 推奨 BGM )

      ラフマニノフ:ヴォカリーズ作品34の14

     André Previn/London Symphony Orchestra








    ところで炎の獅子と女神 ・・・正体は何者なのか?


  女神の姿は、天女の様な衣装プラス羽衣を纏っています。

その上、燦然と輝くオーラに包まれた絶世の美女で、
何処と無く誰かに似ています。

・・・ お分かりですよね、勿論。

 いきなり開放されたマーフィーは面食らっている。

   それに、目の前には女神と獅子が ・・・ 
     大きさはマーフィーの三分の一ほどだろう。


「 あの、助けて頂きましてありがとうございました。
 宜しければお名前をお伺いしたいのですが・・・」


「 わ、わたしはかすみです。分からないの?
 それにこの獅子は犬四郎なの。

   それから私達が助けた訳じゃないのよ。」


「 何だって? き、君はまさか死んでしまったのか? 

 肉体を感じないぞ。」


「 そうなの。犬四郎もね・・ねえ、あなた元の姿に戻ったら?」


   ウオン、オン!  


  あ、あらら、炎の獅子は豆芝の姿に戻りました。


「 ほらね。私達死んじゃったけど、
  こんなに元気で神様にお使い頂いているのよ。

  それよりあなたが無事で良かった。

  不死身なのは分かっていたけど、あんな酷い目に遭って、
 わ、わたし辛くて見ていられなかった ・・・ うう ・・ 」


「 あああ、そそ、そうか、ただ積もる話は後だ。
  今、不味い事になっているんだ。」


「 どうしたの? 兄さんの事?」


「 そうなんだ。今地球に向かっているんだよ。

  それで飛ぶ速度は加速を増して制限時間までは
   間に合いそうなんだけど・・・・

   何か胸騒ぎがするんだ。

  飛ぶ速さの加減が出来ないのかどうか?
 このまま加速を続ければ、地球に激突してしまうかも ・・・」


「 そ、そんな・・・ねえ、思念波で交信出来るんじゃないの?」


「 それが ・・・存在や位置は確認出来るんだが、
  思念波は伝わらないんだ。

   何故なのか? ・・・

   何か拳三に邪気が纏わり付いている感じがする ・・・

 うう、もうそろそろスピードを落さないと不味い。僕は行く。
 早く拳三を止めないと、
巨大隕石が落ちてくるのと同じ衝撃が地球に与えられてしまう。」


「 私も行きます。
  犬四郎と私は、あなたと兄さんを助けるようにと、
   ミカエル様から仰せ使っているの。
    犬四郎は飛ぶのは結構速いわ、だから。」


   「 分かった。じゃあ、着いて来てくれ。」


    犬四郎はまた炎の獅子に変身した。
   かすみは犬四郎に跨りマーフィーの後を追った。

 なるほど、拳三が邪気の影響を受けて
スピードの制御が効かないということは、
やはりあのシアニードの彗星が発した
蜘蛛の糸を被ったことが原因でしょうが ・・・

その糸の成分が視力に影響し、
 恐らくは距離感が掴めないのだろう。

  ということは、そんな罠を仕掛けた張本人達は、
   すっかり忘れ去り駿河湾へ ・・・

   しかし、この地球に向かう拳三の進入角度は垂直に近くて、
   余りに危険です。

  早く気付いてブレーキを掛けなければ太平洋に激突です。


 拳三は重症を負っても再生出来ますが、
 地球はそうならないでしょう。


《 よいか、拳三の目に影響している邪気の糸は、
  シアニードに因って幻覚を見せるようプログラムされている。

   拳三が今見ている地球は、
   まだ遥か彼方にあると錯覚しておるのじゃ。

  だから加速を止めないという訳だ。
 このまま進めば小笠原諸島付近に激突してしまう。

 危険過ぎるが我等は手を出せん。今は祈るしかないのじゃ。
  がんばってくれ拳三、マーフィー、かすみに犬四郎。
   試練なのじゃ。》

   チュウウウ、チュウ。


   いやあ、またまた冷や汗ものの展開になっておりますが、
   きっとあの四人ならこの窮地を乗り越えられる筈です。
  ただ、もう拳三は間近に迫って来ています。

 彼は大気圏に突入しても燃え尽きない小惑星ですから、
その質量を保ったままで一瞬に海面から海底に激突するでしょう。

その破壊力は、想像を絶するものと思われます。







   我等はマーフィーの後を追いました。

  マーフィー達は宇宙に飛び出し、
  拳三が到達するであろう地点から相当離れた場所におります。

  マーフィーは強い霊眼の力で拳三の位置を確認しています。
   そして会話はテレパシーを使っています。


( 拳三の軌道を変える為のエネルギーは、相当な物に違いない。

しかも地球から遠く離れた地点で変えないと、
衝突は避けられないだろう。

いいか、かすみちゃん。

 僕はここから拳三目掛けて斜めから体当たりをする。
  僕の全霊力を高めてだけど、それで足りるかは分からない。

   だから、君と犬四郎の力も必要だ。
    僕と一体となってくれるか、かすみちゃん、犬四郎!)

   ( 勿論だわ! )

    ( はい! )

    ( えへえ~、犬四郎が喋った。 はは、これは ・・・

     そうだ、テレパシーは宇宙共通語だったな、
     不思議がることじゃないか。

    じゃあ、かすみちゃんは右腕に、
   犬四郎は左腕につかまってくれるか。)


      かすみと犬四郎はマーフィーの言う通り、
     それぞれ彼の腕につかまった。


( よし、じゃあ行くけど・・・

僕達は迎撃ミサイルのような物だ。
  速度が上がれば上がるほど命中の確立は格段に下がる。
   だが、何としても命中させなきゃいけない!

   いいか、拳三の魂を捕らえて放さないよう集中することと、
   主神様に祈るんだ。

  そうすれば、主神様の愛が僕達を導いて下さる筈だ。
 それに、多くの神々と光玉のみんなが祈っていてくれる。

  かすみちゃん、犬四郎。 行こう 拳三の元へ!



  ( はい!)

  ( りょうかい!)







  さてさて、意外過ぎる展開ではあります。
  悪魔が改心するとは?

 実際、本当に改心し、正道に戻る悪魔は僅かにいるでしょう。
 果たして、これからどうなるものか?

そして、意志を持った超破壊彗星と化した拳三と

地球の命運や如何に?


次回、急展開を見せます。

 乞う御期待!!!


ところで、サタンが自分探しに訪れたクラウド山は実在します。

 WEB ブリタニカ国際大百科事典より ・・・

アメリカ合衆国,ワイオミング州北部にある山。標高 4016m。

ロッキー山系の支脈,ビッグホーン山脈の最高峰で,大氷河がある。

西側はビッグホーン盆地,

北北東に向ってグレートプレーンズが開ける。



 「 クラウド 」とは、
 私が描いたサタンの仮の姿をした人間の名前ですが、
 物語の進行上、ロッキー山脈の何処かに、
 クラウドという山があれば好都合と思い、
 世界地図を見れば、実在していました。

  偶然なのか必然なのかは不明ですが、
  ロッキー山脈もクラウド山も悪の巣窟としたのは、
  私の演出上でのことですので御了承ください。


そして今日の宇宙画像です。





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