2015年1月15日
日本自治体労働組合総連合
書記長 中川 悟(談話)
1月11日、政府は、2015年度介護報酬改定において特別養護老人ホームやデイサービスをはじめ、基本報酬の大幅な削減となる診療報酬2.27%の大幅な引き下げを決定した。介護保険施設3団体をはじめ引き下げ中止を求める多くの声があったにもかかわらず引き下げを強行したことに断固抗議するものである。
今回の報酬引き下げの根拠として政府は、「介護サービス事業所の収支差率が高い」、「特別養護老人ホームは多額の内部留保を保有している」など、繰り返し強調してきた。しかし、収支差率はあくまでも平均値であり、さらに事業所の回答数にもバラツキあることから、現状の経営実態を正確に反映したものでないことは政府自身も認めてきたことである。また、特別養護老人ホームの約3割が内部留保があるどころか赤字経営であることは全国老人福祉施設協議会の調査でも明らかにされており、そもそも内部留保といっても一般企業の内部留保とは性格が異なり、単純に比較対照できないことについては財務省も「承知している」と述べるに至っており、マイナス改定という結論を先行させた今回の決定は到底納得しうるものではない。
改定率はマイナス2.27%とされているが、介護職員の処遇改善、認知症・中重度ケアなど加算による対応をふくめた上での2.27%の引き下げであることから、これらを除いた介護報酬全体は実質的に4.48%もの大幅な引き下げとなる。すでに、今改定がこのまま実施されれば、多くの事業所がかつてない深刻な経営困難に陥り、介護サービスの大幅な後退をまねくことは確実である。高齢化に伴って今後増大していく介護需要に応えるどころか、事業所の閉鎖・廃業、参入事業者の減少により、地域の介護基盤そのものの弱体化・崩壊につながりかねない事態となる。
政府は、介護職員の給与の引き上げを見込んだと説明しているが、報酬全体が引き下げられれば、処遇改善に係る加算だけが拡充されたとしても有効な処遇改善とはなり得ないことは明らかである。事業を維持していくために正規職員を非正規職員に切り替えたり、職員を減らすことも検討せざるを得ない事態が生じ、さらなる人手不足に陥ることで、業務の過密化、労働環境全体の悪化により離職者を増やし、結局はサービスの質の低下をまねくことになる。介護報酬全体の底上げこそ、処遇改善をはかる大前提である。政府自身、現状が深刻な人手不足にあると認識し、さらに2025年に向けて100万人の介護職員の増員が必要との見通しを示しているにも関わらず、マイナス改定に踏み切ったことは全く理解し難い。
自治労連は、 介護報酬2.27%引き下げを即刻撤回し、「事業経営の安定性の確保」「介護サービスの充実・質の向上」「介護従事者の抜本的な処遇改善」が可能となるよう、大幅に引き上げることを改めて要求するとともに、社会保障としての介護保障制度の確立めざし、国民、労働者の生活と権利を守るために、関係諸団体との共同を広げ、たたかうものである。
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